転生魔女は滅びを告げる 5 (フロース コミック)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046816450

作品紹介・あらすじ

火のドラゴンの王・ギデオンを魔法の鎖から解放し、皇帝アイザックの挑発的な行動の真意を知ったセナ。
キースが詠み手の力を引き出す「伴い手(ステアラー)」であることも明らかになり、
今後の身の振り方について思いを馳せるなか、水のドラゴンの王・シーリィーンの召喚に応じ
内乱が起きつつあるシエプラ王国へと向かう。

感想・レビュー・書評

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  • 4巻は色々粗が気になってしまいましたが、5巻はセナちゃんが何をすべきかや、この作品の世界観などがわかってきたかも、と思えて面白かったです。
    見どころとしては、なんといってもヒカルの碁の塔矢アキラくん以来(?笑)のおかっぱ美少年エドゥアルドがかわいい!(笑)。
    シーリィーンがなぜそれほどまでにラムベルト王を慕っているのかがわからず、何かエピソードがあると更によかったかなとは思いますが、離島でエドゥアルドと思い出話をして心を通じ合わせることができてよかったです。
    思い出の地というだけでなく、離島という場所が王宮から離れているからこそ、魔法装置(マジバイス)がドラゴンに干渉しているのでは?シーリィーンの不安定さの原因だったのでは?と気がつくという展開は、おおー!と思いました。
    セナちゃんはドラゴンに寄り添い、導く存在として成長しつつありますね。キースはセナちゃんの力になれてると思うから、そんな焦らなくていいと思うんだけどな。でもめっちゃセナちゃんのこと意識しててカワイイですね(笑)。今回エドゥアルドと仲良くなれたし、アイザックも魔法装置がやべーことに気づいて今後も協力してくれそうな展開がありそうだし、王族、がんばって〜。あーでも、フォンドナやシエプラがドラゴンと共生しているのに(シエプラは今回危なかったけど)、べクラールはドラゴンを退治しようとしてたのは、どうにも残念ですね。(あれって暴れたのが老いたドラゴンだから、だったのかな?リシュカルに対してはどうだったんだろ)
    5巻までで風、火、水のドラゴンが出てきて、残るは土、雷、光、闇、ですかね?
    光と闇のドラゴンやばそう。
    作品のテーマとして、ドラゴン=自然?と人間との共存や、ドラゴンを干渉・支配しようとしている魔法装置(現代でいうと行き過ぎた科学文明?)を操る何者かと対決することになるのでは、みたいな構図が見えてきたように思います。個人的には、セナちゃんのお母さんが魔法道具の扱いに長けていた、というのがどうにも気になるところです。(関係あるのかな…?)
    5巻まとめ買いしてから、ピクシブコミックでも読めるじゃん!と気がつきましたが、エピソードEXのピアスの話は単行本描き下ろしなんですね。
    アイザックとギデオンの関係、いいですね。書き忘れてましたが、3巻オマケのNGシーン2も面白かったです(笑)。

  • 海原は、激情と狂気を溶かし込む、愛情と安寧も抱え込む。

    水、ひいては母なる海を象徴する属性です。
    母性は包み込む一方で、過ぎれば支配欲に転じるものなのかもしれません。
    そういった危惧とは無縁と思いたい今日この頃ですが、道を踏み外したものに引導を渡す手段を本作の主人公は有しているわけで――、けれど抜かずの宝刀こそが最上なのかもしれません。

    いいえ、思わせぶりはよしますか。
    『転生魔女は滅びを告げる』五巻のレビューをネタバレ込みでお送りしますね。

    転生者とは異世界から転がり込んできた「まれびと」、つまるところは中立の第三者として位置づけられるのかな? と今更ながらに思いつつ。
    タイトルこそ物騒ながら、現状はお悩み相談からのカウンセリングといった感じで話が推移しています。

    主人公が向き合う相手はきっと、この世界において重きをなす七種のドラゴンの王たちです。
    その間を調停者として巡る、主人公「セナ」の出会った王はみっつめを数えました。風の次は火、火の次は水のドラゴン、彼女たちが静謐の中に激流を秘めた大海原を巡る国にやってきたわけです。

    公式にアナウンスされているわけではありませんが国々を巡るたびに、各章が二巻ペースの新章に突入すると考えれば、三ヶ国目となる五巻は必定「第三章」といえるでしょうか。
    長命であり国を揺るがす力と、国の威信を背負うドラゴンの王たちも、超然としているようで人と変わらない「弱さ」と「強さ」を有していることに読者も主人公も段々気づいてきた今日この頃です。

    ただ……、まぁ本題に入る前に少々愚痴を申し上げておきますか。
    なんというか、ここまでの流れを振り返ると各国の思惑というには毎回グダグダだったと思います。
    陰謀というには稚拙でしかなかったり、扱いきれていないキャラがいたり、変なところでテンポを損なったりと、前章のフォンドナ帝国編で話に瑕疵がついた感はあります。

    ただし新章突入に伴って仕切り直しに成功していると思います。
    さすがにここから読み始めるのは厳しくなってきた感もあるので作品全体の紹介も省かせていただきますがここは心機一転、登場人物の心境の整理に踏み切って新展開に臨む、大海原のように拓けた章です。

    詳しい事情は全く存じ上げませんが、最近は隔月ペースの連載となっていますし、ここからはじっくり話を練られるのもいいかもしれません。巻数も重ねてきて読者としても話を振り返る余地もありますし。

    いずれにせよ、最終的にどこに辿り着くかは抜きにしても話を動かすための「指針」が見えてきました。
    この場合は先の章で登場した「魔法装置(マジバイス)」という、この物語の焦点であるドラゴンを狙って狂わせる、害するファクターに注目していくことになりそうです。

    ああそれと余談ですが、先の章で取り上げられた火のドラゴンを擁する「フォンドナ帝国」についてこの巻でも幕間が挿入されています。何十年前に繋がれた鎖の出どころの件で、なんで今更強面になって恫喝外交やるねん、って突っ込みたくなります。もちろん今後の説明次第ですが。
    すみませんこれも愚痴ですね。話は動いているのでこの辺は目をつむれる範疇かなと思います。

    ひるがえって、水のドラゴンを擁する「シエプラ王国」編の構図は至ってシンプルです。
    王位簒奪を狙う大貴族が幼い継承者を狙って政変を仕掛ける。並行して障害になる、水のドラゴンの王「シーリィーン」とその眷属を狂わせ、自害に追い込む、次善の策で離間工作を行う、というものです。

    表に出ている簒奪者はまだ思惑を隠しているのかも知れませんが、それ抜きでもマジバイスを影で流通させている何者かの尻尾とは言わずとも影を踏むことができれば次の展開に繋げていけます。
    一見無関係に見えた事件が結ばれていくのは王道ですが、燃える構成だと思います。

    ちなみに簒奪者の事情については語られていますが、正直舞台装置といった印象は抜けきれていません。
    仰々しい芝居がかったセリフが記憶に残りましたが、章刻みの小ボスとしては十分でも話を進めるための対抗軸として力不足でしょうか。先に申し上げた背後関係次第といったところで。

    残るドラゴンの王を考えると、次で疑惑が確信に変わり、全員と友誼を結んだ後に何者かと決戦を挑むというプロットが見えてきた気がします。
    もちろん別のラインで考えているのかも知れませんが、今後何かが起こるのは確定でしょう。

    などと……、かすりもしない未来予想は置いておいて、この巻のハイライトは「無人島の休日」です。
    緊迫した状況下から偶発的に生まれてしまった空白の時間帯といった感じなので、水着姿でキャッキャウフフとかいうシチュエーションではありませんが、クールダウンが図れた上手い幕間だったと思います。

    よく考えなくてもおかしくなっている、シーリィーンの頭を冷やす。
    父王を失って、傷心の王位継承者「エドゥアルド」に在りし日の思い出を語らせて、家族ぐるみでの付き合いを思い起こさせる。双方に決意を促し、覚悟を決める。
    水のドラゴンの人との寄り添い方を示しながら、心情の演出を合致させた妙手だと思います。

    状況的にはシエプラ王国のふたりが主で、主人公たちは添え物といった感じですが、河岸を変えてあえて見守るだけという解決法も悪くないです。
    主人公もいい意味で動じなくなっていますし、これもこれで確かな成長だと思うところです。

    また、その一方で主人公セナの全編を通じてのパートナーである「キース」も単身で第三国に飛ばされ、二転三転する状況に翻弄されたこともあって、無力感を抱えて気が急く一幕もあります。
    正直に申し上げると、ここまでのキースは話の本筋に大した力もないのに出しゃばってきた感がありました。訳知り顔な彼は傲慢に思えあまり魅力的ではありませんでした。もちろん私見に過ぎないのですが。

    ただ、事態の進展からは微妙に外れて、主人公のために何をすべきか? という純粋な願いに駆り立てられる様は年頃の、等身大な少年らしさが見て取れて大変に好感が持てました。
    エドゥアルドという年が近く、政治をわかっていて悩みを共有できる対等の友人ができたのも大きい。

    すなわちキャラクターがまっすぐな形で掘り下げられ、今後の展開にも絡めそうな話の通じる協力者が現れてくれたので問題なく話を進められそうです。
    作品全体の話の縦軸と、各章のエピソードという横軸、加えていい意味で動じない主人公の基準点がすっとした線で結ばれたといいましょうか。

    登場人物は最小限でしたが、だからこそそれぞれがこれから自分がすべき役回りを自覚して決戦パートに挑む! といった風に話が軽快に回っていたので、軌道修正に成功したなと思う次第です。
    これが放物線なら落ちるだけかもしれませんが、彼女たちの心と体と物語はきっと波のようにうねってくれるでしょうし、最後は凪のように平和であってくれるでしょうから。

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