壊れた少女を拾ったので (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 384
感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043838028

作品紹介・あらすじ

ほおら、みぃつけた――。死体の山の中、わたくしはひとりの美しい少女と出会いました。もっともっと美しくするため、わたくしはノコギリをふるう。カルトホラーの奇才がおくる、恐懼の短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 「姉飼」で日本ホラー小説大賞を受賞した遠藤徹さんの短編集。
    全5編を収録していますが、どれも耽美かつグロテスクで、嗜虐・被虐に塗れた物語ばかりです。
    「姉飼」もそうですが、遠藤さんの書く物語は世界観が独特で、残酷かつ享楽的な独自の雰囲気を味わえます。

    気に入った2編だけ軽く紹介。
    『カデンツァ』
    妻から「IH炊飯器との子どもができた」と告白された男。有機物と無機物との恋愛の果ての物語。その愛の果てには何があるのか。
    サイコホラーでもありますが、一風変わった恋愛モノとしても楽しく(?)読めました。

    『桃色遊戯』
    色っぽいものを想像しそうなタイトルに反した、おぞましい形での世界の終末の話。
    全身がぞわぞわするような、気色の悪さを味わえます。俯瞰で見る分に桃色の世界はきっと映像的には綺麗な気がしますし、好きは好きなんですけど本当に気持ち悪かったので人にお勧めはし辛いですね……。
    世界の終わりに一杯飲むなら……私は日本酒、かな……。

    この本が好きだったら受賞作の方もぜひ読んでほしい。縁日で串刺しにされて売られる「姉」と「姉」に魅せられた男の話。
    →『姉飼』(角川ホラー文庫)/遠藤徹

  • この作品のジャンルを表すとすれば、「困惑ホラー」という言葉が近いような気がする。一作目の弁頭屋は、日本が戦争をしており、尚且つ弁当の容器に人間の頭を用いているという世界観である。当然意味がわからないのだが、この作品では当たり前のこととして扱われる。それ以外の作品も世界観に対する戸惑いを隠せない設定が多く続き、本を読んでいる自分の世界とどこまで差異があるのかを考えて読むことになる。そしてそれをさせる程の不気味な表現力がある。

    終始困惑することは間違いないが、この作品でしか味わえないような一風変わったホラーが楽しめるのは間違いない。

  • 短編集。
    どの話も面白かった。
    表題作が、一番響かなかったけど。
    異常と正常の境界が曖昧、というのなら他にもあるんだけど、この作家はパスッと切って貼り付けたみたいな感じで、突然あっち側に行ってる。
    なんだこの設定、と思う暇もないくらい鮮やかにあっち側に連れていかれるので、その変な世界を受け入れざるを得ない。

  • この世界観はたまらないですね、好きな人には。タイトルが素敵、センス抜群。ただ個人的にもうちょっとバイオレンスがあるといいかなぁ。

  • 初読みの作家さんだったんですが、すごく程よい感じのグロで好きでした。退廃的で耽美でちょいグロが好きな人にはピッタリハマると思う。
    印象的だったのは弁頭屋とカデンツァだけど、表題になっている「壊れた少女を拾ったので」も、時代背景の感じとかとても好きでした。姉飼も読みたい。

  • 2017.2.20読了 18冊目

  • 佳作。

  • 表題作と『弁頭屋』期待しててんけど、ちょっと違った。世界観がぶっ飛びすぎてて戸惑った。
    個人的には『姉飼』の方が好きかなぁ。

  • 『姉飼』と同時期に購入し、どちらも、もぅ何度も再読している短編集。
    特に新たな発見があるというタイプの作品ではないが、この世界観に浸りたくて、読み返すといった感じ。
    では、収録順に簡単な感想を……。
    弁頭屋
    自衛隊、戦争してます。首都はテロが頻発してます。顔見知りの生首には弁当が入ってます。しかし内容は、ある(偏)愛の形。
    赤ヒ月
    カニバリズムの話。スプラッターというよりはゴア。それでも、かなり特殊なエロスの世界ともいえる。
    カデンツァ
    コミカルな設定を大真面目に書ききってる。『姉飼』の「ジャングル・ジム」の発展系かな?展開、オチはコチラの方がホラー度薄め。
    壊れた少女を拾ったので
    多重人格?ループ?スッキリと結論づけられるタイプではない。田舎町を舞台に、昭和的なテイストがする世界観も大好き。
    桃色遊戯
    タイトルとともに、映像イメージするとポップな感じがするが、とんでもない形での終末の話。自分も最後は缶ビール……。いや、ウィスキーのポケット瓶かな?
    五編とも方向性は全く異なるモノである。そして、どれも、「あり得ない」で済ませてしまう方々には向かないでしょう。
    実は、『姉飼』『壊れた少女を拾ったので』この二冊が、自分にとってのコチラの世界の入口でした。

  • 第10回日本ホラー小説大賞受賞作である「姉飼」が好みだったので手に取った。
    端的に言えば、残念な感じだった。
    解説で日下三蔵という方が、この著者の作品の怖さの秘訣を「作品世界のレベルがつかめない不安感」にあると述べているが、共感できなかった。
    むしろ、分かり易すぎて拍子抜け的な感じだ。

    実を言えば、「姉飼」にしたって、姉+麻薬(アンナカではなく…時事ネタ 苦笑)類似の図式は非常に分かり易かったものの、敢えてその組み合わせの妙に騙されてみようと思えたから楽しめたのだ。

    怖さというのが、先のわからない不安、に根ざすものだというのはよく認識しているが、そのわからなさというところを、どのように読者に提供できるかが作者の腕の見せ所なのだろうと思う。

    その意味では、どっかで読んだ残虐描写、人格分離という発想は、手垢にまみれていてとても意外性を感じさせられるものではないように思った。

    他に、以下4作品収録
    弁頭屋
    赤ヒ月
    カデンツァ
    桃色遊戯

    2014.5.16読了

  • 短編集です。どれも素晴らしい。
    私はこちらを先に読みましたが、同著者の『弁頭屋』改題なので同じものを買わないように注意です。
    いやもう全編に渡っておかしい。異常なのに平常心なんです。姉飼から完全にぶれてない。
    狂気に満ちているのにも拘らず、違和感を抱くこちらがおかしいのではないかと思わせるのには見事としか言いようがありません。

    ・弁頭屋
     人の頭にお弁当を詰めて売るって発想がチャーミングです。グロいのに笑っちゃう。人を好きな気持ちなんかはごく普通なのに、何故普通に人の頭からごはんを食べるの?もう最高。

    ・赤ヒ月
     えろい。わけわかんないけど淫靡なのはわかる。はあんぐろいよお。真剣に読むととろけちゃいそうです。

    ・カデンツァ
     異常な恋愛小説。家電と人間が恋して、子供産んで、普通に生活してる。世界観がおもしろいし、家電の描き方も上手い。これを推してビブリオバトルに出ました。

    ・壊れた少女を拾ったので
     理解できない。でもなんか綺麗。正直これが表題作になってしまったのはタイトルのインパクトだけだと思います。

    ・桃色遊戯
     こういったSFなら好きです。世界の終わりを描いた美しい絶望の物語。ぞわぞわしてきて気持ち悪いです。

  • 狂った設定の世界を描きながらしれっとそれをそう在るものとして扱い、なおかつそこに詩情や叙情さえ描きだしてしまうさまはなんだか奇術めいて。なんでこの設定でこんなん描いてるのにしみじみ感じちゃうんだ、という奇妙な引き込まれ方をする短編集だった。家電と不倫して子供まで作っちゃう『カデンツァ』あたりは映像化してみたらひたすら笑えると思う。

  • グロテスクな内容を多く含む短編集。

    【目次】
    ・弁頭屋
    ・赤ヒ月
    ・カデンツァ
    ・壊れた少女を拾ったので
    ・桃色遊戯

    個人的には「赤ヒ月」が一番好き。

  • 怖いし、グロい描写とかてんこ盛りだし、けどなんか切ない感じがする。エロいって感じることもある。もぞもぞする。

  • 幽霊が出るホラーじゃなく、気味が悪い意味のホラーでした。
    人間の頭で弁当を売る「弁頭」、家電との恋「カデンツァ」、人肉を食らう「赤ヒ月」、世界がダニに浸食されてゆく「桃色遊戯」、ドS鬼畜お姉様「壊れた少女を拾ったので」。
    全ての話が本当に気持ち悪い(褒め言葉)
    図書館に働く母が私に勧めてくれた本。こういう気持ち悪い話好きかもです。
    「カデンツァ」と「赤ヒ月」が好き。

  • ホラーとは言っても、背筋が寒くなるとか不安感じゃなくて、なんか不気味で、もやもや〜っとした読後感。

    グロとは言っても、暴力的というより内臓系グロ。いずれにしろ、そういうのが苦手な方は注意が必要です。


    生首の弁当箱、人間と家電の恋愛(擬人化じゃなくて本当に家電)、ダニに冒されていく世界。。。
    他の作品群の設定が突飛すぎて、肝心の表題作があまり印象に残らなかったのが残念。

    文体とか世界観は好きなので、『姉飼』も読んでみたいと思います。


    ***

    ところで表題作に出てくる『たてきない』ってどういう意味なんでしょうかね?辞書に載ってなかったもので。。。

    恥ずかしい、とか申し訳ない、みたいな感じかな?

  • 「姉飼」で大好きになった遠藤徹!
    表紙は七戸優。大好き!
    表題作が一番好きだけど、「カデンツァ」が面白くてなんだかうけてしまった。

  • 弁当屋
    人間の頭部が平気で弁当箱としてあつかわれてる世界でのお話。
    できれば、ミチとサチの争いの場面がもう少し詳しければよかったかなと。
    最後は、SMかな?w

    赤ヒ月
    ものすごくグロい…
    絵なしでここまで想像させることのできる文章をかく作者は、本当にすごいと思う。
    恍惚の描写や行為の場面は、すっごく感じることができた。
    結構好きかもしれない。
    朝読書には適切ではないかもしれないがw

    カデンツァは、他のにくらべてグロがほとんどないので、グロイ話に疲れた人には調度いいかもしれません。
    変な恋のお話。最後には主人公とアンナの幸せを願わずにはいられませんでした(笑)

    壊れた少女を拾ったのでは、なんかよくわかりませんでしたね~
    無限ループってことでいいのかな?

    桃色遊戯
    町全体が桃色のダニまみれになってしまった世界での、ほんの一部の人、時間のお話。
    私にはよくわかりませんでした…

  • おねえさまの鬼畜さが好きだ

  • 表題の少し古風な雰囲気にどっぷりハマった。それぞれ世界観が独特で読んでてドキドキした

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著者プロフィール

遠藤 徹(えんどう とおる)
1961年神戸市生まれ。同志社大学グローバル地域文化学部教授。研究テーマはプラスチック、モンスター等多岐にわたり、以下のような評論・研究書を著している。『溶解論 ―不定形のエロス―』『プラスチックの文化史 ―可塑性物質の神話学―』(ともに水声社)、『ポスト・ヒューマン・ボディーズ』(青弓社)、『ケミカル・メタモルフォーシス』(河出書房新社)、『スーパーマンの誕生 ―KKK・自警主義・優生学―』『バットマンの死 ―ポスト9.11 のアメリカ社会とスーパーヒーロー―』(ともに新評論)など。
また小説家としても活躍し、「姉飼」で第10回日本ホラー小説大賞を受賞、「麝香猫」で第35回川端康成文学賞候補となる。主な作品集に以下のものがある。『姉飼』『壊れた少女を拾ったので』『おがみむし』『戦争大臣』(以上、角川ホラー文庫)、『ネル』(早川書房)、『むかでろりん』(集英社)、『贄の王』(未知谷)など。最新刊は本書と同時刊行の『七福神戦争』(五月書房新社)。

「2018年 『七福神戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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