スパイ教室 短編集03 ハネムーン・レイカー (ファンタジア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040747286

作品紹介・あらすじ

『飛禽』のヴィンドは、フェンド連邦の地で窮地に立たされていた。『べリアス』による襲撃、世界最高峰の力を誇る『黒蟷螂』との対峙。次々と仲間が倒れゆく中、彼の脳裏にあったのは『灯』と過ごした日々だった……

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!短編集の03だが、短編感はあんまりない。短編というよりはスピンオフというか、外伝というか、思い出し編というか。灯の本拠地で鳳たちと訓練した日々の思い出。鳳、めちゃいいキャラ揃いだったのにもったいないことこの上なし。6章のハネムーンレイカーは泣ける。

    「本当の愚か者とは、月を集めようとした者を笑った者なんだよ」

  • 『灯』と『鳳』の蜜月期間なる話が書かれている。
    ジビアとビックスの合コンの話かなーと思っていたら意外にもサラ、アネット、エルナ、ファルマの合コンだった。
    この4人に囲まれて食事するのは楽しそうだ。
    ただ呑気に合コンするだけじゃないのは当たり前。
    ファルマの能力の高さが認識できる回でもあった。

    ビックスはヴィンドに対して複雑な気持ちを抱いてるんだろう。自身もスパイとして力を持ちながらも、そんな自分を凌駕する存在で、尊敬とともに目の上のたんこぶでもあったのだろうな。
    基本は明るくチャラい性格だが、根底には真面目に強くなりたいという気持ちがあるし、グレーテには良い勉強になったのでは。

    アネット回は、クノーとの交流が書かれている。
    仮面を被り、多くを語らない(と言うか喋らな過ぎ)クノーの過去が少しだけ垣間見れる。クノーは精神的には『鳳』の中で一番強いかもしれないと思った。
    アネットとクノー回のラストは結構惨状になるのだが、アネットの優しい面を見た気がする。彼女にとって『灯』の少女たちが「楽しい玩具」から「守りたい存在」に変われば良いなと思う。

    『鳳』のほとんどのメンバーがもういないというのは、本当によくできた設定だなと思う。こんなに個々人が強いチームでも、敵に蹂躙されてしまったのだから。『灯』は彼らの思いを汲んで強くならなければいけない。彼らに不足していた結束力を強固にして。

  • 登場した巻に壊滅したライバルチームをこうも温かく、そして幾度にも亘って描いたライトノベルってなかなか無いのではないかと思えた短編集
    各話タイトルから判るように改めて『鳳』の人柄を描いているね。唯一ヴィンドだけタイトルになっていないけれど、それは彼が最終的に何を掴もうとしていたか、『鳳』というチームをどう見ていたかを考えれば彼個人に迫ったエピソードを別個に必要としなかったとも捉えられるかな


    この短編集では『鳳』の内実に迫る内容となっているけど、同時に『堕落論』という特殊な敵も登場する
    『鳳』がスパイ養成所のエリートで『灯』が落ちこぼれなら、『堕落論』はエリート寄りの存在。ただし、『鳳』と絶対的に異なる点は諦めてしまったという一点
    この一点の違いが逆に『鳳』や『灯』とはどのような存在かと迫る切り口になっているね

    まず描かれるはファルマ、彼女は才能豊かでスパイとしての実力も申し分ない事から諦めを知らない人間かな。だからこそ才能を開かせる者やスパイの世界に入りながら死なない者を祝う立場
    ファルマが任務にかこつけてサラを接待したのはそういった意味合いだね

    2章では特別合同演習にて敗北を味わった優等生達のその後が描かれていたね
    モニカがこの演習で何を思ったかは以前に描かれた通り。モニカはこれを契機に落ちこぼれとなったのだけど、一方でスパイ学校は辞めなかった。対してこのエピソードで登場したシャオリーは挫折して辞めた者
    だからモニカは諦めたシャオリーを嘲笑う事が出来る。それは才能では無い別の基準点
    ……そう考えると特別合同演習で「素直に憧れた」なんて言えるランは別の方面で才能豊かと言えるかもしれないけど(笑)

    クノーは色々な意味で特殊な人間のようで…。だからこそアネットと組合せのよい人間となれるのかな
    彼が語る『血族』、時代が生み出した歪み。あのエピソードはどちらかと言えばアネットがメインだったからクノーの内面は積極的に描かれてはいない
    けど猫に迫ろうとするアネットが何を思い知らなければならないか、そして何を変えなければならないか。それを教えられる時点で、また彼が『鳳』に居着いている時点で何を諦めなかったかは少し見えるような気がする。それが別の意味で『血族』として血が薄いとの言葉にも繋がるのだろうけど
    引き起こしてしまった猫の死の責任、アネットは諦めずこれへ向き合い続けられるのだろうか?

    4章では諦めない為にどのような衝動を抱え続けるかという話だったのかな
    確かにキュールが言うように今のグレーテは安定してしまっている。スパイ少女達の殆どがスパイ活動を通して何らかの目標を抱いているのに対して、グレーテは現状に辿り着いてしまった事で満たされてしまった。それでは他者の驚異に成れず仲間の成長から置いていかれるかもしれない
    グレーテが目指すべき在り方の指標となったのがビックスだね。エリート集団『鳳』に属しながらもすぐ隣の強者に並び立とうと諦めず努力を重ねている
    ならグレーテが諦めず目指す隣は正しくクラウスの隣。『鳳』を出し抜いて、更にそれすら出汁にして今回の目的を達したグレーテは一つの成長を見せたね

    5章は『鳳』全体をフォーカスしつつ『鳳』を心配するキュール、そこから更にかつての『鳳』ボスであるアーディへと繋がり、それが今のボスであるヴィンドへと収束していく形となっていたかな
    大真面目に『堕落論』処刑へ動く『鳳』を他所に超が付くくらいバカバカしい行為に興じる『灯』。だというのに『灯』の行動が『鳳』だけでは出来なかった微かな希望を繋いでみせた
    二つで一つの不死鳥。それは諦めなかった者達が描き出した傑作と言えるのだろうね


    そうして蜜月の全てが描かれた後に至るのはあのシーンか……
    次々と倒れ伏す『鳳』、絶望の中で掴める筈のない月に手を伸ばしたヴィンドが実は手にしていたもの。これを読むと確かにフェンド連邦にて『鳳』は『灯』を助けていたのだと実感できるよ

  • どこが短編なんやと言いたくなる出来やな

  • チーム『鳳』の各メンバーを描いた短編集でした。
    各メンバーの個性に本編との違いもなく、深掘りもされていないため、短編集1、2巻に比べて、ちょっと物足りない感じでした。
    『鳳』の元ボスが出てきたり、アネットとクノーのつながりが示唆されたりと、今後の本編に関わってきそうな点もあるため、本編8巻の後に読んだほうが良いとは思います。

  • 鳳のエピソードは、笑いあり涙ありだった。
    それだけに彼らの成長を今後見ることができなくなると思うととても悲しい。

  • 【Bookwalker】本編で語られなかった『灯』と『鳳』の蜜月を描く極上の短編集第3巻。笑いも苦さもある、この2つのチームのこんなにも満ち足りた日々はもう二度と来ないのだと思うと胸が痛い。今回のエピソードでは、クノーとアネットのお話しが最も心に刺さりました。

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著者プロフィール

第32回ファンタジア大賞《大賞》受賞作「スパイ教室」でデビュー。

「2023年 『スパイ教室10 《高天原》のサラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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