太平洋戦争 日本の敗因3 電子兵器「カミカゼ」を制す (角川文庫 ん 3-14)

制作 : NHK取材班 
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041954140

作品紹介・あらすじ

本土防衛の天王山となったマリアナ沖海戦。乾坤一擲、必勝の信念で米機動部隊に殺到した日本軍機は、つぎつぎに撃墜される。電子兵器、兵器思想、そして文化――。勝敗を分けた「日米の差」を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 今回は、日本の敗因として科学技術の軽視と精神主義の偏重を取り上げ、それに関する日米の向き合い方が如実に表れた戦いとしてマリアナ沖海戦を挙げる。
    セクショナリズム、精神主義、民間蔑視と軍人純潔主義などの様々な壁によって、本来日本にもあった潜在的な科学力を戦争遂行のために効果的に用いることが妨げられ、一方のアメリカは産官学の水平的かつ有機的な結合と、それをとり持つ機関の創設により科学力を有効に戦争遂行に活用できたとする。
    アメリカには第二次大戦中にすでに軍産学複合体制が出来上がっていたことに驚かされる。

  • 1995年刊。

     NHKの傑作TVドキュメントシリーズの文庫化。本巻は科学技術と精神主義の観点から太平洋戦争を切り取る。

     日本においては科学技術や技術者を軽視する傾向にあり、例としてレーダー開発の差がそれに相当するという。

     また、科学技術の軽視の帰結の一として、他国との技術力の差が発生したという。
     例は航空機エンジン。また、技術力の劣後が、防御軽視思想を生み、戦闘機の構造・VT信管・高角砲大量配備という差になって現出したというのだ。
     結果、大和魂を強調せざるを得ない。

     かかる工業力差と悪循環が、戦前における対米戦争研究のシナリオ的には決戦と位置づけられるであろうマリアナ海戦における、七面鳥打ちに帰結。多くの搭乗員・機材・物資を失い、完敗した。
     もう少し、謙虚に、より正確には、自らの限界を知るべきであった日本は、対米開戦してはならなかったのだ。

  • 新書文庫

  • 感想は最終巻に記載。

  • 電子兵器カミカゼを制す

  • レーダー(電探)は、敵を待ち伏せして攻撃する”卑怯者の兵器”として軽視されていたのだとか。
    直接敵を攻撃するところばかりを重視して、それを支える技術やシステムをおろそかにすると、回り回って自分の首を絞めることになる。

    今の日本の組織に蔓延している、システムに対する無知、無定見は、今に始まったことではなかったのだ。

  • 第二次世界大戦の日本の航空機戦を読んだことがあれば良く知っているVT信管やレーダーの話。技術的な面よりも組織的な面の問題が大きかったとの結論です。

    米国では科学者側から政府に働きかけて組織が出来あがり軍とは水平連携。日本では縦割りでそれぞれが勝手に学民を使いバラバラ。

    これって実は今の日本でもあまり変わらない気がするのは気のせい?

  • 情報戦がいかに重要かをかいてます
    科学の進歩は精神論では何の意味もない。
    敵の動きを早く察知し対策を練るのが重要。これが戦争の勝敗を決める事となる

  • 4041954142   222p 2000・7・20 9版

  • (2007.07.18読了)(2006.06.17購入)
    「太平洋戦争 日本の敗因〈3〉」
    サイパン島を死守するためのマリアナ沖海戦の勝敗を決したのは、電子兵器でした。
    アメリカはレーダーを実用化し、日本軍の戦闘機が近づくのを捕捉し準備万端整えて、戦闘機を優位な位置で待機させ、戦艦に近づく前に撃墜してしまいました。
    戦闘機もゼロ戦を上回る性能のものを作り上げていました。
    アメリカ軍の戦艦に近づくことのできた日本軍の戦闘機も、アメリカが開発した電波近接信管によって、次々と撃ち落されてしまいました。
    アメリカは、研究者を組織化し、効率よく目指すものを開発することができました。多くの研究者、多くの資金、多くの資源を効率的に使いました。
    日本は、少ない研究者を陸軍・海軍で別々に囲い込み、相互の情報交換を許しませんでした。少ない研究者、少ない資金、少ない資源を効率悪く使い、実践の役に立つものを作ることはできませんでした。
    アメリカの研究者は、最前線で戦う人たちに評価してもらい、実際に使用される場所にふさわしい性能のものを作ることができました。
    日本の研究者は、最前線で戦う人たちの協力を得ることができず、実用に耐えるものを作ることができませんでした。
    威勢がいいだけの精神主義の軍人たちは、電子機器の有用性を認識できませんでした。
    日本軍は、長篠の合戦の武田軍であり、アメリカ軍は信長軍だった。ガダルカナルの戦闘も同様だった。いたずらに突撃を繰り返す武田軍、信長軍の鉄砲の威力に手も足も出なかった。

    ●VT信管の開発(15頁)
    信管とは、高射砲などの砲弾の頭部に装填される起爆装置のことである。発射された砲弾は、敵の目標物に命中することで最も大きな威力を発揮するが、命中する確率は非常に低い。そこで砲弾が直接命中しなくても、目標物の側で爆発することで、被害を与えられるように仕組まれている。
    VT信管を砲弾に装填することで砲弾から電波が放たれ、その電波が敵の目標物を感知し、その側で自動的に爆発するようになっている。
    1943年1月、VT信管は始めて実戦に使用され、その効果が確認された。そして、1944年6月のマリアナ沖海戦では、アメリカの機動部隊のほぼ全軍の艦砲射撃の砲弾にVT信管は装備された。
    ●レーダーの開発(50頁)
    1943年の初めには、アメリカの主要艦船にはレーダーが装備され、日本軍との戦いに投入された。200マイル前方をキャッチする能力を持っている。低空飛行機の探知が可能になり、高度もわかるようになった。
    マリアナ沖海戦のときも、200キロ前方から日本軍の攻撃隊が来るのが捕らえられている。(43頁)
    ●戦争の様相の変化(105頁)
    日本海軍は、太平洋戦争海戦当初、真珠湾やマレー沖海戦で多くの航空機を使ってアメリカやイギリスの艦隊を攻撃し、「航空戦時代」の本格的な幕開けを自ら経験している。
    アメリカ、イギリスの海軍はこの緒戦での敗退をきっかけにして、航空機の攻撃から戦艦や空母を守るために防衛体制の強化を図り、レーダーなどの防衛装備の研究、開発に拍車をかけていったのである。
    アメリカやイギリスは、いち早く航空戦時代に対応できる組織作りや、戦術思想の転換に成功している。これに対して、日本海軍は新しい戦争の局面に柔軟に対応することができなかった。日本海軍は「大鑑巨砲主義」と「艦隊決戦主義」を戦略思想の基本としていた。
    (柔軟に対応しようにも、資源がどうにもならなかった面と、全体を統括できる体制がなかったということでしょう。陸軍と海軍は別のものだった。両方を統括できるようにはなっていなかった。)
    ●戦闘員への配慮(133頁)
    アメリカ海軍は海戦が行われる場合、必ずその区域の海面に潜水艦を待機させ、攻撃を受けて脱出を図ったパイロットの救助に当たらせた。そのための訓練も通常から行われていた。
    (2007年8月2日・記)
    ☆関連図書(既読)
    「失敗の本質」戸部良一・寺本義也・他著、中公文庫、1991.08.10
    「太平洋戦争の失敗10のポイント」保阪正康著、PHP文庫、1999.12.15
    「日米開戦 勝算なし」NHK取材班著、角川文庫、1995.05.25
    「ガダルカナル 学ばざる軍隊」NHK取材班著、角川文庫、1995.05.25

    (「BOOK」データベースより)amazon
    太平洋戦争域で守勢に回った日本は、絶対国防圏を設定し新たな戦争指導方針を決定した。一方、アメリカもB29による日本本土爆撃を決定し、サイパンは前線基地として不可欠となった。天王山となったマリアナ沖海戦。乾坤一擲、必勝の信念で米機動部隊に殺到する日本軍機は、目前でつぎつぎに撃墜される。勝敗を分けたのは、新兵器のレーダーとVT信管。電子兵器の差であり、兵器思想の差であり、文化の違いであった。

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