探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる (MF文庫J)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 88
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040646619

作品紹介・あらすじ

新学期――俺は失敗した。
親の仕事が探偵だと口走ってしまったせいで、クラスメートから相談が持ち込まれるようになったのだ。絶版した小説の犯人当て、美術部で振るわれたナイフの謎、面倒なことになったと頭を抱える俺だったが――

「それさ、そもそも事件じゃないね~」
「多面的な考え方も取り入れたらどう? 戸村君」

何があっても山田姉妹は平常運転、鋭い推理でスパッと解決していく。最初は気に食わなかったけど、本気で推理する彼女たちは今では尊敬の対象だ。……が、話すときの距離、近すぎない!? 熱くなるのは分かるけど、これ完全に狙ってるよね!?
山田さんたちと俺の少し甘めな、本格派学園ミステリー。

【担当編集者コメント】
第15回スニーカー大賞《大賞》受賞作家作品とあって、さすがの読み応えです。特に、憂鬱なことを考え方一つで楽しくひっくり返す、山田さんの思考力は圧巻。嫁にしても、彼女にしても、幼なじみにしても、こんな切れ者はいません。早く隣に置きたい。

オススメしたい読者様は、
・最近の《沼あま》ラブコメ設定とは違った雰囲気をお探しの方。
・青春学園ものの古き良きをご存じの方(まさにそれって空気感です)。
思考を巡らせる面白さを追求したので、児童文庫からのランクアップにもぜひ。

感想・レビュー・書評

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  • 自己紹介で父親が探偵であることを言ってしまった戸村和のもとに、クラスメイトが事件の解決依頼を持ってくる。そんな事件を、双子の姉妹・山田雨恵と雪音と共に解決する青春学園ミステリ。3つのエピソードからなる連作短編と言えるでしょうか。姉妹の性格が両極端に振り切っていて、それを対比するのがとても面白い。謎の内容も凝っていて本格的。特に、第2章のノックス、ヴァン・ダインによる約束ごとだけを使った推理には唸らされました。ミステリと「キャラもの」のバランスがとても良くとれていて、今後も楽しみな作品でした。

  • なかなか主人公と双子の絡みがいいと思いました。結構日常系かなと思っていたのですが、謎解きって言うのか分かりませんが一つ一つの問題に対する双子の考え方が冴えてましたね、なるほど!って感じで結構楽しかったですね。

  •  『2020年 5月 25日 初版 発行』版、読了。


     子ひつじシリーズで有名な作者の最新刊。かわいらしい表紙ではありますが、服装的には偽りあり。読めばわかりますがダブルヒロインなので、二人でも良かったんじゃ? ……とも思えるし、このヒロイン単体でいくとしても、もう少し違うイメージ画でも良かったように感じます。(こんな服装で本編には一度も登場しません。これは絵師さんが悪いわけではなく、このイメージ画にしようと決めた出版社側に非があると感じます)

     本編構成は作者ならではで、連作短編としては見事でした。惜しむらくは、全体に漂う「かわいい依頼内容」に対する、推理会議的な緊迫感のなさ。この路線で行くなら、もう少しなにかしらのリアリティがほしいところでした。鞄の中からお菓子をとりだして、みんなでつまみ始めるとか。スマホの着信があって「げ、家族から買い物頼まれたー」とか。

     さじ加減的にゆるーい雰囲気ではあるけれど、キチンとミステリーものに則っての展開(出来事に無駄がない)内容に、もう少しくだけた感があっても良かったんでは? ……なんて思いました。

     個人的には三話で登場する三原さんが、なぜ挿絵としてない!? ……とも思ったり。

     文章を書き慣れている(あるいは小説が大好きという、作者の小説愛が感じられる)文体は非常に読みやすく、とても好感が持てるのですが「おもしろいんだけど、何か足りない」的な読後感でした。

     学園ミステリーラブコメというジャンルで括られていますが、印象としては「クラスメート達が抱える『難題』解決します!(たぶん)」ぐらいな内容でした。

  • それぞれ独立した事件を扱う3本の短編です。
    隣の席の双子が興味を持つせいで巻き込まれる主人公。
    お悩み相談程度の内容で、会話で捜査と、あと主人公と双子の人間関係も進むのが面白い。
    ただ、後のほう、特に3つめの話で前の事件を振り返る描写が、くどすぎる気がしたのが少し残念かな。
    ネットで公開されてるショートオーディオドラマも面白かったし、ショップ特典(メロン)の短編が、ストーリーの間に入る裏話だったのもよかった。
    続きは未定のようですが、続きが出るのを楽しみに待ちます。

  • 玩具堂先生のデビュー作「子ひつじは迷わない」と同系統、けれど別アプローチに拠って描かれる新作
    推理モノであることは確かなんだけど、普通のミステリーのように警察が動くような事件が起きることはないし、名探偵のように調査に出向くことはない
    本当に「子ひつじは迷わない」と似通った部分を幾つも見つけられる内容であるため、著者の作品を昔から読んでいる自分としては大変満足できる内容でしたよ

    「子ひつじは迷わない」において行われていたことが、ホームズが見出した真実をワトソンがひっくり返す、というものであったならこちらで行われている事はホームズとワトソンが協力して事件解決に当たるという推理モノとしては割とオーソドックスな代物
    いやまあ本作の場合、誰がホームズ役で誰がワトソン役なのかまだ判別が付いていないのだけど


    本作は父親の職業が探偵であると言うだけで一見すると冴えない印象を持つ戸村の両隣に座っている雨恵と雪音の双子姉妹が戸村に持ち込まれる事件の推理を勝手に行うというもの
    これで完全に雨恵と雪音だけで推理が完結していれば戸村って要らなくない?ということになるのだけど、そこを玩具堂先生は上手く調整しているね
    戸村はいわゆる巻き込まれ体質なのだけど、自分を頼ってきた依頼を無碍にはしないし、依頼者の心情に寄り添った形での真相究明を行おうとする。真相を調べて依頼者の不安や不幸を取り除こうとしている
    それは一部乾いた心を持っている双子姉妹には強く響くもの。そして響いた力が双子姉妹に推理するモチベーションを与えていく
    真相究明は双子が居ないと行えないけど、双子は戸村が居ないと真相究明を行えない。

    雨恵と雪音の姉妹はこれまた魅力的な少女たち。表面的には雨恵が感受性豊かで人との関わりを多方面的に持ち、雪音は秀才タイプで人付き合いを苦手としていると見えるのだけど、後々それぞれが抱える内面は表面に見えているものとは大きく異なると少しずつ判ってくる構成はとても好み

    雨恵はとても気分屋であるように見える
    人の机に平然と乗ったり、異性の前で素足を晒したり。それは蠱惑的な無防備さを備えているけれど、彼女の本当の魅力はその発想力だね。どうしたらそんな奇想天外な真相を求められるのかと聞きたくなるくらい。
    彼女だけで探偵役は完結しているのではないかと一瞬思ってしまうほどだけど、最後まで見ると彼女にとってモチベーションを与えてくれる戸村の存在がどれだけ大きいか見えてくる

    雪音は周囲との付き合い方に難儀しているように見える
    真面目な学級委員長というのを絵に描いたようなタイプなのだけれど、一皮剥ければミステリに対して並々ならぬこだわりを持っていたり、各種方面に対して深い知識を持っていたり
    彼女が持つ姉への劣等感は3人の関係性を物語る上で忘れられないもの
    最後まで読むと自分と関わり続けてくれている戸村への想いが存外深いことが見えてくる

    この巻を読んだ限りではいずれ戸村を巡って七面倒臭い事になってしまいそうな予感がぷんぷんするような……
    雪音は異性との関わりが少ない中で戸村との関わりが大きな持ってきそうだし、さっぱりしてそうに見える雨恵は雨恵で雪音と親しくなっていく戸村にじとっとした目線を向けている
    正直、3人の関係がこれからどうなっていくのか楽しみで仕方ない

    以下、本作で描かれた各事件への簡潔な感想
    「探偵と象」
    現実の探偵といえば、真っ先に思い浮かぶ浮気調査。本作でもそれを物語の導入としつつ、積極的な調査に出向かない推理法でどのようなアプローチが取れるのかと挑んだ面白い内容
    真相へ辿り着く手法は予想外だったけど、全ての真相が明かされた時にはあらゆる点が納得できてしまう気持ちいい内容

    「史上最薄殺人事件」
    サスペンスドラマではキャスト欄を見ただけで犯人が判るなんて話があるけれど、本作ではあらすじ・登場人物紹介・著者紹介・カバー絵だけで犯人当てをしようというもの
    そんな飛び道具的な推理方あるんだ!?と驚かされた真相でしたよ

    「放課後、はさまれる、ひっくり返る」
    カンバスの女性像に突き立てられたナイフは誰が刺したのかと推理する内容
    こちらは特別なトリックが使われていない関係で、事件関係者達の心情をどう捉えるか?という点が主題となっているね
    戸村達3人がそれぞれ担う役割が形作られるエピソード

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