増補カラー版 九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史 (角川ソフィア文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044007485

作品紹介・あらすじ

腐敗し白骨化してゆく亡骸の様子を克明に描く九相図。日本文化に深く根を下ろした不浄の仏教絵画には、生と死、そして肉体の無常を巡るいかなる想いが秘められているのか。芸術選奨文部科学大臣新人賞、角川財団学芸賞ほか受賞作に補遺を加え、全図版をカラー収録した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 怖い、でも目を逸らせない──。「死」を直視する異色の絵画「九相図」の謎に迫る | 商品・サービストピックス | KADOKAWAグループ ポータルサイト
    https://group.kadokawa.co.jp/information/promotional_topics/article-8102.html

    「日本美術の光と闇」文学部 山本聡美教授(新任教員紹介) – 早稲田大学 文学部(31 JULY 2019)
    https://www.waseda.jp/flas/hss/news/2019/07/31/5187/

    「九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史」山本聡美 [角川選書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321405000095/

    「増補カラー版 九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史」山本聡美 [角川ソフィア文庫] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/322211001620/

  • 何度も手にとってようやく、購入しました。
    東洋には、死体が腐乱して白骨となるまでを9つの相で表す、九相図という絵画がある。
    これは、死体の変化と僧侶の修行の段階を表した九相感と重ね合わせたとある。僧は人が変わりゆくのを見て、修業に励むのである
    シルクロードの石窟にも書かれた九相図は、日本に伝来して、鎌倉仏教と結びつき、凄惨な主題であるにもかかわら、その絵は圧倒的な美しさをたたえてた。
    九州国立博物館に伝えられた、九相図に対して、詞書(ことばがき)も、外題(げだい)もなく、箱書きのみから、その手がかりを探ることからはじまる。

    先ず絵巻には、出所となるものがなにも書いていない。過去に修繕された形跡があり、そのときに、後世に伝えることをはばかるものを省いたのかもしれない

    ふたの表に、「九想図 土佐光信筆 西塔寂光院什物」
    土佐光信 1462~1520活動期 室町時代後期に活躍したやまと絵師である
    旧所蔵先 西塔寂光院 は、比叡山延暦寺の西塔、延暦寺第二世座主の円澄が開いた寺院である
    すなわち、寂光院の宝物の1つとして後世に伝わったものと推定をされている。

    九相とは次の状況を言う

    脹相(ちょうそう) 顔色が黒ずみ、身体は硬直して手足が花を散らしたようにあちこちを向く
    壊相(えそう) 皮や肉が破れ壊れ身体の色が変わり、識別不可能となる
    血塗相(けちずそう) 血が流れだし、あちこちに飛び散り溜まり、ところどころをまだらに染め、悪臭を放つ
    膿爛相(のうらんそう)肉が流れて、火をつけたろうそくのようになる。
    青瘀相(しょうおそう) 死体が腐敗して黒ずむ、痩せて皮がたるんでいる
    噉相(たんそう) 動物に食われて、肉片が、引き裂かれ、ちりぢりになる
    散相(さんそう) 死体の部位が散乱する。
    骨相(こつそう)膿やあぶらがついた骨と白骨とに分かれる。散乱している
    焼相(しょうそう) 魔訶止観には記載がない

    天台僧源信が残した、「往生要集」にある、人道不浄相が「魔訶止観」と「大般若波羅蜜多経」を引用に後世に多大なる影響の残した

    古事記の伊邪那岐(いざなぎ)命と伊邪那美(いざなみ)命の黄泉の国の話、見てはいけないといわれてみていたら、蛆がたかり忌まわしい姿の元妻のすがたに、急いで逃げ帰り、黄泉の国との入口を大きな岩でふさいでしまう。

    嵯峨天皇皇后で、仁明天皇母の、檀林皇后が、世人の愛欲を戒めるために自らの遺骸を野に捨てるように遺言した話

    小野小町が、驕慢の果てに零落し、死後にはその遺骸を葬る者もなく、野ざらしのしゃれこうべになったという伝説

     花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に
     思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを

    なくなった妻の死体を捨てないで、横に寝ていたら、変色していて、そのことがきっかけで発心(出家すること)した、高僧の話などが紹介されている

    全国には、10以上も九相図はのこっており、2004年に松井冬子が「浄相の持続」という絵画を表し、平野美術館へ委託している。

    人間は時代が変わっても、決してかわってはいない。

    身近な死体と、情念、そして仏教とをつなぐのが本書と理解しました。

    目次
     序 九相図の一五〇〇年
    第一章 九相図とは何か
    第二章 九相図の源流──西域・中国から古代日本まで
    第三章 中世文学と死体
    第四章 「九相図巻」をよむ──中世九相図の傑作(一)
    第五章 国宝「六道絵」の「人道不浄相図」をよむ──中世九相図の傑作(二)
    第六章 「九相詩絵巻」をよむ──漢詩・和歌と九相図の融合
    第七章 江戸の出開帳と九相図
    第八章 現代によみがえる九相図
     おわりに
    補遺 朽ちてゆく死体の図像誌──戦の時代の九相図
     文庫版あとがき
     図版協力
     参考文献一覧

    ISBN:9784044007485
    出版社:KADOKAWA
    判型:文庫
    ページ数:400ページ
    定価:1740円(本体)
    発売日:2023年07月25日初版発行

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著者プロフィール

1970年、宮崎県生まれ。共立女子大学教授。専門は日本中世絵画史。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。大分県立芸術文化短期大学専任講師、金城学院大学准教授、共立女子大学准教授を経て、2013年より現職。著書に『九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史』(KADOKAWA、平成27年芸術選奨文部科学大臣新人賞・第14回角川財団学芸賞を受賞)、共編著に『国宝 六道絵』(中央公論美術出版)、『九相図資料集成 死体の美術と文学』(岩田書院)、『病草紙』(中央公論美術出版)などがある。

「2018年 『闇の日本美術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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