- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041136645
作品紹介・あらすじ
札幌にある憧れのキッチングッズメーカーに就職した新津。自社商品を使ったことのない営業マンや天才的発明家の先輩、くせのある製造部担当など、一癖あるメンバーに囲まれながら社会人1年目を必死で駆け抜ける。便利グッズを使った美味しいレシピ満載の絶品グルメ小説!
感想・レビュー・書評
-
学生時代から親しんだキッチン用品メーカーに念願かなって採用された1人の女性が、よき上司や先輩とともに商品開発に携わる姿を描くお仕事小説。
◇
新津七雪。ピカピカの新入社員だ。
生まれも育ちも長野県の七雪は、大学卒業まで地元を離れたことがなかった。
だが就職は迷わず札幌を選んだ。そこには株式会社シェフ工房があるからだ。
七雪がシェフ工房を知ったのは、大学のスキー部時代だ。マネージャーをしていた七雪は、寮での食事作りを通してシェフ工房のキッチン用品に出会った。そして、その使い勝手のよさやしゃれたデザインに惚れ込み、シェフ工房の熱烈なファンになったのだった。
やがて就活時期になり、シェフ工房の求人を見つけた七雪は躊躇なくエントリーして札幌に飛んだ。面接試験に臨んだ七雪は製品の長所を嬉々として語り、ここで働きたいという思いを熱く訴えてみごと合格。
その熱意を認められ希望通り企画開発室に配属された七雪の、幸せいっぱいの社会人生活が始まった。 ( 第1話「かしわもちトングでジンギスカン」) 全5話。
* * * * *
主人公の七雪。
明るく意欲に溢れ度胸もあるし、上司や先輩のアドバイスを真摯に受け止めもするという、いい意味での体育会系気質です。
おまけにマネージャー経験で培った要領や手際のよさも身につけています。
そんな七雪がプランナーとしても人間としても成長していく姿を描くのがこの作品のテーマです。でも、その描き方が中途半端だったように感じました。
理由は明白です。盛りだくさんに過ぎたからです。
最大の要因は、七雪の恋物語まで描こうとしたことです。
七雪は設定からして就職1年目で色恋に気を取られるようなタイプに見えないですし、なし崩し的に茨戸との距離を縮めるところも無警戒に過ぎるでしょう。
さらに相手役の茨戸についての描写が薄っぺらで存在感に乏しいまま、七雪が自身の恋心に気づくという陳腐なラストはマイナスでしかありません。
こんなことに紙数を割いたために、七雪というヒロインに人間としての奥行きを出させるところまで描けなかったのだと思われます。
例えば、明るくポジティブに見える七雪には精神的な暗部があるのですが、それを克服することこそが、七雪の人間としての成長を描く柱だったはずです。
腕の疲労骨折でスキー選手を断念せざるを得なかった屈託と、同期の友人でスキー選手として期待される円城寺晴へのコンプレックス。それらが七雪の精神的な暗部を作っています。
そこを乗り越えることで七雪は成長するのですが、その描写が通り一遍で七雪の苦悩があまり感じられませんでした。
また、七雪のプランナーとしての成長を描くには、企画開発室の個性的で魅力的な面々の支えが必要になります。特にエースの出町かがりの存在が重要です。
なのにかがりという天才プランナーの掘り下げ方が足りないため、七雪の製品開発に向けた精進や苦労がまったく感じられませんでした。
さらに七雪の適性を見抜いた深町室長や年齢の近い五味についても描写が浅いままで、七雪の成長という作品の本筋を構成する要素をなおざりにしているように感じました。
他には、製造部の忠海という、製品実用化への障壁となる人物も魅力的な設定なのに、あまり機能しているように見えないのも残念のひと言です。
悪意ある人物が登場しない設定なのですから、七雪の前進するための苦悩をきちんと描くべきだったと思いました。
若い女性には恋物語という図式は、そろそろなくしてもいい気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出てくる食べ物が全部美味しそうですし、気軽にサクッと読めます。
この本に出てくるキッチングッズたち、どれも魅力的で、料理をする人しない人関係なく、誰でもシェフの腕前になれるっていうコンセプトがとっても素敵。
商品開発のお話やから、私たちが普段なにげなく使ってるものでも、販売までにたくさんの人が関わって、知恵を絞って改良を重ねて作ってくれてるんやなあ、と改めて感謝の気持ちでいっぱいになりました。モノづくりって、めちゃくちゃ大変やけど、自分の想いが形になったとき、誰かの元に届いた時、ほんまに嬉しくて、、私も企画開発部の一員になったつもりで読んじゃいました。
このお話もシリーズ化してほしいな。新津さんの今後が気になるし、この世界にまた遊びに行きたい! -
北海道弁に笑ってしまいました(*^^*)楽しく読ませて頂きました♪
-
ほんわかと、ゆるゆると進んでいくストーリーが心地よい。
主人公・新津が自分自身と向き合うと同時に周りの人たちもその姿に感化されていく感じとか、出てくる人たちも皆いい人だとか、本当にこんな会社があるならば、私も仲間になりたい! -
美味しさと温かさが共存していてとても良い。
-
札幌が舞台ということでかなり期待して読みましたが、出町さんの訛りが酷すぎて…作中の登場人物の誰かも、あんなに訛ってる人はあまりいませんみたいな事は言っていましたが、ほんとにそうで、札幌であんな訛りを話す人はまずいないので、違和感がありすぎます。
実際にある地下鉄路線や、駅名、地名とかまで出して、地元民からするとかなりリアリティがあるのに、もったいなかったです。
また、作中に出てくる商品も使ってみたいと思ったものは、あまり無かったです。
-
調理器具から料理が広がる素敵な作品でした。
新津さんが好きなものを好きと言えて頼もしく、でも人間らしさもあるとても好印象の主人公で、職場の方達もみんな温かくて楽しくて良い職場だなあと思いました。
登場するご飯も流石北海道、美味しそうなものがたくさんでお腹が空いてきます。
茨戸さんとの関係性もとても好きです。続いたら嬉しいなあ…!