機動戦士ガンダムSEED DESTINY(5) 選ばれた未来 (角川スニーカー文庫)
- 角川書店 (2006年3月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044291129
作品紹介・あらすじ
月へと逃亡したジブリールを討ち果たしたデュランダルは、争いなき世界の構築を掲げ、デスティニープランを発表する。だが、それは遺伝子特性に従って人類を管理・淘汰する、自由なき社会への幕開けであった。失われゆく未来を目前に、キラとアスランは最後の戦いへと臨む。一方、運命に翻弄され続けてきたシンが行着く先とは、果たして-大人気アニメの完全小説化、ここに完結!混迷の明日に運命を選びとれ、ガンダム。
感想・レビュー・書評
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『ガンダムSEED DESTINY』のノベライズ全5巻。著者は後藤リウさん。後藤さんは『ガンダムSEED』のノベライズも書いておられ、「SEED」愛に溢れた作家さん。
『ガンダムSEED DESTINY』も『ガンダムSEED』同様、繊細なキャラの心情が丁寧に描かれ、またMSの動きや装備などが精密に描写された戦闘シーンは、とても分かりやすいのでアニメのシーンが次から次へと甦ってくる。
さすが「どこに出しても恥ずかしくないSEEDおたく」と担当さんの太鼓判を押された作者さんです(チャンドラのフルネームをソラで言えるなんてすごくない? ダリダ・ローラハ・チャンドラⅡ世なんて…知らんかった、というか覚えようとまで思わんかったよ)。
とにかく後藤さんのノベライズはアニメでは描ききれなかった部分、表現しにくかった部分がきっちり書かれているので、アニメを深く理解する上でも新たな気づきがたくさんあった。
あとオリジナルな部分もあって、とくに登場人物たちのやりとり(イザークとディアッカ、タリアとデュランダル、メイリンとアスランなどなど)には、ノベライズだからこその面白さを感じることができる。
また作者さんの「登場するキャラみんなにひとつでも見せ場を作ってあげたい」という心意気が伝わってくるエピソードには、何度胸に熱いものがこみ上げてきたことか。
とくに強化人間(エクステンデット)のステラ、アウル、スティングの兄妹のような絆の描かれかたには切なくなる。
たとえばアウル。エクステンデットは戦いに邪魔になるような記憶を消されたり改変されたりして、精神を安定させられる。
アウルとスティングは、クレタ沖の戦闘の前に死んだと思われる妹のような存在のステラの記憶を全て消されていた。けれども搭乗機に向かったアウルは、自分たちの機体の横にMSがもう一機収まるほどのスペースがあることに、なにか感覚的な違和感を感じてしまう。
クレタ沖の戦闘でアビスに搭乗したアウルは、シンのインパルスの攻撃を受け、海に沈み戦死する。アニメでは1、2秒(もなかったかもしれない)ほどの海に沈みゆくシーンに、後藤さんはアウルが死の間際にステラを思い出すエピソードを追加するのだ。
“海──海が好きと言ったのは、あれは誰だったろう?
落ちていくアウルの目の前で、白いドレスがひるがえった。さっきからずっと目の端をかすめてはとらえられなかったイメージに、やっと指先が届く。
──ステラ。
( 中略 )
おバカのステラ。幸せなステラ。
どうしていままで思い出せなかったんだろう?あいつ、いたのに。ずっといっしょに、三人で戦ってたのに。
( 中略 )
かわいそうなステラ。あんなに死ぬのを怖がってたのに。
かわいそうなスティング。あいつ、けっこうステラをかわいがってたのに。もうなにもおぼえてない。ステラがいなくなったことさえ知らない。
……そうか。
ふと、アウルはその事実に気づく。
──ぼくのことも、忘れちまうのか、あいつ。
なにもかも忘れて、たった一人で。
戦って、戦って──死ぬまで……?
それが、なんだか少し、悲しかった。”
第3巻 P218-219
私も悲しかったよ、アウル、アウルーー!
このエピソードを読むまでは、アウルに対してこんな気持ちになんてならなかった。
記憶を消されては戦って、戦って。また記憶を消されては死ぬまで戦って。
そうやって彼らは「昨日」を失くしたまま生きてきた。だから「明日」にも行けないままで。
記憶って、人が操作して簡単に消えるようなものではなくて、人に感覚的なものが残っている限り、どこか遠いところに避難しているだけなのかもしれないな。そして、その人にいちばん必要なときに還ってくるのかもしれない。
アウルもやっと「昨日」をもらったんだね。
すぐに忘れ去られるような一瞬のシーンに、こんなにも悲しくて温かいエピソードを捧げ、アウルの思いを掬いあげられた後藤さん。
みんなみんな、後藤さんに愛されてたんだな。
第4巻はシン・アスカ役の鈴村健一さん、第5巻はギルバート・デュランダル役の池田秀一さんが解説を書かれていて、それぞれのキャラを理解するのにとても興味深い。
池田さんの解説を読むと、私が感じたデュランダルという人は、池田さんが考えるデュランダル像そのものだったことが分かった。いやはや声だけでこんなにもキャラの性格や感情がちゃんと伝わってくるなんて、やっぱりすごいわ。
また鈴村さんの解説には考えさせられた。
視聴者からは「シン・アスカが嫌い」という手紙がたくさんあり、その「シンが嫌い」は、「キラと対立しているから」とか「アスランの言う事を聞かないから」といった内容が多かったそうだ。
鈴村さんは、それをデュランダルの「ドラマ上の悪」をキラたちの「ドラマ上の正義」がやっつけるという「視点」で見れば、「キラと対立しアスランの言うことを聞かないシン」は「ドラマ上の悪」になる、その構図だけでシンか嫌いという方が多かったと書かれている。
これには私は「うっ…」となりました。
私はアスランが大好きなので、というか『SEED』の子たち、キラやラクス、カガリが大好きなので、カガリにキレるわ、アスランに反抗ばかりだわ、ずっと怒ってキレて、自分は正しいとばかりで、都合の悪いことはアスランやオーブやフリーダムのせいにして……って、シンのこと嫌いだったから。
鈴村さんは決してシンへのそんな見方に怒ったり、嘆いたりされてるわけではない。
ドラマのパーツとして記号的にシンが嫌いと言っていいのかな、彼の人生を観て、彼の人格を感じて「嫌い」と言えるのが理想。
「作品」というのは客観的な「視点」で観ることができる。対立する二つのどちらの考えも知る事ができる。だから自分が好きなキャラクターに敵対している奴を理解してみる事もできる気がする。
その上でさらに嫌いになってもらえればそのキャラクターを演じた僕は表現者として幸せです、と書かれている。
私はシンが嫌いで『DESTINY』はテレビ放送時に観たっきり(「スペシャルエディション」は観たけれど)だったのだけれど、先日、アニメの感想を書こう何度も観ているうちに、最初は腹立つばかりだったシンの視点からも作品を観ている自分に気がついた。
それでもシンからの視点で世界を観るのはとても苦しい。なんていうか、「理解はできても、納得できないこともある……」みたいな。
そんなときにこのノベライズはとても私の力になってくれた。
キレてばかりのシンにもあった心の揺れ。アスランへの反抗心。オープへの憎しみの裏にあるもの。戦いの果てに彼が気づいたこと……、いろんなシンの感情が丁寧に描かれていたことで、いつの間にか彼を好き嫌いでは見ることがなくなっていた。
とはいえ、やっぱりシンは苦手なままなんだけど。でもそれは最初に抱いた「アスランにひどいことばかり言うから嫌い」というのとは違うんだよな。
『ガンダムSEED DESTINY』って、一度だけじゃなくて、何度も観ることで面白くなっていく作品なんじゃないかな。シン、アスラン、キラの3つの視点で見ることができて初めて、世界はぐんと深く広がっていくのだから。
今はもう心の底から願ってるんだよ、私。
シンに心から笑える日が訪れますように……って。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小学生時代に放映されていたTVアニメの小説版。
理念にも武力にも裏切られた男は、最後に何を信じたか?
原作は古参のガンダムファンには大不評だったが、少なくともこの小説版は悪くない。 -
アニメだけではわからなった事が、何となくすっきりしまし。
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ストーリー的にちょっと腑に落ちない部分もありましたが、文章的にはSEEDと同じく読みやすく、アニメの補完的な本でした。
・・・主人公はシンのはずなんですがねぇ・・・。キラが出張っていて、主人公の影が薄いです。(一部には、本当の主役はアスランだったとかいうのもあり。もしそうだったのなら、アスランのダメダメっぷりが前面に出てしまって、ちょっと気の毒)
1巻から全て購入済みです。 -
4巻未購入
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最後の戦いが始まる!!キラとシンの行方は!?
デスティニープランとは!? -
小説オリジナルで描かれたシンとレイの別れのシーンがとても切ない。
キャラ一人ひとりの感情が丁寧に書いてあるので読みやすいかな。
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SEEDもDESTINYも、小説は全部買っています。でも、全部乗せるのが面倒で、代表してこれだけ。