代官の日常生活 江戸の中間管理職 (角川ソフィア文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044092207

作品紹介・あらすじ

時代劇でおなじみの代官。悪の権化のように描かれてきた彼らは現代のサラリーマンであった。400万石の幕府の経済基盤を支えた代官を理解すれば、江戸幕府がなぜ270年もの間存続できたかが見えてくる。

感想・レビュー・書評

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    「おぬしもワルよのぉ」でおなじみの代官像は実態とかけ離れている、ということを指摘する。実際の代官はどのように生活を送り、仕事をしていたか、当時の日記から解説していく。

    代官は年貢取り立ての最前線にいるのだから、人数が多い。彼らのうち大半が賄賂などで堕落した生活を送っていたら江戸時代はあれほど長く続かなかっただろう、という指摘から始まる。
    同じ代官でも時代とともに求められる職能が変化していったこと、幕府からの経費だけでは業務の遂行が難しく、異動時に赤字にならないよう努力して清算していること、勤務日は何日くらいだったかなど、色々な角度で分析しており、興味深い。

    五代将軍綱吉のイメージが御犬様の馬鹿殿から、官僚制度を改革した人物へと変わった。歴史上の人物のイメージは学校で習う程度のことで固めてはいけないと反省した。

  • 商人から賄賂を受け取り、過重な年貢を強いるー時代劇などで悪の権化のように描かれ続けてきた「代官」。しかしその実態は、部下の不始末に悩まされ、頻繁な転勤や多額の借金に苦労しながらも、全国400万石におよぶ幕府直轄領(天領)の徴税システムを支えた「江戸の中間管理職」であった。1200人を超える江戸幕府の代官たちの経歴を丹念に調査。悲喜こもごもの実態を通して、幕府という組織の本当の姿を照らし出す。(親本は2004年刊、2015年文庫化)
    ・序 章 代官の虚像と実像
    ・第一章 「代官」という仕事
    ・第二章 代官から見た幕政改革
    ・第三章 代官の転勤人生
    ・第四章 江戸の代官
    ・第五章 代官たちの危機管理
    ・終 章 したたかな農民と代官

    本書を読むと、代官という職務がいかにリスクの高いものであったのかが良く分かる。幕政初期は、必要な経費が織り込まれておらず、多くの代官は年貢を使い込み、綱吉期の賞罰言明によって罷免(切腹・流罪・改易)に追い込まれる。また、代官を務めるには、手当以上に出費がかさみ、莫大な借財を負うこともある。その割に地位は高くない。旗本のなかでも役高150俵と最下層に属し、7割は罷免・死亡・勇退など代官のままで終わる。3割は布衣場(従六位相当)に出る。中には、勘定吟味役を経て、勘定奉行まで登るものもいる。仁政によりその功績を讃えられる人もいて悲喜こもごもであるが、代官の実像を知る上での、良書といえる。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。法政大学文学部史学科卒業、同大学院人文科学研究科博士後期課程満期退学。博士(歴史学)。現在、高崎経済大学地域政策学部教授。専攻は日本近世史・地域史。著書に『幕領陣屋と代官支配』(岩田書院)、『江戸幕府代官履歴辞典』(岩田書院)、『徳川幕府全代官人名辞典』(共編・東京堂出版)など。

「2015年 『代官の日常生活 江戸の中間管理職』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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