沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041000168

作品紹介・あらすじ

安倍仲麻呂が遺した手紙により、空海たちが知った事実。それは、かつて玄宗皇帝が楊貴妃を処刑せざるを得ない状況に陥った際、道士・黄鶴の提案に従って尸解の法を用い、楊貴妃を仮死状態にして難を逃れようとしたが、あえなく失敗したというものだった。一方、青龍寺の恵果のもとに、妖しい影-黄鶴の弟子であった白龍が現れる。白龍は順宗皇帝を呪殺し、唐王朝を完全に滅ぼすと予告する。中国伝奇小説の傑作、第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 人たらし空海が唐の国にて巻き込まれた不思議な出来事は楊貴妃をめぐる壮大で政治的陰謀がにおう事件だった。ただ巻き込まれただけではなく、密かに着々と本来の目的である密教を教わる準備も進めていて、マルチタスクな空海に圧倒される。逸勢とのやりとりもますます冴え渡り、ホームズ&ワトソンの様相で引き込まれる。

  • 皇帝への呪法の攻防も気になるが、高力士の真実が書かれた手紙の内容…最後の「高力士」の章は一気読みだ。次が気になる終わり方。いよいよ鬼と宴すかな。

  • この人が裏切っていて、まさかのあの人があの人で…
    阿倍仲麻呂や高力士の手紙によってだんだんと明らかになっていく真相。過去の事件と現在の事件が少しずつ繋がってきています。
    かつての宴を再現して、何が起こるのでしょう…!最終巻が楽しみです。

    逸勢の素直なところに本当に癒されます。空海が逸勢に仏法、密法について語る場面が好きです。逸勢のように私もわかったようなわからないような気分になりました。
    空海が超人すぎて、ちょいちょい逸勢はプチ劣等感に悩まされますが…、遣唐使として唐に来ている時点で逸勢は十分優秀なはず…!笑

    それにしても、宮廷で生きていくことの尋常でない大変さ…怖すぎます。

  • 2点間の距離…空間…space…宇宙…空…

    空海の思想もジワジワと理解できるように仕込んである第3巻。
    そして物語は、楊貴妃を中心としたそれぞれの思惑が明かされる第4巻へと続く…。

  • 真相に近づいてゆく第三巻。高力士の手紙長っ!玄宗皇帝の時代の話が興味深かった。黄鶴の術が失敗して、以前の楊貴妃ではなくなってしまったことに玄宗がだいぶがっかりしてて、なんかこう、やっぱ見た目でわかりやすく冷められるのって辛いなと。

    話的にはちょっと中だるみ感あるかな。蘊蓄とかちょっと飽きてきた。空海の禅問答みたいなのあったけど、でもこの方真言宗よね?
    このシリーズ、上下巻か、せいぜい3巻で納められたのでは。とか思ってしまう。
    読むのにちょっと疲れてきたので、一旦空海以外の本を読んでみようかな。

  • 長めかもしれない物語であるが、劇中人物による会話や「告白が綴られた書簡」というような読み易くテンポが良い文章で綴られている。殊に、橘逸勢―空海と共に唐へ渡った人物―と空海との禅問答のようなやり取りが多く散りばめられているが、これは“主筋”の展開上必要な内容の他、“副筋”である空海が至ろうとした境地、或る意味「哲学」のような内容の示唆に富んだモノで、非常に好かったと思う。
    どうでもいいことながら…作中の空海と橘逸勢とのやり取りだが、読んでいた時の「頭の中での“声の出演”」は少し古い映画でそれらの役を演じていた北大路欣也(=空海)と石橋蓮司(=橘逸勢)だった…
    本作に関しては、この小説を原案とした中国と日本との合作の映画も在ると聞いた。空海達が渡航したような時代、或いは作中に登場する<安史の乱>という事件が在ったその半世紀近く前という時代の“長安”は「絢爛たる大都市」で「世界最大級の街」だったという。広大な唐帝国の領域の隅々から、加えて日本やペルシャというような少し遠めな国々から色々な人達や文物が入り込んでいて、巨大な発信力を有していた。そんな舞台での「伝奇」は、映像作品にすれば見応えは在ると思う。それへの好奇心は駆られるのだが、それはそれとして、本作は色々な要素が絡まり合った長篇小説という表現が非常に似つかわしいようにも思える。

  • 前巻は仲麻呂が李白に送ろうとした手紙で終わっていた。
    この巻では高力士が仲麻呂(晁衡)に宛てた手紙をクライマックスとする。
    手紙の後には、黄鶴と瀕死の高力士との対話に続く。
    いよいよ楊貴妃と玄宗の話に集中していく。

    楊貴妃にかけられた術を緩めたのは誰か。
    ドゥルジとは誰か。
    黄鶴と楊貴妃との関係は。
    ―といったことになるのだけど。

    空海は主人公というより、狂言回しのような位置にいる。
    逸勢はもはや、ワトソン君。
    詩に取りつかれたオタク青年、白楽天がむしろ個性的に見える。
    手紙の文体が基本同じなので、話者が変わった感じがあまりない。
    ちょっと残念な感じ。

    巻末の解説を読んで、十八年もかかった作品と知り、びっくりした。
    たしかに、書く方は大変だろうなあ、と思う。
    それをたかだか数時間で消費するようで申し訳ない気がする。

  • 仲麻呂が李白に宛てて書いた手紙も面白かったけど、次は高力士が仲麻呂に書いた手紙の内容が明かされる。じらすなぁ。
    すぐ死ぬ、もう死ぬ、と書いてる割に、肝心な話は引きのばす。死ぬ死ぬ詐欺みたいなじらし方。
    ま、そうじゃないと面白くないんだけど。
    キャストは揃ったのかな。不空の告白、気になる。

  • 安倍仲麻呂へ宛た手紙から黄鶴の本当の目的、事の真相が徐々に明らかになっていく。続きが気になってしまいます。

  • 順宗の命を巡って白龍(ドゥルジ尊師)と恵果阿闍梨の間で始まった呪法の宴。

    晁衡(安倍仲麻呂)が李白に宛てた第一の文と、宦官の実力者 高力士が晁衡に宛てた第二の文が、安録山の乱とそれに至る謀略の数々を明らかにする。そして、楊玉環を利用して唐王朝を滅亡へと向かわせた胡の道士 黄鶴の真意も。

    第四巻ではいよいよクライマックス、空海が白龍(ドゥルジ尊師)、丹龍(丹翁)、白楽天(白居易)を招いて、玄宗と楊貴妃のゆかりの地、驪山の華清宮で貴妃を偲んで催す宴が。

    所々で空海が語る、密教の宇宙概念も、唯識論的でなかなか面白かった。物語の進みが遅くて、全体的に間延びしている感じはするけど…。

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著者プロフィール

1951年、神奈川県出身。第10回日本SF大賞、第21回星雲賞(日本長編部門)、第11回柴田錬三郎賞、第46回吉川英治賞など格調高い文芸賞を多数受賞。主な著作として『陰陽師』『闇狩り師』『餓狼伝』などのシリーズがあり、圧倒的人気を博す。

「2016年 『陰陽師―瀧夜叉姫― ⑧』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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