- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047021396
作品紹介・あらすじ
四〇〇字詰め原稿用紙にしてわずか四〇枚ほどの『おくのほそ道』はどういう点で日本を代表する名作といえるのか。それを探るために、文学としてのアプローチをはじめ、史学・民俗学・宗教学・認知科学などの成果を取り入れ、漂泊観・文学空間をキーワードに広く文化史的にこの作品を分析する。連句の展開との相似という視点では"曖昧の美学"の追究、"意味の焦点"の連続性を提示し、外国文学や映像文化などとの比較文化論の観点からは"漂泊遍歴民"ではない"遍歴遊行民"としての芭蕉を浮き彫りにするなど、さまざまな方法を通して、『おくのほそ道』は日本人の精神の基本にかかわる言語空間である、ということを明らかにする。
感想・レビュー・書評
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松尾芭蕉の『おくのほそ道』にかんする論考を収録しています。
本書は二部構成になっており、「『おくのほそ道』と日本文化論」と題された第一部では、『おくのほそ道』そのものについて論じられているのに対して、「比較文化論の視点から」と題された第二部では、『おくのほそ道』とアンデルセン、朝鮮の放浪詩人である金笠の比較、さらに矢口高雄による『おくのほそ道』のマンガ作品についての考察がおこなわれています。
『おくのほそ道』そのものを論じた第一部にかんしても、「『おくのほそ道』を、単に文学的にとらえるのではなく、広く文化史的にとらえ、史学、民俗学、宗教学、認知科学など、他分野の研究成果をも取り入れて考察した論考である」と著者自身が述べているように、かならずしも『おくのほそ道』の内在的な分析とはいえないような議論が見られます。全体をとおして、『おくのほそ道』になんらかの意味で関係する多様なテーマをとりあつかっているという印象があり、エッセイのような感じで読むことのできる内容に感じられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示