巨龍の苦闘 中国、GDP世界一位の幻想 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.08
  • (1)
  • (4)
  • (4)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 68
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041027486

作品紹介・あらすじ

「中国の高成長は続き、GDPで世界1になる」。この"幻想”によって、経済も安全保障も環境が攪乱されてきた!!今、中国は崖っぷちに立っている。その危機感で習近平は改革を始めているのだ。最も現実的な中国論

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    序章 危機感に支えられた政権/第1章 危機感を共有する人々-中国共産党は巨大な「振り子」である/第2章 投資・信用バブルの終焉ー「高成長持続」幻想は崩壊した/第3章 「新常態」(ニューノーマル)の本質ーポストバブル期が始まる/第4章 三中全会の経済改革ー新しい成長エンジンを育成する/第5章 経済のシナリオ分析ー短期・中期・長期で分析する/第6章 「国家ガバナンス改革」の本質ー統治の制度が行き詰まった/第7章 「核心利益」から「周辺外交」へー習近平の外交政策を読み解く/第8章 外交シミュレーションー外交・安保屋さんの四象限分析を解く/第9章 「安倍・習近平」の日中関係ー思い込みを「ご破算」にしてみる/終章 これからの日中関係

  • 東2法経図・6F開架:332.22A/Ts36k//K

  • 元経産省官僚が、2015年時点で中国の経済状況を分析した書。

    中国経済は今後減速する(減速の仕方には、ソフトランディングからハードランディングまで幅がある)が崩壊はしない、というのが著者の見立て。

    習近平政権は、リーマンショック後の過剰なインフラ投資で破綻しつつある地方政府の財政再建を行いつつ、成長率は一定以上に維持して景気の大幅な落ち込みを避ける、という難題に取り組んでいる。利権の温床、国有企業の改革にも手をつけようとしているが、既得権者の強い抵抗の中でどこまで実効が上がるかは不透明、とのこと。

    バブルとは言え、中国がリーマンショック後の世界経済で好調を保ち、経済大国にのしあがったことでまった、国民感情としての「大国の自尊心」。習近平政権は、このような国民感情をコントロールしつつ、内政に専念して山積みの政治・経済の諸問題を解決しなければならない。習近平政権が、「内政が苦しいから、国民の目を内政からそらすために、意図的に対外関係の緊張を作り出そうと」しているとの見方は間違いだという。中国は脆い社会で、ひとたび国民感情が高ぶると騒擾や破壊行為が起き、社会崩壊に繋がりかねないことをよくわかった上で、慎重に舵取りをしているようだ。

    著者は、習近平政権が反日的な言動を繰り返してても、実は、国民に向けて対外強硬姿勢を見せつつ、その実、ことを荒立てないように穏便に振る舞っているのだというのだけれど…。とすると一番厄介なのは、膨れ上がってしまった中国国民の「大国の自信と自尊心」感情ということになる。。

  • 著者は官僚出身の中国経済の専門家。強大化のイメージと裏腹に中国共産党は崖っぷちに追い込まれており、習近平は危機感をもってこの難局を乗り切ろうとしていると説く。ここ数年の成長は、持続不可能な投資・負債バブルによるもので、習近平は「三中全会改革」を進め、規制緩和・国有企業改革・金利外為規制の緩和を掲げ、打開を図ろうとしている。それが今後良いほうに転ぶのか、悪いほうに転ぶのかは断言をしていない。それは中国だけでなく世界との相互作用の中で決まるからである。ただこれまでの歴史として中国共産党は保守的社会主義と改革志向の間を振り子のように動き続けてきたことを著者は指摘している。

  • 中国経済に深く関わってきた著者だけに中身のあるものであった。
    ①リーマンショック以降の中国経済の投資を中心とした成長モデル及びその限界、そしてニューノーマルへの移行が分かった。
    ②中国の地方政府の債務問題を中央政府がどのように解決しようとしているのか分かった。
    ③改革開放移行の右寄り・左寄りの振り子の歴史が理解できた。
    ④経済改革のみならず司法制度改革等の中身も詳細に記述されており示唆に富んだ内容でった。
    全体として、メディアでは分からない中国の実態がよく分かる本だった。

  • リーマンショックを受け、中国は57兆円もの公共投資を発動する。おかげで中国経済は劇的な回復を遂げ、いっときは世界経済の救世主とまで讃えられる。しかし、負債と投資を増やして成長を嵩上げするやり方は、いつかは止めなければならないときがくる。行け行けどんどん方式の投資は、本来やるべきでない、値打のない投資に手を出し、償還まで金が回らない低収益な投資事業を山のように生んでしまう。不採算投資がマクロに積みあがっていけば、経済全体で将来の融資に回せるお金が減る。借金は積みあがっていくのに経済全体のパイは大きくならない。財政には持続可能性の欠片もない。儲けの出ない資産とそのための負債が膨張し続けると、国全体のバランスシートが劣化する。金融危機の入り口に立つ中国。バブル発生のメカニズムはどこの国も同様であるが、症状の現れ方は国によって千差万別。この苦悩、習近平はいかにして乗り切るのか。G20ではどんな顔で議長を務めるのか。お手並拝見といたしたい。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=6050

  • 150908読了

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家
1958年生まれ。1980年、東京大学法学部卒業、通商産業省入省。通商政策局公正貿易推進室長、在中国日本大使館 経済部参事官、通商政策局北東アジア課長を歴任。2002年、経済産業研究所上席研究員。東亜キャピタル取締役社長を経て、2012年より津上工作室代表。2018年より現職。

「2022年 『米中対立の先に待つもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津上俊哉の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×