闇を喰む 1 (角川文庫 こ 22-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043754014

感想・レビュー・書評

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  • 高史明『闇を喰む 1 海の墓』角川文庫。

    古本屋でタイトルに惹かれ、購入。

    全2巻で描かれる戦時中の下関で在日2世として生まれた金天三の物語。朝鮮人でもなく日本人でもない扱いを受ける金天三は、貧困と差別という闇の中、敗戦を境に悪の道へと堕ちていく。やがて少年刑務所に収監され、満期で刑を終えた金は希望を求め上京する。

    世界が侵略のために他国に戦争を仕掛け、武力で多民族を統治しようとした野蛮な時代。日本もこの流れに乗り、中国や朝鮮半島に攻め込んだ。こうした時代を背景とし、全編に亘り淀んだ重く暗い雰囲気と主人公のやり場のない怒りが描かれる。しかし、主人公は貧困や差別を自らの力で跳ね返そうと、前に進むことを決して諦めない。

    こうした時代の流れや本書に描かれた差別を見ると、人間は他人より少しでも優位に立とうとする愚かな生き物であることが解る。今この瞬間も世界のどこかで他国よりも優位に立とう、自国の主義を他国に押し付けようとする紛争が続いている。

    アメリカや中国、ロシアの大国がこうした紛争に辛うじて加担しないのは、核兵器の恐怖による抑止が働いているからなのだろう。被曝国でありながら核兵器禁止条約にも参加せず、アメリカの核の傘に入ったままの日本は余程たちが悪い。日本の若者に主体性が失われ、バーチャルな世界に自己の存在価値を求める理由も解るような気がする。

    歴史は続き、歴史は繰り返す。一度入った闇の世界からは脱け出すことが出来ない。

    本体価格705円(古本7冊で127円)
    ★★★★

  • 戦前戦後を生きた在日朝鮮人の物語。歴史教科書では語られることのない、ひとりの在日朝鮮人の人生。汚辱、恥、悪、挫折について哲学的に語り続けており、じっくり読むとかなり体力がいる。

  • 在日に特権があるわけではなく、当然の権利があるだけ。歴史がそれを教えてくれる

  • 確かに在日には特権があり、犯罪率も高い。戦前の両班などの利権、腐敗により国が弱っていた。到底、西洋諸国とは伍してはいけなかっただろう。しかし、在日の物語を我々は知っているだろうか。彼らの視点で彼らの言葉に耳を傾けなければ、物事を正確には、理解できないと思った。なぜ、在日が荒れるのか。彼らの心には何があるのか。この本を読めば、その辺に少し共感する事ができる。

  • レビューは下巻で

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著者プロフィール

社会心理学者。主たる研究テーマは偏見・ステレオタイプ・差別。特に在日韓国・朝鮮人に対するもの。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(心理学)。現在、神奈川大学非常勤講師。著書に『レイシズムを解剖する』(勁草書房)、共著に『偏見や差別はなぜ起こる?』(ちとせプレス)など。

「2020年 『無意識のバイアス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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