海外赴任のために必要なこと 駐在員家族のメンタルヘルス (角川フォレスタ)

著者 :
  • 角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046539144

作品紹介・あらすじ

海外展開を積極的に行う企業が増加し続ける現在、本人だけでなく、随行家族のメンタルヘルスにも注意が必要です。著者の実体験を交え、これから海外に派遣される人、そして社員を送り出す人事部の方にも最適の一冊。

感想・レビュー・書評

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  •  わくわくするような期待と緊張感、そしてロングフライトの疲労感などが入り交じり、私はとても複雑な思いで空港に降り立ちました。
     その瞬間、なんともいえない独特の空気感が押し寄せてきました。光、風、景色、温度、匂い……。なかでも「匂い」は、その街特有のものがあると私は感じました。
     あるヨーロッパの都市に初めて到着したとき、空港ではあまり感じなかったのですが、都心に近づくにつれ、「匂い」を意識し始めました。それは、今まで感じたことのない、甘い、香水のような化粧品のような匂いでした。受け入れ難いものではないけれど、心地良いものでもありませんでした。ただ、「異国の匂い」という感覚でした。
     この「匂い」をどう感じるかが、その都市に住めるかどうかを左右するカギになります。アジアの某街に赴任した知人は「街の匂いが耐えられない」と、夫を残して、3か月余りで帰国してしまいました。(pp.6-7)

    海外異文化適応段階と期間
    ➀移住期(着任してすぐの期間)
    ➁不満期(数か月後)
    ➂諦観期(さらに数ヶ月後)
    ➃適応期(適応に達した時期)
    ➄望郷期(長期滞在者がふとしたきっかけで発生)(pp.22-26)

     その土地の気候は気分を左右します。その日のお天気によっても、気分はずいぶん違うものです。お天気がよければ「気持ちいいな。さて、今日も頑張るぞ」と気合が入りますが、空がどんよりしていたり、冷たい雨がしとしとなんていうときは、気分まで重たくなってしまいます。
     日本のように、四季に恵まれた土地はあまりありません。やわらかな陽光が降り注ぐ春、ぎらぎらと太陽が照りつける夏、さわやかな風が吹き抜ける秋、そして透き通りような空気が肌を刺す冬——。日本で暮らす私たちは、この四季の恵みをあたりまえのように受け取っているのです。(p.68)

     日本では毎日できることが、現地では素材がなくて不可能なのです。これでは欲求不満が募る一方です。食の問題は決して軽視できないのです。
     ポルトガルでは美味しいコメが手に入らなくて苦労したけれど、英国で入手したコメが美味しくて感動したという話もあります。この英国の米も、日本の米と較べると、相当食味は落ちると思いますが、それだけでもストレスが緩和されるのです。(p.88)

    海外で暮らすための大切な3つのS
    ➀KKS→積極性(公共の場で、適度なサービスを受けるには、「~をしたい、してほしい、見たい、食べたい、買いたい」など、明確に伝えなければ関心すらもってもらえません。はっきりした意思表示により、初めてコミュニケーションが成立していきます)
    ➁WWS→自己主張(黙っていると相手には何も伝わりません。自己主張は、自己中心とは違います。「私はこんなに安全な日本人である」と主張してください)
    ➂MMS→アピール(「私はこんなことができる日本人です」と主張するのも、相手にとってはわかりやすいでしょう。自分自身をラベリングすることが大切です)(pp.95-97)

    「お宅のお子さんは、おもちゃを他の子に取られたら取られっぱなしで何も言わない。そういうときには『それは僕のおもちゃだ』と主張することも大切だ」と言われたそうです。
     日本だったら、おもちゃを皆で仲良くシェアして遊ぶほうがよしとされ、「それは自分のだ」と主張しないから注意されるなんて、考えられないのではないでしょうか。
    幼い頃から「自分の物は自分の物」ときちんと自己主張することの大切さを叩き込まれる欧米人と、波風を立てずに皆で仲良くすることの大切さを叩き込まれる日本人が、大人になって一緒に物事を進めようとすれば、いろいろと行き違いが生じるのは当然のことだと大いに納得しました。(p.98)

    2003年北京のSARS流行の心理的影響「5つのP」
    1. SARS Phobia:真実の情報が公表されず疑心暗鬼が先行する段階。
    2. SARS Panic:真実の数字が明るみに出てパニックが広がる段階。
    3. SARS Paranoia:流言・事実ではない噂が広がる段階。
    4. SARS Politics:流行が峠を越え、援助競争や検体入手をめぐり政治的動きが始まる段階。
    5. SARS PTSD:流行がおさまり流行中に受けたトラウマについて語られる段階。(p.156)

  • 海外赴任生活がどうなるのか、食い入るように読んだ。
    体験談などが豊富で、イメージしやすい。

    お互い、しっかりケアしていかないといけない。
    夫婦ともに読むべき本だと思う。

    [more]
    (目次)
    第1章 赴任直後から駐妻たちの心に芽生える感情とは?
    第2章 赴任後の心理的発展段階 ハネムーン期から成熟期まで
    第3章 外国で暮らすということ、現地での生活
    第4章 海外子育て事情
    第5章 国別 食にまつわる駐妻エピソード
    第6章 「KKS、WWS、MMS」大切な3つの“S”って何?
    第7章 駐在員本人の家族への思い
    第8章 企業の利益は家族のメンタルヘルスから
    第9章 国境を跨ぐ医師たちの取り組み
    第10章 POSITIVE MIND!―Well Beingの考え方

  • 夫の海外赴任のため海外に住むことになった妻の心境の変化、妻が陥りやすい精神状況、一般的な夫の考え方が書いてあります。
    私も海外赴任が決まり、妻が現地でうまく馴染んで生活できるかが不安になり読んでみました。
    読んだ感想としては自分がある程度想像していた妻の心境が書いてあり、理解しやすかったです。妻の視点で書いた本なのでより心境を詳しく理解できたかと思います。
    家族帯同で赴任する方は一読しておくといいかもしれません。

  • 夫の海外赴任にともない海外で生活をすることになった妻(駐妻)のための本。著者自身、イタリアドイツの海外生活を経験。

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著者プロフィール

大手総合商社、電器メーカーにて貿易業務に携わったのち、海外在住経験をもとにメンタル強化のための活動に取り組む。現在、在外邦人向けメンタルヘルスセミナーの国内外での講演やプロデュースを行なう。産業カウンセラー、心理相談員、レジリエンス・トレーナー、ポジティブサイコロジー・コーチ、株式会社PsyCap Partner代表。著書『海外赴任のために必要なこと』

「2016年 『メンタル・タフネス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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