アルツハイマー征服 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041140109

作品紹介・あらすじ

50パーセントの確率で遺伝し、その遺伝子変異を受け継げば、100パーセント発症する。しかもその発症は若年。アルツハイマー病の解明は、この家族性アルツハイマー病の家系の人々の苦しみの上に築かれた。遺伝子の特定からトランスジェニック・マウスの開発、ワクチン療法から抗体薬へ――。名声に囚われた科学者の捏造事件。治験に失敗した巨大製薬会社の破綻。治療薬開発に参加した女性研究者の発症とその苦悩。そして家族性アルツハイマー病を患った母の人生を語った女性の勇気。幾多のドラマで綴る、治療法解明までの人類の長い道。

感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしい本なのに、まだだれも感想らしい感想を書いていないことに驚いた一冊。(2024.3時点)こんなに読み応えのあるノンフィクションがあるでしょうか。アルツハイマー病の薬の開発を軸に、人間模様、科学の進展、会社の内紛などを日米欧をまたいで書いてあります。それをまとめた著者の取材力は驚異的です。その情報量は、途中ついていけなくなるくらいで脱帽しかありません。本書は福岡伸一のさんのようなサイエンスノンフィクション系の本が好きな方や、サピエンス全史のような壮大な話がお好きな方にささります。化学式などは出てこないので理系でない方も読めます。

    ■アルツハイマー病の苦しみがわかる
    わたしの祖父もなりました。平日の昼間にスーパーに行くと、視点の合わない高齢者が歩いていた経験はありませんか?この病気は確かに移らない。でも、誰でもなるかもしれない。しかもそれが遺伝性の場合だったら?寿命以外に自分の認知機能は人より早い段階で失われるかもしれないと知ったら?本書を読んで遺伝性のアルツハイマー病があることを初めて知りました。そしてその苦しみも。アルツハイマー病の薬の開発がいかに望まれているかを知りました。

    ■何事も一筋縄ではいかない
    アメリカはベンチャー企業が勢いあるとか優秀な人材が集まっているとか言われますが、そんなアメリカでも薬の開発はうまくいかない。研究者や製薬会社が悩み、時には不正に手を染める様子、日本のある企業が、猛烈な努力で開発を進める様子、でも、社内の人間関係に翻弄される様子。本書の読み所は薬を作る過程だけでなく、作る人間の話まで深く語られているところです。特に治験がうまくいかない場面では、時間がかかる治験を実施する一方で、うまくいかず時間だけがどんどん過ぎていき、関係者に焦りが生まれている様子がひしひしと感じられました。優秀な人が束になってかかっても開発しきれない新薬開発の難しさ。一筋縄では行きません。でもその開発過程で生まれた化合物を次の世代の研究者が引き継ぎ、形にしていく様子もみられ、こうして人の生活はより良くなるのかもしれないと感じました。

    ■文庫版書き下ろし新章がついた方を読みましょう
    同じ名前の本が2冊あり、2023年8月に出版されている方に新章があります。レカネマブ(予測変換にも出るくらいです)の承認までの話が追記されています。

  • 493-S
    文庫(小説・エッセイ以外)

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。アルツハイマー病の研究の歴史について、2000年代から興味を持つ。日・米・欧の主要人物に取材し、研究者、医者、製薬会社そして患者とその家族のドラマを積み上げる形で、本書をものした。1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA)、『2050年のメディア』(文藝春秋)がある。慶應SFCと上智新聞学科で「2050年のメディア」の講座を持つ。

「2021年 『アルツハイマー征服』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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