揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040824215

作品紹介・あらすじ

(章立てと主な項目)
第一章 日本は「大地変動の時代」に突入 
「海の地震」と「陸の地震」/正断層と逆断層/日本列島で地震が起きない場所はない/変動期は今後も続く

第二章 2035プラスマイナス5年、南海トラフ巨大地震の激甚さ
なぜ2030から40年の発生を予測できるのか/津波は「ビッグウェーブ」ではない/根室沖巨大地震にも注意を

第三章 20の火山がスタンバイ状態 
巨大地震の後には噴火が/「3・11」直後から増えたスタンバイ状態の火山/噴火の三つのモデル/富士山噴火が南海トラフ巨大地震と連動したら

第四章 富士山噴火をシミュレートする 
(1)火山灰 
(2)溶岩流 
(3)噴石と火山弾 
(4)火砕流 
(5)泥流 

第五章 地球温暖化は自明でない 
「異常気象」の「異常」は人間にとっての異常/地球は氷期に向かっている/温暖化は自明ではない/異常気象と偏西風/地球のバランス・システム「地球惑星システム」

第六章 減災の意識を持つ 
知識は命を救う/指示待ちではなく自発的になるには/正常性バイアスを知る/「空振り」を受け入れる姿勢を持つ/個別「ハザードマップ」の重要性を知る

第七章 ポストGAFAを見据えて ――必要となる思考、知識、教養
戦略的な勉強を/知識、アウトプット、教養のサイクル/好きなことより、できること/人生で出くわす「偶然」を楽しむ/スキマにこそ醍醐味が/京都大学の教育法/難しい本は書いた人が悪い/時間を4つに分ける/読書はもっとも効率のいい勉強の手段

第八章 地球46億年の命をつなぐ 
「長尺の目」で見る、ということ/ユクスキュルが唱えた「環世界」/アトランティス大陸は実在した?/大噴火は文明を消滅させる/地球科学的な時間と空間を

感想・レビュー・書評

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  • 地震と噴火のメカニズム、災害への警告、減災の勧め、ポストGAFAをどう生きるか。地学に哲学、コンテンツは多岐に渡る。…【好きなことより、できること】誰かのためにできることをまずやる。時間を無駄にしない。人生は思ったよりも短い。【温暖化は自明ではない】”温暖化狂”になってはならない。科学とは無知の知を自覚するもの。何事も決めつけはよくない。【2035年±5年、巨大地震がやってくる】東日本大震災の何倍もの規模。そのとき自分はどうしているのか。備えと覚悟。…自然の偉大さ、人類の小ささ。生きることを見つめなおす。

  • 火山学者の著者がこれからの日本の震災についてを徹底解説。

    南海トラフは2035±5年でくると予想。

    東京直下地震はいつきても不思議じゃない。

    富士山も「噴火スタンバイ状態」

    減災についての知識を常に持ちつつ行動を改めなければならないと強く思った。

    日本で生活しているすべてが読むべき本ですわ。

  • ・日本列島で地震が起きない場所はない
     2000もの活断層は具体的にどこにあるのでしょうか。もしどこかに固まっていればそこを避ければいい、と思うかもしれませんが、残念なことに偏在していません。いえ、日本国内で活断層がない場所はありません。

    ・とりわけ近い将来に起こると危険視されている激甚災害の筆頭は、2035年±5年のあいだに発生が予測される「南海トラフ巨大地震」です。

    ・「3・11」のような海溝型の巨大地震が発生した場合、数か月から数年以内に、活火山の噴火を誘発することがあります。原因として考えられているのは、地盤にかかる圧力が変化した結果、マグマの動きが活発化する、というものです。


    ■地球温暖化の根拠
     こうした異常気象に関する話題が、メディアに登場しない日はありません。セットのように目にするのが「地球温暖化」という言葉です。たとえば「地球温暖化が人類を滅ぼす」「地球温暖化で今後気温は6℃上昇し、海水面も上がる」といった見出しが、新聞やウェブに躍っています。
     COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)で締結された「パリ協定」をめぐり、先進国のパワーバランスが争いごとを生んでいるのも事実です。パリ協定とは、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」目的のために、国際的な取り組みをすることが合意された協定のことです。地球温暖化問題は、地球科学だけでなく、政治や経済にとっても切り離せない重要な課題でもあるでしょう。実際に地球の平均気温を調べると、過去400年の間に高くなってきたことがわかっています。20世紀に入ってからは、気象技術の発展によって、より詳細なデータが得られるようになりました。
     その20世紀以降のデータに限ってみると、たとえば日本では1898年以降、100年あたり約1.1℃の割合で平均気温が上昇しています(図5-1)。全国でソメイヨシノの開花日がここ20年ほどで早くなり、さくら前線が早くやってくるようになったことなどは実感しやすいでしょう。
     もう1つ、温暖化を示す根拠となるデータがあります。世界平均の海水面の変化です。それによると、1901~2010年のあいだに、海水面は19mm上昇しています。水は温度が上ると膨張し、体積が増えるという性質を持っています。
     そのため、地球温暖化によって海水の温度が上がることで海水の体積が増え、水位も上がったと考えられます。また、北極や南極付近にある大量の氷も、温暖化により海水温が上昇すれば融けるので、そのぶん海水の体積が増えて水位が上がります。
     この状態のまま温暖化が進行すれば、2100年ごろの地球全体の平均気温が現在より約2.6~4.8℃上昇し、海水面の平均は約45~322㎝上昇すると予測されているのです。
     さらに、温暖化問題で必ず話題になる二酸化炭素の濃度は、過去1000年間で280㎜から400㎜にまで上昇しています。これは急上昇といってもいい数値です。原因はすでにお気づきの通り、石油、石炭などの化石燃料を大量に使い続けたことです。これらを燃やせば、膨大な二酸化炭素が発生するからです。


    ■温暖化は自明ではない
     地球温暖化についての議論の中で、とくに産業革命以降に大量に放出された二酸化炭素(石炭、石油の使用など、人間の活動によって生じた二酸化炭素)が現在の温暖化を生んだのだ、という考え方があります。もちろんその可能性はあります。
     ところが、二酸化炭素が温暖化を引き起こす寄与率については、研究者によってなんと9 湖から1側まで、大きく意見が分かれているのです。
     2010年には、IPCC (気候変動に関する政府間パネル)が提出したデータの確実性を めぐって、何人かの研究者が疑義を呈しています。また、今後十数年間は寒冷化に向かうの だ、と主張する地球科学者は少なからずいます。
     私自身は、将来にわたって、今の勢いで地球温暖化が進むかどうかは必ずしも自明でない、 と考えています。たとえば、大規模な火山活動が始まると、地球の平均気温を数℃下げる現 象がたびたび起きてきました。こうした現象からも、温暖化の進行が当然の成り行きではな いことは、理解していただけるのではないでしょうか。
     人口の増大、都市化、経済活動は確かに地球環境と気候変動に影響を与えてきましたが、 ちょうじやく 実は地球科学の「長尺の目」で見ると、いずれ地球という大自然が吸収してくれる程度のも のなのです。人間による環境破壊には由々しきもの、目に余るものが多々ありますが、地球全体の営力から見ると小さいということも知っておいていただきたいと思います。よって結 果としては温暖化と寒冷化、双方の対策をすべきということに結論付けられるのです。
     もともと自然界には様々な周期の変動現象があります。たとえば、一般的に人類が文明を持たなかった時代の氷河期などのこうした現象は、近現代の人類の生産活動が起こした短期 的現象から区別して評価しなければなりません。
     また、人間が大量の二酸化炭素を排出しても、地球にはもっと大きなフィードバック機能 が備わっています。そもそも二酸化炭素量が増大しても、それらの多くは海に溶けるでしょ う。逆に大気中の二酸化炭素が減少すると、海に溶けたものが出てきて補うという、バッフアシステム(緩衝装置)もあるからです。 このような現象についての精査を踏まえないと、大気中の二酸化炭素が単純に増え続ける かどうかも決められません。たとえば大気中の二酸化炭素が減ることで、植物の光合成活動が弱まり、結果的に人間の食糧が減少する可能性すらあります。現在、地球上の食糧が確保 できているのは、二酸化炭素量がこれだけあるからだ、ともいえるのです。 人口増大が原因ではなく、二酸化炭素減少や寒冷化による食糧危機が生まれるかもしれません。人間のスケールのみで地球を判断すると大きく誤ってしまいます。 地球温暖化は先ほど述べたような「長尺の目」で捉えることが重要です。そうしないと、目先の国内外の政治状況、経済状況に振り回される事態から脱却できなくなります。
     日本は二酸化炭素の排出量を5~40%削減することや、SDGs (Sustainable Development Goals)などについて軽々しく約束したりしています。将来、長期にわたって温暖化するという結論を科学の世界がきちんと出していないにもかかわらず、政界・経済界のみの都合で決定していくのはとても危険だと考えています。
     人間にとって「たいへん困ったこと」があっても、地球にとってはすべてを吸収してしまうような巨大なメカニズムが存在しています。ここで地球も「困っている」と考えるのは、もしかすると人間の自信過剰かもしれないのです。地球の問題は、もっと長い尺度で眺めていかないといけません。


    自然災害が起きたとき、実際に必要となる緊急情報を挙げてみます。
    1 現在どこで、どんな危機的な災害が起きているのかという「災害地・危険度情報」
    2いつ避難するべきかという避難のタイミング、また、どちらの方向へ避難すべきかという具体的な「行動指示情報」
    (以上2点は、直接命に関わり、緊急の判断を要するものです)
    3刻々と変化していく災害の事実について、リアルタイムで的確に伝える「被害進行情報」
    4災害が起こった直後から急速に必要度が増す「安否情報」
    5ライフラインや道路の状況、運輸手段など、被災地での今後の生活に欠くことのできない「生活情報」

  • ■書名

    書名:揺れる大地を賢く生きる 京大地球科学教授の最終講義
    著者:鎌田 浩毅 (著)

    ■感想

    うーん、とにかく合わないな~
    危機感を煽る商法は、本当に合わない。
    自然災害怖いでしょ?色々危機でしょ?と煽るだけあおって大した提案はしていない。
    響かないし、だから何?としか思わない。
    まあ、本人は分かって煽っているのだろうけど、本当にこういう煽り本は
    害悪でしかないと思う。

    まあ、個人の感想です。

  • 「南海トラフ巨大地震」は2035年前後の発生が予測され、富士山は「噴火スタンバイ」状態にある。刻々と迫る危機に私たちはどう備えればよいのか? 地球科学の専門家が、巨大地震や火山噴火について詳述し、災害に対する心構えを説く

    第一章 日本は「大地変動の時代」に突入
    第二章 2035プラスマイナス5年、南海トラフ巨大地震の激甚さ
    第三章 20の火山がスタンバイ状態
    第四章 富士山噴火をシミュレートする
    第五章 地球温暖化は自明でない
    第六章 減災の意識を持つ
    第七章 ポストGAFAを見据えて ――必要となる思考、知識、教養
    第八章 地球46億年の命をつなぐ

  • 2022年12月号

  • 地球温暖化は確証がない。

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著者プロフィール

鎌田 浩毅(かまた・ひろき)
1955年東京生まれ。筑波大学附属駒場中・高等学校卒業。東京大学理学部地学科卒業。通産省、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・同名誉教授。専門は火山学、地球科学、科学教育。「京大人気No.1教授」の「科学の伝道師」。著書は『新版 一生モノの勉強法』『座右の古典』(ちくま文庫)、『やりなおし高校地学』(ちくま新書)、『地学のツボ』(ちくまプリマー新書)など。

「2021年 『100年無敵の勉強法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鎌田浩毅の作品

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