俺の友達♂♀が可愛すぎて困る! 04 (MFC キューンシリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046802705

作品紹介・あらすじ

女体化する幼馴染みが可愛すぎてドキマギ!? 禁断のTSF(性転換)ラブコメ第4巻!

感想・レビュー・書評

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  • 役者の幅が広がり数も増える一方で、主演を目指さない女優もいるのです。

    「TSF(後天的性転換を題材としたフィクション作品)」のラブコメとしては2020年代で第一線を張っている作品だと私が思ってます『俺の友達♂♀が可愛すぎて困る!』四巻のレビューをお送りします。

    ただ、いきなり四巻から読み始める方はまずいらっしゃらないと思うので、あらすじや作品紹介などについては省略させていただきます。ちなみに私は、一~三巻のすべてにレビューをお送りしました。
    もしよろしければ、そちらからご参照いただけましたら幸いです。

    というわけで三巻まで描かれた夏は終わり、ここ第四巻のメーンを占めますイベントは「文化祭」です。
    レギュラー格のキャラクターもかなり出揃いました。いつものメンツで回しつつ、メインヒロイン「沢渡雪緒」と主人公「天野滉一」の関係性の掘り下げに徹した巻ということもできます。
    TSヒロインたちの男性時(オリジナル)の姿がピックアップされ話の幅が広がった点も見逃せませんね。

    四巻の表紙を担当するのが、天野くんと雪緒にとって共通の幼馴染であり、天野くんに対する恋心を秘めながらもあえてのお助けキャラに徹している「水瀬夏希」であることからもわかる通りです。
    新TSヒロインの登場を引きに持ってきたことからも足場固めに終始した巻であることは自明でしょうか。

    とまれ、ちょっぴりエッチなラブコメらしく、なぜか至近距離での不可抗力な密着が見せ場としてやってくることに変わりはありません。頻度は下がったといえ一巻とシチュエーション的にはダブりますね。
    けれどここでは雪緒が天野くんを意識するようになったことが、相違点として挙げられます。彼もしくは彼女であるところの雪緒くんは、純粋無垢だった一巻のころとは違って悶々としますし悩むんですよ。

    三巻までに描かれた過程を辿り、ここに至って雪緒はキャラとして完成したのだと私は考えています。
    まず今回、女装が似合う「男の娘」という形で元々の姿の魅力を高めたのがひとつ。
    そして天野くんを惑わせて煩悶させるファクターのひとつから一転し、自ら考えて葛藤し、天野くんへの恋心を自覚して自分から行動を起こすヒロインへと成長を遂げたのがひとつです。

    そうです、葛藤こそがドラマを生むのです。
    男と女の肉体を往復することで派生して、立場や服装の差異に恥じらい赤面することこそがTSの醍醐味のひとつです。言うなら意識させられるのは主人公だけではなく、雪緒もそうなったということなのです。

    そんなわけで、なぜか雪緒の方から天野くんへ密着していき動じなかった一巻とは違って、四巻の雪緒は密着されると慌てます。小悪魔的に女の武器を使おうとします。嫉妬したりでむくれたりもします。
    男の子に女の子の体で接近したらこうなるって常識と情緒を雪緒が身につけたことで展開にドラマが生まれます。雪緒もひとりの人間として恋に挑もうと意志を示したことを、私は嬉しく思いました。

    TSをテーマとして掲げつつ、変則的な形で描いていた本作ですが、ここに来てスタートラインですね。
    自分の女体にドギマギするのも束の間、慣れるにつれて新鮮な驚きや葛藤が薄れるのは必然か。
    続いてドラマ性が削れてしまうのは、確かに「TS」ジャンルの宿痾であるのかもしれません。

    なら最初は女体に慣れる以前に自覚がないところからスタートさせます。
    自分の身体ではなくて相手からの視線にドキドキして、女体ならぬ女装に恥じらわせる。
    つまりは逆転の発想でストーリーを作ったということなのかも。

    複数人TSヒロインを投入することで、彼(彼女)たちのスタンスは違うのだと教える。その上で彼もしくは彼女たちの絡みで豊富なネタを生み出していく。それに今先ほど申し上げた、慣れの問題。
    などと……、一見すると能天気に話を進めているようで、様々な工夫がみられるのが本作の強みなのかなあって改めて思ったりします。表立ったセールスポイントとして打ち出してもいいと思うんですけどね。

    あと話は変わりますが、今回はお祭り巻ということもあって、背景で騒いでるメイドカフェの店員たちやクラスの面々に妙に自己主張の激しいモブキャラが散見されます。背景に手を抜いていませんね。
    彼ら彼女らは現状その他大勢以上の扱いはされていませんが、妙な存在感があることもまた事実です。

    たとえば、天野くんにあからさまに好意を寄せているめっちゃ目立っているクラスメートのツインテモブが登場したりもします。しかして彼女は合間の註でモブと断言されているのが微妙にツボりました。
    まぁ、この作品の主題はTSなのでそちらの脇道に寄れてもらうのは困るんですけどね。

    ひょっとしたらツインテモブの彼女と限らず、巻と出番を重ねていくたびに扱いが向上していってサブキャラの一角に名を連ねる人がこっそり登場してくるのかもしれません。そうでないのかもしれません。

    以上。
    雪緒をはじめとするキャラクターの芯が固まったのと合わせ、四巻になって一層いい味が出てきました。
    周囲のにぎやかし役も存在感を出してきました。面白さも増してきました。
    ハイテンション・コメディとしてボルテージ上げてきて、軌道に乗ったなと感じました。

    あと本文では触れませんでしたが、二巻から登場した翼くんをはじめとした面々もしっかり顔を出します。悪気のない天然爆弾発言で空回りする相方の百合子ちゃんを振り回す彼(彼女)は罪な存在ですね。
    三巻のレビューで触れた通り、彼(彼女)も物語を牽引するひとつの軸と考えれば納得ですが。

    すなわち、それぞれの思惑と原理に基づいて行動するキャラが多いからこそ説得力がある。
    けれども、人間なのでテキトーで能天気なことを言ったりやったりしてゆらぎやブレがあるから面白いということなのかもしれません。それから性別が変わろうとかわいいものはかわいい。
    もしくは別の魅力があるのだとこっそり示唆されていたのも、実に心憎いところでありました。

    それでは最後に、表紙を飾る夏希について二言、三言述べてから五巻に向かおうと思います。
    まずは、夏希が一巻時点で動いたらこの話ははじまる前に終わっていたことはほぼ確定だったと思うので、彼女が裏方に徹してくれたことに感謝です。この巻でもお膳立てに動いてくれましたし。

    けれど、彼女が本格的に動き出して、雪緒との間で天野くんを巡る恋の戦いを繰り広げる姿を見てみたくないか? と問われれば見たいの一択でもあるわけですよ。

    最終的には三人の幼馴染の間で決着を着けるのがクライマックスに向けたアプローチなのではと予想する次第です。もっとも事態は読者の感想に合わせて、いくらでも自在に推移できそうですが。
    原作者の技量ならば別のプロットが立てられそうですし、それもそれで面白いのかもしれませんね。

    と。なにはともあれ。読者の皆様はぜひとも雪緒に目をお向けになって、彼(彼女)が一区切りを迎える六巻まで、まずはお付き合いくださいませ。
    七巻から新境地を示すと先んじてレビューで申し上げましたが、一旦の帰結もまた、大切なのですから。

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