日本俗信辞典 衣裳編 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044006464

作品紹介・あらすじ

生活の知識や技術に関する伝承である俗信は、庶民の心のくせや集合意識をさぐる豊かな鉱床である!「草履の鼻緒が切れると縁起が悪い」「ネコは家から盗み出した手ぬぐいをかぶって踊る」「赤褌はフカが恐れる」など、衣類を中心に、履物、被り物、裁縫道具、化粧道具、装身具、寝具に関する民間の言い伝えを収集。項目ごとに並べ、話の類型を整理する。伝承する地域も記した文庫オリジナルの永久保存版。本文イラスト・中林啓治

【収録項目】
足駄、糸、団扇、産着、襟、扇、お歯黒、帯、鏡、笠、傘、肩当 、蚊帳 、簪、煙管 、着物、脚絆 、鏡台、巾着、 櫛、口 紅、靴、化粧、下駄、 茣蓙 、腰巻 、財布 、座布 団、襦袢 、頭巾 、ズロ ース、 千人針 、草履、 袖、タオル、 襷、煙草、足袋、袂、箪笥 、杖、褄、手 拭、手袋、寝 巻、糊付 け、 羽織 、袴、鋏、機、は ちまき、鼻緒、腹巻 、針、ハンカ チ、紐、袋、布団、 風呂敷、褌、 帽子、 頬かむり、前 掛け、 枕、蓑、眼鏡 、物 差し、 喪服 、股引 、もんぺ 、浴衣、 指輪 、よだ れ掛け、リボン、綿、草鞋ほか

感想・レビュー・書評

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  • 日本俗信辞典 衣裳編 常光 徹:文庫 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322010000744/

  • 辞典なので暇な時に読んでいるが、衣装にまつわる迷信がたくさん書かれてて昔の人は色々な物事に信仰を見出していたのだなと感じる。非常に面白い

  • ・常光徹「日本俗信辞典 衣裳編」(角川文庫)が出た。以前の動物編、植物編に続く第3弾である。これもまた例の小事典の文庫化かと思つてみるのだが、さういふのが出てゐたといふ記憶は私にはない、と断言できない。それでも手許に小事典の衣裳編はないといふことで、確認のために本書の巻末をみると、そこには「本書は書き下ろしです。」(367頁) とある。これは初めて出るのであつた。このやうな辞典が出ることは本当にありがたい。まづはこのことを記しておきたい。
    ・凡例に、「本書は、衣類を中心に履物、被り物、裁縫道具、化粧道具、装身具、寝具に関する俗信についてまとめたものである。」 (9頁)とあるやうに、衣類とそれに関はる諸々の物が対象となつてゐる。具体的には最初の目次を見れば良い。足駄、足半、袷、居 敷当、糸……と続き、最後は、リボン、綿、草鞋で終はる。正直なところ私の知らない語もある。言葉として知つてはゐても、その実態を知らない語は更に多さうである。居敷当は全く知らない語である。「着物などの尻の当たる部分に補強のためにつける布。」 (13頁)かうして説明されれば、これまでの乏しい経験からあれかもしれないと思はれる物は出てくる。ごく大雑把に言つてしまへ ば、継ぎ当ての布のことではないのか。もしかしたらその当てる部位が限定されているのではないか。辞書で「居敷」を調べると、 席、座席とお尻の意味があつた。後者には福内鬼外「神霊矢口渡」の例が出てゐる。新しい意味であるらしいが、いづれにせよ、尻当てに使ふ布であるらう。これに対して、お歯黒ならば芝居で見たりしてゐる。有名な「東海道四谷怪談」の髪梳きはお歯黒をつけると ころから始まる。だから、どのやうにお歯黒をつけるのかは、芝居の段取りの一つかもしれないが、知らないわけではない。「歯を黒く染めること。鉄漿つけともいい主に女性の習慣だった。」(41頁)と最初にあるが、私が知るのはほとんどこれだけである。ところが本書には、「近世には庚申の日に鉄漿をつけない風があった。」(42頁)とか、「江戸の変わった俗信に、褌をはずした男に鉄漿壷を跨いでもらうというのがあった。」(同前)などといふのもあり、広く行はれてゐただけに禁忌や決まり事もあつた。この「変わった俗信」は、うまく染まらない鉄漿を染まるやうになれと期待したものらしい。男根の威力である。お歯黒には「妖怪とお歯黒の呪力」(44頁)といふ小見出しもある。柳田国男「妖怪名彙」ノブスマの項、佐渡の男もお歯黒といふ話や、「お歯黒でヘビを退治 した話」(同前)はお歯黒の呪力であるが、逆にお歯黒のお化け等の話もある。お歯黒には呪力があつたらしい。かういふ珍しい話は、当然、本書には多い。何しろ現在ではほとんど見られなくなつてゐる物にまつはる俗信、話である。しかし、ごく一部に現在でも使はれてゐる物がある。例へばハンカチ、「長野県上伊那郡で、ハンカチを贈り物にするものではないという。」(289頁)なぜかハンカチは別れにつながるらしい。私はきいたことがない。タオルだと、「客が帰らない時は、箒を逆さに立ててタオルを着せると帰る」(218頁)などといふ「よく知られた呪い」(同前)が出てゐる。カタカナ語は新しいだけあつて中身に乏しい。俗信といふも の、それだけの生活の積み重ねから生まれたものである。それがないカタカナ語はかうして出てくるだけでも立派である。何らかの形で生活に密着してゐればこそ、俗信が生まれる。これから生まれる俗信もあらうが、廃れていく俗信もある。かうした俗信が今後どの やうになつていくのかは興味ある問題である。

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著者プロフィール

1948年、高知県生まれ。国学院大学卒業。民俗・口承文芸を研究。著書に『学校の怪談』(ミネルヴァ書房)、共編著に『三右衛門話──能登の昔話』(桜楓社)、『日本伝説体系』第5巻(みずうみ書房)、『昔話・伝説小辞典』(みずうみ書房)、『ガイドブック日本の民話』(講談社)他。

「1993年 『土佐の世間話 今朝道爺異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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