人魚呪

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.07
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101896

作品紹介・あらすじ

時は天正6年。鄙びた漁村の外れに住む左吉は、その容姿から"魚人"と村人に忌み厭われる日々を送っていたが、美しい人魚マナと出逢い、生きる意味を見出す。秘密の洞で繰り返される甘美な逢瀬。左吉はマナに溺れていくが、ある日、彼女の残酷な正体を目の当たりにする。逆上した左吉は彼女を手に掛け、ある禁忌を犯してしまう。居場所を失った左吉は村と波の呪縛から逃れるように都へと向かうが…。「永遠の命」とはなにか。呪われた男の末路とは。限りなく妖しく、誘い込まれていく異形の人魚伝奇譚。遠野物語100周年文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 初めての神護かずみさん。
    すごい。このどんよりとした暗さ。魚人の佐吉は、やっぱり可哀想な人なのだと思う。
    こんな事になった元凶は、おっとうが人魚と交わった事で、佐吉に罪はない。あまりに過酷な環境ゆえに人魚を食べて…。
    不死の残酷さを何ページも使って繰り返し繰り返し、読み手がどんより暗くなるまで丁寧に落とし込んでくれた神護かずみさん、怖いです。

  • 2022/12/13

  • 表紙に引き込まれて手に取りました
    信長とかが出てきたときは??となりました
    波の音などの音が独特でいいなと思いました。
    もう少し意外性があったら良かったかな…

  • 遠野物語100周年文学賞受賞作。魚人と呼ばれ村八分にされている左吉とその父。ハゼのような醜い容貌の上、さらに左吉には父にはない魚の鱗のようなものが一部ある。父が死に孤独になった左吉は、ある日洞窟で美しい人魚と出逢い心を通わせるようになるが・・・。

    基本的には伝奇ホラー。作者情報があまりないので、名前からてっきり女性だと思って読んでるうちに、あ、これ絶対男性だ、と思われる性描写が頻出。エログロというほどのエロもグロもないけど、何かちょっと汚らしい印象を受けた。

    序盤の人魚との因縁あたりはそれなりに面白かったし、人魚のマナは神秘的かつ変貌してからも興味深かったけど、後半、人魚の肉を食べて不死者になってしまった左吉が詐欺師まがいの坊主に金儲けのために利用され、さらに織田信長に捕えられるという急展開。前半の民俗学的な幻想の雰囲気から一転、歴史エンタメみたいになってしまったのが残念。

    人魚の肉を食べて不死者になった人間の悲劇というのも想定内で目新しさはなく、たとえば高橋留美子の「人魚の森」などのほうが作品としてよほどすぐれていると思う。そして主人公の左吉に魅力を感じられないのも微妙。流され体質で境遇を自力で打破する気概がなく、村人たちに迫害されるがまま、そのくせ女性に対しては性欲全開。ゆえに凄絶なラストも、そんなことになったら厭だなとは思うけど、左吉が可哀想という同情心はあまり起こらない。マサエという女性も、人間的というには少し下品すぎた気がする。

    前半の土着ファンタジーっぽい雰囲気のまま終われば良かったのにな。不死者がどうやったら死ねるかというのは興味深かったです。吸血鬼みたいに、十字架とか銀の弾丸とか弱点があれば死ぬこともできるのにね。

  • 遠野物語100周年文学賞受賞作ということだが、
    ホラーというより「左吉の哀しい人生の話」に歴史をからめたというという感じ。
    後味悪い終わり方は決して嫌いじゃないけど、
    最初から最後まで左吉が救われないのは、哀しすぎる。

    登場人物にもいまいち魅力がないのが残念。

  • 遠野物語100周年文学賞の受賞作。この賞は一度きりだというから吃驚。小さな村で漁をして生活する魚顔の男が、死んだ父親を埋葬する途中で人魚と出逢う。望まぬとも不老不死となってしまった男を周りは放って置いてはくれなかった。
    人魚と妖怪はあまり発想が結び付かないのと、これじゃあどこぞのファンタジーではないか?と感じてしまった部分もあった。前半部分は話も流れが感じられたのだが、途中からは歴史を交えたせいかどこか継ぎ足した感が拭えなかった気がした。

  • 異形で異種で近親相姦てこれなんて三重苦w

  • 装丁に惹かれて読んでみました。
    遠野物語100周年文学賞なるものの受賞作とのこと。
    人魚の肉を食べると不老不死になる。と言う伝説が題材です。全体の筋は大体見えてしまいますが、読みやすく悪くない怪談です。

  • 人魚を食べたら不老不死になる話。
    さらっと読めました。
    なんていうか人に限らず女性は怖いなー
    亀可愛かったです。

  • 囲炉裏を囲んで語られたなら雰囲気のある「お話し」として充分魅力的に思えるが、先の展開が容易に予測できるありきたりな筋立てや矛盾を抱えて生きる人間性への踏み込みがあの浅さでは物足りなさの方が勝る。後半マサエとの関係にも焦点を当てた部分があれば読み応えも出たのではないだろうか。
    己が喰らうばかりで他者へ与える事に思い至らなかった男の末路として用意された結末に「輪廻」=「食物連鎖」とも捉えられる意味合いが含まれている様で面白くまた興味深い。

  • 2011年に選考された遠野物語100周年記念文学賞受賞作。

    最初、ファンタジーノベルかと思って読んでいたが、怪異譚というほうがいい。

    時は天正。父が死んで言い遺した場所へその遺骸を運ぶと、佐吉はそこで美しい人魚に遭う。次に行くと父の遺骸は別の場所に移され、年老いた人魚の女の遺骸と並んで置かれていた。
    佐吉は会いに通ううち人魚とまぐわうようになるが、人魚が父の遺骸を食べているのを見て、人魚を殺して肉を食べた。

    佐吉の村が大津波に襲われた後、父が人魚に産ませた双子のうち人間らしいほうを連れ帰ったのが佐吉だと、昔語っていたことを知って、自分が殺して食べたのは妹だと気づく。

    人魚の肉を食べた佐吉は伝説どおり不老不死となり、驚くべき運命が待ち構えていた。

  • 魚人て気持ち悪そうだなあ

  • 人魚を食らってしまったことで男に降りかかった受難。時がたつほど呪いの影響が身にしみる展開で、言いたいことはよく伝わってくるものの、あまり色香のようなものは感じず、むしろ時折入るギャグ風味に肩の力が抜けてしまうほど。可もなく不可もなくなわけだが、個人的にはいささか期待外れだった。性描写もむだに多い気が……(苦笑)。

  • 人魚の肉を食った男の話。まあまあ。もう一押し足りない。

  • 夏におすすめ。読むとちょっと涼しくなる歴史ホラー小説。

    とある寂れた漁村。”魚人”と忌み嫌われる男が美しき人魚と出会う。
    村を襲った災害が男と人魚の運命を狂わせ始める。

    時は天正。人魚にまつわる不老不死の伝説を聞きつけた織田信長がからむあたり、最後まで飽きさせない構成になっている。

    「遠野物語」をベースに、おぞましい人魚の呪いに翻弄される人間の姿を描いた伝奇小説。遠野物語100周年記念文学賞を受賞した新人の作品。

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著者プロフィール

1960年、愛知県生まれ。國學院大學卒業。化学品メーカーに三十五年間勤務。1996年、『裏平安霊異記』でデビュー。2011年、『人魚呪』で遠野物語百周年文学賞、19年、『ノワールをまとう女』で江戸川乱歩賞を受賞。著書に『石燕夜行』(全三巻)、『償いの流儀』がある。



「2022年 『影と踊る日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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