転生魔女は滅びを告げる 6 (フロース コミック)

  • KADOKAWA
3.22
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046826305

作品紹介・あらすじ

王位簒奪を目論むミッケロの手引きにより、水のドラゴンが暴走。
シエプラ王国の内乱はいっそう拡大する。
戦況を一変させる逆転の一手は――?

キースの求めに応じて、セナが新たな天の魔法を閃く!

感想・レビュー・書評

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  • 水と炎、相克するふたつが織りなすセレモニー、風がいただいていくハーモニー。

    先に申し上げておくと、こちらのレビューは六巻単独の感想をネタバレ込みで好き勝手に書き連ねていったものです。作品内容を知る上ではあまり参考にならないので五巻までのレビューからご照覧くださいませ。
    当たり前かもしれませんが、六巻から読み始める方はなかなかいらっしゃらないと思うので注進しました。
    なお、本作が王道に則っていることは事実です。そのことを堅実と取るか、地味と取るかはその人次第です。

    それはそうと、ここに至るまでには展開がたわんだあげく、好印象が中折れしてしまった章もありました。
    五巻からは気を取り直して水のドラゴンを擁する「シエプラ王国」編が開幕し、続く六巻にて円満終了です。
    若き新王を迎えた国に問題は山積ですが、やっとハッピーエンドらしいハッピーエンドがやってきて一息つけ
    たのではないでしょうか。今までは水入りですっきりしないまま次に行く展開が多かっただけに。

    刊行ペースが作画担当の「sora」先生のスケジュールもあってか、ほぼ隔月更新の年一回になっているのが痛いところですが、その分余裕が生まれたためかストーリー面でのクオリティはほぼ持ち直したと思います。
    ビジュアルは言うまでもなく終始安定しており、流麗な装飾の線とドラゴンがもたらす超ド級の破壊描写を両立されている点には特に目を見張りました。中でも山脈のように座す巨竜と炎の描写は実に圧巻でした。

    ただ、シエプラ王国での反乱の首謀者の真意と背景にあるものを含め、ストーリー上明かされるべき謎の開示は進みませんでした。その辺は続刊に期待ですね。言うなら、この六巻はひとやすみのターンなので。
    今後は表に立ち独自に動く主人公たちの邪魔をせず、国同士の暗闘など裏側のストーリーラインを上手くまとめられればさらに評価が上向くかもしれません。今後、表と裏が合流するタイミングもあるでしょうし。

    話を戻すと、国を救う立役者になった主人公「セナ」は無茶し過ぎたので一回休みで母国に逆戻りです。
    正確にはセナに懸想を寄せる風のドラゴンの王「リシュカル」が紳士的に連れ帰ったという形でしたが。
    ひるがえって、セナのことを公私ともどもに支える立場にありながら、結果だけみればわりと散々な目に遭わせてきた王子「キース」に対してリシュカルは怒り心頭でした。ガッツを認めて同行は認めましたが。

    続いてキースは改まってのリシュカルとの交流の中でドラゴンと人の間の隔たった価値観を埋めつつ、事実上の恋敵でもある彼を見据えて、力がほしいと教えを乞うべく頭を下げます。
    リシュカルはそれを弱者のたわ言として怒り、突っぱねながらもやはり気概は認めます。

    その一方、そのように心躍る男たちの意地の張り合いをよそにセナは休養に努め、そのさなかでここまで強行軍ばかりで知る術がなかったドラゴンの王たちの人となりや関係性を知ります。困惑しつつも心は和みます。
    今回は間章的なエピソードが過半を占めて、日常パートが多めということもありました。ゆえに漫画らしい緩急の取り方やゆるいやり取りが冴えに冴え、大変に面白かったとも申し上げておきましょう。

    特にザ・マイペースな寡黙な巨人を素で行く火のドラゴンの王「ギデオン」がなかなかにいい味を出していました。こういうキャラの掘り下げは後々を考えれば必須なのかもしれませんが、きちんと飽きさせないよう工夫されていました。もう一度言いますが大変に面白かった。今までの巻で一番好きかもしれません。

    それと、新展開を迎える準備は万端ですね。
    主人公たちはここまで矢継ぎ早に国を渡っては、国とその守護者たるドラゴンに関する問題を息つく暇なく解決してきました。前章で取りこぼしたフォローも兼ねて休息期間を設けるのは悪くない判断でしょう。
    「シエプラ王国」編開始に当たっていきなり海外に渡る羽目になって、終了後このまま次の国に行くことになっていたら母国置き去りでどうしようと思っていただけに嬉しい誤算でした。

    話は変わりますが、次巻はドラゴン関係の情勢を為政者の立ち位置から再確認するパートもあるようです。
    時間はかかりましたが、ようやくといえます。
    ようやく最低限の役者が出揃い、基本に続く応用ともいえる本番のストーリーが始まるのかもしれません。

    付随してここからの本筋に絡める役者としては主人公のセナを筆頭に、ドラゴンの王たちと大国の王たちがまず挙げられると思うのですが、その列に改めてキースが加わると思うと胸に熱が宿ってしまうようです。

    キースに関しては三巻辺りからの無理な持ち上げが鼻についたとみるや、五巻からは未熟さを強調してからの成長を演出する方に舵を切ったのは、王道というヤツで好きですね。
    魅力的なヒロインに並び立てるヒーローになるにはまだ力不足かもしれませんが、応援していけそうです。

    他方で序盤で登場したきりのキースの臣下たちは本筋から振り落とされそうですが、それも仕方ないかなってところでしょうか。もちろん予想を裏切るに越したことはないんですが、現状では望み薄かもしれません。

    私が思うに七巻からはお国事情やドラゴン同士の関係性、不仲からの衝突やら葛藤やら和解やら友情やらが世界情勢を絡める形で描かれることになるのかもしれませんが、そうとも限らないといったところです。
    いずれにせよ、新たなるドラゴンの王とそこに紐づく国・地域の登場は見込めそうですけどね。

    以上、当たらない可能性が高い今後への予想と、期待感を込みでの星五つでした。
    連載が続いて七巻が出るのならその時はその時改めて評価をつけるまでのことなので、どうか承知ください。

    いささか辛辣な物言いでしょうか? ここまで通しで読んできてようやく満を持してお勧めできたのです。
    待たされたことへの憤慨をわずかに込めて、少し険のある意見を加えたのですよ。
    ……とはいえ、ご不快に思われたなら申し訳ありません。

    さて、そんなこんなで風、火、水などと作品世界の七大属性を各々象徴するドラゴンの王たちとの出会いと、そこからの問題の解決を図ってきた王道ファンタジーも六巻目です。

    残る王たちは大地、雷、闇、光の計四体です。すなわち、そろそろ折り返し地点に差し掛かるわけですよ。
    次の七巻こそがこの作品の将来を占う上での正念場になりそうですが、最初から長丁場になることが義務付けられたこの作品、できることなら最後まで見届けたくなりますね。

    過去に傷つき、一歩踏み出すことを恐れて、でもたった今この時のため、誰かのために懸命になれる主人公に絆され、彼女なりの言葉を紡ぐその切ない姿に惹かれてしまった時点で私の負けでしたから。
    セナを応援したくなるその気持ちだけは揺るがないと、いち読者として私はそう思い続けていますよ。

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