魔界水滸伝 9 (角川文庫 緑 500-25)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041500255

感想・レビュー・書評

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  • 魔界に帰って参りましたが、何故こうも異種族感恋愛は切ないのか…電車で危うく涙腺崩壊になる所でした。
    今回はいきなり鷺の姫と生島の悲恋にフルボッコです。

    先ず、前回書けなかった妖怪さん勢力図を簡単に。
    天孫族と言われる上位の妖怪(強いか高貴か)がみづちと翼の民と火の民と天狗さん。
    翼と蛇は古来より仲が悪いです。
    現在、狐、狸、鬼は蛇の傘下。土蜘蛛はどっちかと言えば蛇よりだけど中立。竜王は海が縄張りなので陸の事は今の所我関せず。
    眼の人は1人しかおらず全ての監視役。位は低いです。
    地這いもかなり高貴な身分ですが見た目が醜すぎ(素の姿もですが人間の姿も凄いらしい。平安時代なら美人と言われていたと言う凄い表現)なのと性格が悪すぎて忌み嫌われてます。
    1番強いのは蛇ですが中でも多一郎のお婆ちゃん礼津が最強で、不死レベルに長生きしてる上にこの人が本気出すと国1つ位すぐ滅ぶレベルらしいので、全妖怪が逆らえない状態。
    彬子様のご生家、葛城家は元天孫族でしたが人間と交わり妖怪の力は薄まってしまいハブられてたようです。

    さて実は前巻で姫が多一郎と取り引きをしていました。お魚になってしまいそうな生島を救いたい姫は多一郎にどうかランドシンドロームのワクチンを譲ってくれと単身頼みに。
    渡す条件として多一郎が提示したのは、次の妖怪会議で翼の一族が蛇一族に忠誠を誓うと宣言する事。
    一族の長である姫は一族を説き伏せねばなりませんが裏切り行為になります。ですが姫は自分の命は捧げると覚悟を決めて条件を飲んでしまいます。項垂れて必死にお願いする姫、なんて健気…可哀想すぎる!!
    そこまでしてワクチンを手に入れたものの、このワクチン未だ完璧ではありません。要は予防接種と似ていて、打てば予防にはなるけどお魚の進行が進んでいる場合は逆に攻撃してしまい死に至るとの事。ですが藁をも掴む思いの姫は多一郎に涙を流して礼を述べ生島の元へ。
    「人に恋して鷺の姫があそこまでなるかね、哀れだな」と見下す多一郎さんにいやいやいや、貴方人の事言えないっすけど?!と心で突っ込んでたらちゃんと茨木童子にと突っ込まれてました。ありがとう茨木さん。
    ちなみに茨木さんは涼を殺そうとしたのがバレてボコボコにされました。

    ここから今回の話。
    アークから出て一旦生島の様子を見に来た雄介、加賀、エスパー橘。生島は最早人語も喋れない程にお魚化してました。橘の能力を使い思念派で会話をするのですが、橘が参ってしまいそうな程に生島は悲観に暮れており殺してくれと頼みます。勿論雄介はそんな事を容認出来ず説得しますがそこへ姫が到着!
    こんな醜い姿を見せる訳に行かないと逃げる生島ですが、姫は私は人間ではないから見た目で判断しない、貴方の魂を愛してると泣きながら姿を見せてと懇願。書いてて泣けてきましたが、今の現状ではワクチンは生島を殺す薬です。それを全員理解した上で、それでも人間の尊厳を保って死にたいと言う生島の願いを受け入れます。もしかするとワクチンは効くかも知れないと姫達が見守る中、少し人間の姿に戻りはしますがやはり生島は死んでしまいます。
    なんという…
    雄介も落ち込むのですが加賀が言い放ちます。
    「死にゆく者に苦しみは無いが残る者にだけ悲しみや辛さが残る。君はもう一族の長なのだ。ここから先は全員の命が君の手にかかっている。そういう戦いになるのだ」厳しいですが人間が異形のものと戦うというのはこういう事なんですね。

    女族である鷺一族は一生同じ番を愛し続けるので姫の苦痛に胸を痛めつつ泣き叫びながら飛び去る姫を見守る事に。

    今回はメインが多一郎と華子の結婚式と妖怪会議の始まりです。
    人間界もわちゃわちゃしており、新大統領が亡くなった前大統領を日本がわざと殺したんじゃないかとか、ワクチン独り占めしてんじゃねーのか、とかイチャモン着けて来てるので多一郎になんとかしてくれと首相達が頼んできます。多一郎はどうせそのうちお前らもあの世に行くんだけどな、と引き受けはするものの割とどうでも良い感じ。
    首相達との会合の後は人間界で結婚式、その後に妖怪さん達の前で結婚式、その後は妖怪会議とハードスケジュール過ぎる多一郎。
    さっさと結婚式の準備に戻ります。

    この結婚なんですが、多一郎は妖怪の中でも1位2位を争う美青年かつ高貴な身分なので皆から不釣り合いだ、若様が可哀想だと礼津以外からは誰からも祝福されていません。本人すら嫌がっている始末。
    華子は完全に多一郎さんラブなので1人キャッキャと浮かれてますが、それが余計に醜いと酷い書かれよう。ちょっと可哀想になってきたのですが、華子の花嫁姿の挿絵がドン!と乗っており、あー…確かにこれで性格もあんなんじゃ…きついな…と多一郎に同情。
    特にどうやら多一郎に恋してるらしい茨木童子は私の若様があんな奴に!と切れまくってます。
    礼津は浮かれて初夜もこの婆様が見守ってやるからのぉとか華子とキャッキャしてますが涼以外といたしてるシーンなんか見たくないので多一郎さん逃げてー!!(応援継続中)

    人間の結婚式はそうでも無いのですが、人間界との隙間にある結界の張られた異空間で行われた妖怪の結婚式がもうぐちゃぐちゃのドロドロ!!
    百鬼夜行もびっくり!!
    多一郎はこの結婚が嫌すぎてイライラしてるので同族でも何人か殺さんと気が済まんとか言って、来て早々妖気全開で、下っ端の狐や狸などはこの妖気に耐えられず吹っ飛んでべちゃ!ぐちゃと潰れていく!阿鼻叫喚!
    次々に挨拶にやってくる妖怪!中国のナーガまで登場。多すぎ!こっちも覚えられない!覚えられたのは個人的に好きな狐ちゃんの玉藻ちゃんだけ!
    祝いとして臓物を来客に投げる新郎新婦、妖怪たちが嬉々として血を求めるグロテスク祭り開催!
    そして集まる蛇!蛇!蛇!!蔦!蔦!蔦!ニョロニョロウネウネ長物祭り同時開催中!!

    長物が苦手な加賀がいたら卒倒していると書かれていましたが同じく苦手な私も既に気絶しそうです。

    一通り落ち着きさて次は会議だと言う所へ、突然に結界を破り多一郎に襲いかかる何者かの影!
    こうなる気はしてたのですが、やはり愛する生島を失い悲しみと怒りに我を忘れている姫、夏姫でした。
    単身で多一郎を殺しに来たのです。
    そこでしゃしゃってくる華子、前から気に食わなかった鷺の姫を殺す良い機会だと嬉々として迎え撃ちます。お前に恨まれる筋合いはない、と言う姫に「妾はこんなに醜いのになんでおめえそんなに美しいんだよ、化け物なのに人間に愛されやがって!妾は男に捨てられたのに気に食わねえし我が殿(多一郎)の為に役立つんだよ!」と完全に言いがかり!

    当の多一郎はあわよくば戦って華子死なねーかなと思ってるので止めません。

    始まる一騎打ち!姫が愛のパワーで強い!もしや華子ログアウト?!…となる訳がなく、礼津は華子がお気に入りなので多一郎に止めに入るよう申し付けます。しゃあねえなーと重い腰を上げようとしたその時、おめめの大和がでかいおめめの姿で止めに来ます。会議前の争いは禁止だからです。(秀英の頭上に現れたでかい目は大和だったみたいです)
    姫がそちらに気を取られた途端、姫が華子の触手プレイの餌食に!やめてー!
    そこに現れた妹分のカルラと鶴の綺麗な人。ここで初めて姫が一族を裏切ったと知るのです。
    もう姫可哀想だからそっとしといて!!という私の願いも虚しく、今度は謎の地震。
    会議が始まるので次元空間が移動を始めたのです。この次元空間はシャボン玉のようなものらしく、うっかり移動中に足を踏み入れると狭間に落ちてしまい思念も分解されて死んでしまうらしいのですが、何人か犠牲に!姫も落ちてしまう…
    華子もそのまま落ちてくれたら万々歳だったのですが多一郎が流石に助けます。

    その後、抱きつく華子にあからさまに舌打ちする多一郎、ダダ漏れ!更に姫を探してくるから待ってろと告げたのに怖いから1人にしないでと更に寄り添う華子に再度舌打ち!!
    …流石に華子可哀想だな…

    結局彼女を待たせて危険な次元の狭間に姫を探しに行く多一郎でしたが、深淵の中でふと気配を感じそちらを見ると赤い目のようなものと目が合いぎょっとします。正体は不明のまま消えてしまいましたが誰かの目に似ていると感じた多一郎。そう、涼の目に似ていると思ったのです。
    嫌な予感に苛まされて切なさそうにする多一郎。あれだけ涼の覚醒を願ってた私ですが、今は大人しい美少年でいてくれる事を願いたい!もう異種族恋愛の悲しい結末とか見たくないー!

    だってここで私の女性キャラ好感度No1の姫が退場したから!!

    カルラと鶴が必死に救おうとしたのですが、姫はもうほぼ思念を溶かされ分解寸前に。
    自らの死によって、翼の一族は鶴の姫に託されたのですが、彼女にみづちに従う必要は無いと言い残し、最後まで生島の名前を呼び続けて「あんな短い恋でも幸せだった」と言う彼女の姿に冒頭で書きましたが涙腺ダム決壊の危機が。
    更に追い打ちで最後にもう一度生島に会いたいと願う姫の為に、カルラが己の妖力で生島の姿を作り上げ、思念体として姫に送ります。
    思念体同士の2人は再開して手に手を取って、死ぬまでずっと一緒だと消えて行きました。

    もう嫌だー!!!悲しすぎるー!!!
    野外でいくらでもいたしてくれて良いから幸せになって欲しかった!!

    その後にいよいよ始まった妖怪さん大集合ですが、ショック過ぎてそれどころじゃなかった。
    ですが遂に天狗さん始め様々な妖怪さんが異次元にある幻想的な神社に集まりました。
    勿論風太も登場。平将門公までお化けとして出てくれてサービス満点。(やっぱり多すぎて覚えられないけど)
    馴染み深い猫娘やぬらりひょんも挨拶に来ますが、天狗さん達『先住民』と比べて地位が低いんだそうです。ぬらりひょん、妖怪最強と名高かったのに、栗本さんの手にかかればこんな下っ端に…。

    ここでも大勢から嫌われている多一郎さんは最早流石としか言いようが無い。風太と翼一族は勿論の事、おじいちゃん達に「お主、最近人間臭いぞ、人間の匂いがプンプンする」と汚物のような言われよう。多一郎は多一郎で「人間の力を侮る化石共が!おめーらと滅びるのは真っ平なんだよ」とつるむ気ゼロ。
    波乱万丈な会議の始まりが予想されますが、最後に遅れてようやく真打ち、雄介の登場!と言う所で次巻に続きます。

    さてさて、いつもの栗本さんのあとがき小噺。今回一度も出番の無かった涼くんですが、加賀と並んで大人気だそうで、バレンタインに読者からチョコが殺到したそうです。
    そんな大人気の涼君の飼い主、多一郎さんは作者の栗本さん専用と言って良い程に不人気だそうですが、天国の栗本さんにお伝えしたい。何十年も立って漸く多一郎ファンが現れましたよと笑。(最初あんなに天敵とか言って怒ってたのにいつの間にか推しになってた…恐るべし蛇…)

    • yukimisakeさん
      シンさま信じないシリーズ?!ゆーきさんの得意技?!笑
      シンさま信じないシリーズ?!ゆーきさんの得意技?!笑
      2024/03/08
    • shintak5555さん
      ユキさま
      八月の御所・・・のコメント欄に・・・
      ユキさま
      八月の御所・・・のコメント欄に・・・
      2024/03/08
    • yukimisakeさん
      シンさま読んできました!あれか!笑
      僕の評価も信じない方が良いです、甘すぎる!ともこさんに笑われるので笑
      シンさま読んできました!あれか!笑
      僕の評価も信じない方が良いです、甘すぎる!ともこさんに笑われるので笑
      2024/03/08
  • 内容(「BOOK」データベースより)
    北斗多一郎に注入された“ランド・ウイルス”に冒され、インスマウス化した生島耕平は、安西雄介や、恋人の“鷺の姫”夏姫に看取られなが、〈人間の心〉を守るために自らの命を断った。復讐に狂う夏姫は“みづち”の若長・北斗多一郎と“地這い”の姫・藤原華子との妖しくもおぞましい婚礼の席に乗り込むが…。そのとき、現実界と魔界とが完全に同一化するという“会”の刻が訪れた!怪奇曼荼羅を織りなす壮大な伝記SF巨編第九弾。

    報われない恋を書かせたら天下一品だと思っています。生島と夏姫の恋が切なくて泣いた覚えがあります。

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著者プロフィール

東京都生まれ。早大卒。江戸川乱歩賞、吉川英治文学新人賞受賞。中島梓の筆名で群像新人賞受賞。『魔界水滸伝』『グイン・サーガ』等著書多数。ミュージカルの脚本・演出等、各方面でも活躍。

「2019年 『キャバレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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