- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040723655
作品紹介・あらすじ
駅監視システムとの情報戦に挑む『京都編』、横浜駅の崩壊と再構築を観測する『群馬編』、駅の侵食から逃れた代償に暴力が許容される『熊本編』、消息不明になった北の工作員の行方を追う『岩手編』を収録。
感想・レビュー・書評
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面白かった!横浜駅SFのサイドストーリー的な全部繋がってる短編集。「京都」「群馬」「熊本」「岩手」。
ヒロトに影響を与えた二条ケイジンの娘、ケイハがキセル同盟を立ち上げていく経過が面白かった。キセル同盟はてっきり、両端区間だけ払って、中間運賃を払わない不正乗車のキセルからきてると思っていたが、本書内に出てくる煙草密売業から由来していることになっている(もともと、語源はタバコのキセルで正解なんだが)。多分全部つながっているんだろうが、こういう設定や仕様がとても面白い。JR北海道のアンドロイド工作員のところも面白かったが、結局ユキエさんは話にしか出てこず、ユキエさんが主役の作品も読みたい。あと、サマユンクルのその後とか。
存外気に入ったのが、あとがき。あとがきではなく、あとがきという題の面白いSF短編になっている。
p253「英語なんて海外行けば勝手に覚える」というのはまるっきりの嘘だ。喋らなければ覚えない。そして日本もアメリカも、ほとんど人と会話せずに過ごせる程度には文明化されている。」
これはその通り、フィクションではなく本当。2017年にあのTタワーの富豪がプレジデントをしてたときに、メキシコとの国境で壁を作るという実際の話が出てきて、それを構造遺伝界を伝播させることで、自己増殖的に構築させる、という計画が描かれたりとか、実際の体験談というか事実レポートをパラレルワールド的にズラせて、横浜駅SFシステムにのっけているところが、非常に脳味噌が煮えた感じで楽しい。そして、結末がすごい。
この”あとがき”は必読である。
実は、
横浜駅SFの前巻を読んだ後、
あまりに面白かったので、慌てて同じ古書屋に行って、
全国版も回収してきた。
横浜駅SFの横に並んでたのは見ていたが、同じものだと思っていた。
特装版、みたいな。
確か、価格が百円違いぐらいだったので、なんにせよ捨値であったが、
より安い方を選ぶわな、読むだけやし。
で、この、私がよく行く古本屋、他所の同チェーンに比べると、
いくらかお安い設定になっているので、、
時折、デジタルセDリが居座っていて、不快ではある。
本をよく知っていて、目利きで行っているのは、まあ許せるんだが、
バーコードリーダーで片っ端から差額チェックしていく姿は
羅生門で死体から髪の毛を引き抜くあのシーンを連想させられる。
まあ、私としては興味のないジャンクなハウツー本から狙われるので、生息域が違うといえば、違うのだが、それでも本愛のカケラもないところがどうにも辛い。
ただ、ひどいことに、
そのバーコードセDの人、青い顔でめちゃゴホゴホと嫌な咳をしていたので、
咳に気づいた瞬間に、ささっと目的の本だけゲットして(残っててよかった)
他の本は物色せずに店を出た。
本屋で本以外のことも注意せなあかんというのは
嫌な時期やな、と思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「横浜駅SF」の前日談を描いた短編集。
主な登場人物は、JR北日本の工作員アンドロイドのハイクンテレケ&キセル同盟の首謀者ケイハ&同盟ナンバー2の熊野シドウ(瀬戸内・京都編)、医者の青目先生&ケイハの父親ニジョー(群馬編)、JR福岡の技術部門のミイカ&情報部門の大隈(熊本編)、ハイクンテレケ&担当オペレーター留辺(岩手編)。
2冊目ということで作品の世界観にはだいぶ馴れたし、前作の登場人物のイメージもクリアになった。こちらを先に読んだ方が良かったかも。
結局、JR北日本の指導者 "ユキエ" の正体は分からず仕舞い。この謎を残したのは何故だろう? -
「監督。野生の自動改札が何体か近づいて来ています。距離は50メートル。もうすぐカメラに映ります。」
全国版というとなんか分かりにくいけれど要するに外伝。本編の補完的位置づけのお話大好き。
瀬戸内・京都編
瀬戸内海の島に逃げついたハイクンテレケが、キセル同盟№2で駅から追放されたシドウの話を聞くお話。
シドウがケイハとキセル同盟を立ち上げて、発展して、崩壊するまでを語る。
群馬編
ケイハの父ケイジンと青目の医者、浅間山崩壊の一部始終。
熊本編
JR九州技術部門化学班に降ってわいた殺人事件の顛末。
岩手編
JR北日本のアンドロイドたちの会話
オーバーテクノロジーなAIたちをどうやって作ったのか考察したりする。答えは得られない。知りたい~。
この設定でもう何冊か書いて欲しいな。 -
期待通りに面白かったのは間違いない。一応前作のスピンオフではあるけれど、登場人物が重複していること以外前作のストーリーの大枠に大きく関わっているわけではないので、同じ世界観を共有した独立した作品として楽しむことができる。
コロポックル達がみんな個性的で魅力的なキャラクターだったな。彼らが出る話をもっと膨らませて書いてほしかった。特に岩手編、謎を謎のまま残して少し尻窄みな終わり方だったので中長編でもよかったのに…と思ってしまう。
このユニバースの他の時代の話も見てみたい、例えば冬戦争終了直後とか。もしくは同時代の外国はどうなってるのか、とか。ということで続編を楽しみにしています。 -
おもしろかった。適度なエンターテイメント性を持たせたライトなSFで、文章も平易、小難しそうな用語は出てくるけど実は理解しなくても物語を読み進められるなど、タイトル同様にSFっぽさを押し出しながらSF初心者にもとっつきやすい工夫が凝らされていて、娯楽小説として質が高いのではないかと思う。増殖を続け、本州全土に拡大した横浜駅と、エキナカで自動改札機に監視されながら生き続ける人々。悲壮感を抱かせすぎないディストピア。恋愛要素や冒険ものが薄めだが、そこらへんもあくまでライト。
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全国版という副題ですが、本編を補完するような内容ですね。なので、この巻だけ読んでしまうと、ものすごく尻切れ感がすると思います。
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横浜駅が自己増殖して、本州の99%を覆い尽くして200年になる…、というSF小説の続編…というのか外伝。
大きく分けて、「瀬戸内・京都編」「群馬編」「熊本編」「岩手編」の4つの話が収録されていて、いずれも横浜駅SF本編より前の話。横浜駅SF本編で登場した重要人物たちの過去の行動がわかって面白かった。
いろいろと納得する部分はあったけれど、まだ語られていない謎も残したまま。これは、今後、さらに描く予定があるのか、それとも後は読者が勝手に考えてくれ、ということなのか…。
ぜひともどこかに続きを書いてほしくもあり、説明しないほうが小説として完全なのかもとも思ったりもする。
ユキエさんとは何者で何を目的としていたのか、キト
はいったいどういう存在なのか、クルはどこでどうしているのか、そして人体への構造遺伝界キャンセラー照射治療費はいったいいくらだったのか(いや、それはいいかw)…。
そんないろいろな謎と、さらに言えば、横浜駅SF後の世界で、登場人物たちがどう生きて行くのか、知りたいものです。 -
前作を補完するストーリーかな。より理解が深まりました。しかし、ユキエさんやクルのその後も気になるし、まだ続けて欲しいけれど、もういいやかなあとも思う。一つ一つのストーリー楽しめたんだけれどさ。