東大駒場寮物語

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.50
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本棚登録 : 62
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041032770

作品紹介・あらすじ

ムツゴロウ、野田秀樹、堀江貴文、小池龍之介など多数の自由人が巣立った日本最古の大学寮は、筆者が入学した93年には廃寮計画が進められていた。駒場寮にまつわる数多の史実を交えて描く、寮生たちの実録青春記。

感想・レビュー・書評

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  • 駒場寮が取り壊されたのは1997年。著者は1993年入寮で、駒場寮は既に廃寮を通告されていた。自身の寮での日々を中心に、寮の歴史や取り壊しまでの経緯などが綴られているのだが、思いがけず明るいタッチで、楽しんで読むことができた。

    いやまったく、読む前はもっと重苦しい内容を想像していたので、この面白さはちょっと予想外。大学寮と言えば、かつては学生運動と切っても切り離せず、また、自治寮と呼ばれた学生が運営主体となる寮は次々つぶされていって、いわば「敗北」の歴史をまとっていると言ってもいい。そういうことが主たる中味かと思っていたのだが、かなり違っていた。

    当然のことながら寮は生活の場であるわけだから、そこには「日常」がある。本書の特に最初のあたりは、著者自身の寮での生活ぶりが語られていて、非常に特殊な場であるけれど、一つの青春記として出色だと思う。散らかり放題の汚い部屋で惰眠をむさぼる学生…一体これはいつの話かという感じで、とてもバブルの洗礼を受けた後の東京とは思えない。でもまあ、森見登美彦のヘタレ大学生ものの例もあることだし、こういう「自由」の形には色あせない魅力があるのだろう。

    駒場寮はかつては全寮制だったそうで、その頃の話も興味深い。学者や作家、政治家、財界人など著名な人が駒場寮について語った文章が多く引用されていて、へぇと思うものがいろいろ出てくる。最も有名な駒場寮の伝説だという話に思わず笑ってしまった。いわく、「寮祭で、畑正憲の飼っていた犬を、亀井静香が殺して食べた」。作り話にしてもおもしろすぎるわと思ったら、これがあながち根拠のない話でもないというから驚きだ。

    終盤の強制的な取り壊しに至る経緯は、淡々と綴られているが、それだけに深い憤りを感じる。まったく権力を持った側っていうのは、その行使にあたって人間的なためらいというものがないとつくづく思う。ソフトな外面を取り繕っても、本質は行動に現れるのだ。


    ・自分自身は学生寮に住んだ経験はないが、友人が寮生でよく出入りした。1980年前後の頃で、寮の雰囲気は、本書と共通するところもあるにしろ、政治的にもっとシビアな感じがあったと思う。おそらく1990年代にはすっかり学生の政治的な動きは退潮していて、もはや前景に現れなかったということだろう。

    ・駒場寮がコンクリート造りだったとは知らなかった。壊しちゃう理由がないじゃん。京大吉田寮なんか木造で築百年以上だぞ。

    ・以前亀井静香が東大出だと知ったときは驚いた。その風貌に「知的」という印象があまりなかったから。封建的なオッサン、と思っていたが、死刑廃止議連のメンバーだという。なぜ?謎の人だ。

  • 377.9

  •  イメージ通り過ぎるかな?
     ただ、第5章は、文科省のどうしようもなさを、よく表している。
     

  • 父がここに住んでいた。すごくきたなかったと昔、父を訪ねた叔母が言っていたが、どんなどころだろうかと興味があり読んでみた。そこには歴史あり、議論あり、人々の生活があり、当時の日本の若者の一つの縮図ではないかと思った。

  • 20160913読了。
    きっともう血は流れないけれど乾ききらない傷のように、慎重に扱われる過去。
    筆跡の濃淡が生々しい。敢えて書かなかったのであろう言葉の影がむしろ、著者の想いを強く語っているように思った。
    綺麗な思い出にはならないのだろう。

  • 全く縁のない大学でしたが、この本は読み応えあります。

  • 廃寮・解体されたのは知っていたけれど、その経過や結末は知らなかったので興味深く読んだ。結局大学側が司法の力を借りて学生たちを追い出したのか。自分は学生時代に学生自治など全く興味なかった口だけど、大学側のやり方は余りにえげつないと思った。ともかく、青春の思い出の地の一つが消えてなくなるというのは悲しいものだ。ところで、学生もそうだが、同じく生活の場を奪われたネコたちはどうしただろう。

  • 壮大なるノスタルジア、面白かった。

  • この記事で知った本。

    ある駒場寮生の話【連載にあたって】
    https://cakes.mu/posts/11314


    【目次】
    プロローグ 1993年春、駒場 003

    第1章 ある駒場寮生の話 011
    それぞれへの地図 11/1992年、駒場 14/地方の浪人生 17/ようこそ駒場寮へ 19/入寮選考 25/安い、広い、自由 26/部屋探し 29/牧野寮委員長 30/寝たきり寮生 33/寮と麻雀 35/麻雀亡国論 vs 麻雀興国論 39/同室者 43/新しい部屋 45/コマ猫と寮生 47/寮の朝 49/駒場飲食店案内 51/殺風景な炊事場 54/寮風呂 57/電話と手紙 62/寮フさん 65/寮勤 67/寮に降る雨 70/寮祭 74/都市伝説か現実か 76/犬鍋伝説 79/焼き犬事件始末記 80/ハンガーストライキ 86/試験対策委員会 88/ “Shrinking Universe” 90/駒場寮廃寮問題 92

    第2章 自由の駒場寮史 095
    向ヶ丘から駒場の寮へ 96/寮自治の構図 98/合理と非合理 102/一高の移転をめぐって 105/戦時中の寮 109/敗戦後の一高 113/学制の移行 115/新しい寮規約 116/地方出身者の宿 119/寮食堂史 I・賄征伐 122/寮食堂史 II・従業員雇用問題 125/寮食堂史 III・界隈の飲食店との競合 129/寮食堂史 IV・駒場小劇場誕生 132/駒場寮と汚さ 135/女学生アルバイト論争 138/大掃除敢行 142/土足厳禁の掟 144/盗難との闘い 149/ストーム 152/文部省の学寮政策 154/受益者負担主義 157/負担区分をめぐって 158/負担区分論争 161/運命の寮委員長選挙 163/84合意書とその後 165/三鷹寮 167/そして廃寮問題へ 169/廃寮反対方針の確立 171

    第3章 駒場寮存続運動 173
    抗議活動 174/さくらんぼの実る頃 177/ストライキ 180/ダンスホール 184/時には昔の話を 186/晩餐会 189/冬の駒場寮 192

    第4章 一寮委員の記憶 195
    1994年、春 196/連続停電事件 200/ビラと落書 202/留学生たち 205/OBたち 207/行動の中のセンチメンタル 212/寮の屋上 217/寮の一週間 219/それぞれの事情 224/ドロップ 227/野球対決 230/一局の人生 234

    第5章 駒場寮最後の日々 237
    長期戦の中で 238/過ぎていく時間 242/寮内バー 245/強行手段開始 248/「知のモラル」とは 251/大学自治の原理原則 254/大学自治と警察 258/法的措置 260/絶望の裁判所 262/立てこもり 264/女子入寮解禁 266/ライフゴーズオン 268/コンサートと、その後で 270/最後の寮生たち 274

    エピローグ:文化の光を照らす場所 281

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