スパイ教室 短編集04 NO TIME TO 退 (ファンタジア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 131
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040749198

作品紹介・あらすじ

「拙者はもう働かないでござる!!」フェンド連邦での任務後、突然ニートと化したラン。陽炎パレスに居座り続ける彼女を追い出すため、『灯』メンバーによる再就職先探しが始まる……!?

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。いつもながらスパイ教室の短編集は短編ではなくて外伝っぽいというか、グランドホテル形式の長編とも言えるのでは。読みごたえあり。鳳がらみのエピソード。生前、鳳が課した宿題にとりくむ。個人的に一番おもしろかったのが、ファルマの課題、『聖樹』ダグウィンのところ。ストレートに面白い(笑)。ものすんごく良い設定の鳳メンバーを、すぐに壊滅させて、この作者はなんてもったいないことを!!と思ったが、こうして語られるというのも小説のいいところだな、と再確認させられた。最後のダグウィンと先生の対決が良い。こうした弔いもスパイらしくてかっこええです。

  • リリィとサラがスパイ養成学校に戻される話が一番好き。なんとリリィ、いじめられていたとは。「女が嫌いな女」タイプではないと思っていたんだけどな。
    ゴリッゴリにいじめられぬいた後の最後の反撃は見事でスカッとする。しかも養成学校トップまで脅迫するとは流石。リリィも成長したなぁと最初の駄目っぷりを知っているからこそ感慨深い。

    ファルマの兄ダグウィンの希望を叶えるミッションの難易度の高さに関わらず、それをクリアし、且つ孤児院の子どもたちの遊び場まで作ってしまったティアの話も良かった。グレーテのミッションクリアの方法も賢いのだが、私は泥臭く頑張る最近のティアが好きなので、彼女を応援している。
    ファルマにはこんなに妹思いの兄がいたのか。この兄妹は二度と会うことはないのだ。何とスパイの世界は酷いことか。
    それでも皆、スパイを続ける。ゆるーく過ごしているように見えるリリィたちだが、生半可な覚悟では決して続けていけないんだよね。

  • 怪人辞典を挿絵に入れてほしい

  • 『鳳』絡みのセカンドシーズンがついに完結されました。
    短編集なので、ショートストーリー5本で構成されていますが、第8.5巻って感じで読めました。
    モニカやランのその後が気になっていたので、読み終えてスッキリした気持ちになりました。

  • 鳳を襲撃したアメリも、疑いながらもそれが国のためと信じて行ったわけで、アメリの信念を聞いてからは完全には憎めなくなってしまった。最後の遺体からスープのレシピが綺麗に折りたたまれて出てきたところは切なすぎる。

    ダグウィンも最初はただの変態かと思ったが、家族を守りたいという信念を持っていたし、ファルマを失った悲しみをどこにぶつければいいのかという葛藤も読んでいて辛かった。

  • スパイ教室短編集。いつもの短編集ってほぼ前編コメディぽいというか、ギャグに振り切ってるシーンが多かったけど、今回はシリアス会もそれなりにあります。本編の時間軸の隙間を描いてくれていて、一時は灯と敵対したモニカがどんなふうにまた仲間たちの輪の中に戻ってこれたのか。個人的に非常に気になるところだったので、短編で読めて嬉しかったです。

  • 本編よりもコメディ色豊かな短編集なのだけど、時系列が数多の悲劇が繰り広げれらたフェンド連邦編を挟んだものになっているものだから、描かれる物語も幾らか陰鬱さを含んだものに
    『鳳』の壊滅、モニカの裏切り。どちらも『灯』にとって想像を絶する出来事であっただけにそれを非常に引き摺っている


    そんな中でメインのお題として用立てられているのはランの進退か
    壊滅した『鳳』の中で唯一生き残ってしまった。『灯』が『鳳』の壊滅に衝撃を受けるなら、『鳳』だったランが抱く喪失は如何程のものか
    短編の合間に挟まれるエピソードではそれをコメディ調で紡いでいるけれど、一方でこれは『灯』がいずれ向き合わなければならないお題でも在るんだよね
    スパイである以上はいつまでも不変であるとは限らない。いずれ終わりは来る。その時に自分達はどのような進退を選ぶのか
    ランに選ばせようとする進退はそのまま自分達が選べるものでも有る

    そこで今巻に収録された短編は幾つもの進退、道筋を描いたものになったのかな
    引くほどイジメられていたと言いつつも、養成学校での経験が今の自分を形作っていると明言するリリイ
    かつては妹に固執していたダグウィンが孤児たちの面倒を見るようになる様を目撃したティア
    国の操り人形になりつつも一人のスパイとして藻掻き続けたアメリと接し、彼女の遺した味を託されたエルナ

    そういった諸々が描かれつつも、ランとは異なる方面にて進退を問われたのがモニカだったのかな
    8巻ではギリギリ生き残って、9巻では制限は有りつつも仲間に戻っていたから忘れていたけど、仲間を裏切ったという枷はこちらが想像する以上に彼女に影響があったようで

    自分が許されて良い筈がないと鬱々と呟く彼女は明言はしていないけど、もしかしたら『灯』を抜ける事すら考えていたかも知れなくて
    クラウスやジビア、サラからどのような言葉を掛けられてもすぐには『灯』の輪に戻れなかったのはモニカが抱える後ろめたさの証拠
    そんな彼女は彼女だけの力では前に進めなかった。だからこそ荒療治が必要で

    その荒療治が度を越したお仕置きだったのは流石にどうかと思うけれど(笑)
    あれ、下手したら鼻が破壊されるんじゃなかろうか(笑)


    ランが直面した哀しみ、ダグウィンが失った情熱、モニカに課された試練
    スパイである以上は必ず相対する喪失という共通項。これを打ち破るのがまさかの祭りとはね
    理性も外面も捨て去ったような無茶苦茶な乱闘騒ぎ。何処をどう切り取ってもスマートとはいえない遣り方。それだけに少しでも落ち着いていたら口に出せないみっともない哀しみを存分に放出できる
    それは『鳳』の壊滅によって生じた哀しみに区切りをつけさせ、迷い続けた進退にも決着を付けるものとなるのか

    閑職に落ち着く路線も有り得たランが再びスパイの道を選ぶとはなぁ……
    前に進み続ける気力を持ち直した彼女らがこれからどうなっていくのか、そして世界に何処まで怪人と認識されてしまうのか楽しみに思える短編集だったよ

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著者プロフィール

第32回ファンタジア大賞《大賞》受賞作「スパイ教室」でデビュー。

「2023年 『スパイ教室10 《高天原》のサラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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