魔除けの民俗学 家・道具・災害の俗信 (角川選書 623)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047036796

作品紹介・あらすじ

「異常豊漁は地震の前兆」「庭の南天は災いを避ける」――。わたしたちの身辺でとりざたされる俗信には、災厄の予兆を感知し、日々の不安を除く生活の知と技がこめられている。さりげない日常に息づいた、庶民の想像力と心のくせが凝縮した言い伝えといえるだろう。家屋敷、生活道具、自然災害にまつわる膨大な俗信資料を整理し、悪霊・境界・流言などについて、伝承の背後に広がる民俗世界とその意味をさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • 民俗学者で学校の怪談の父でもある常光徹さんの著書をついに読む。
    なんどもAmazonでおすすめに出てきた「魔除けの民俗学」だ。
    読んでみると、角川選書なので当たり前かもしれないが、とても学術的な文章なので、読むのに時間がかかるところもしばしば。
    多くは要約を解説してくれているけど、昔の言葉や漢文は今もあまり慣れない…。

    魔除け、縁起が悪い/良いことを、とことん掘り下げて考察を丁寧にくわえている。
    共通することは、「境界」。
    家のウチとソト だけでなく、屋根、棟、囲炉裏の鉤、井戸
    箒、蓑、鍋蓋、柄杓は、死と生誕が隣り合っており、やり方だけが違う。どちらも人間の生の世界と死のあの世の境目から引き出したり引き戻したりする役割と見られていたようだ。
    俗信は、それだけでは「カラスがなくと死人が出る」などなんの根拠もない迷信で終わってしまうが、掘り下げていくと基盤となる信仰や暮らし、習俗が横たわっている。この重要性にいち早く気づいた柳田國男先生を改めて尊敬する。

    最後に、地名にあまり詳しくないので時々地図を見ながら読むのだが、旧地名と現在の地名が併記されているのは非常にありがたい。

  • “自分の誕生と自分の死は、生命体としての時間の始まり(誕生)と終わり(死)、つまり時間的境界である。また、その時は非社会的存在(霊的存在)から社会的存在へ、社会的存在から非社会的存在への移行の境界でもあり、物体から霊的存在への移行の境界でもある。”『魔除けの民俗学』13頁

    わたしも覚えてないけど霊的存在だったしこれから霊的存在になれるんだ!って思ったらなんかずっと生きてた気持ちになってきた。

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    家の章読んで、家の外のことすぐあの世と見做してるんだな〜棟とか屋根とか軒とか縁側とか雨落ちとか、うちとそとの境界がいっぱいあってほんとに家の中が安心できる場所なんだなって思った。

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    “子どもの額に鍋墨をつけるのは、通常は悪霊を寄せつけないためだが、クルマゴや病弱で死んだ子につけるのは、再び生まれてくるのを阻止する狙い、つまり、連続する不運や病弱を封じ込めて再発を止めるためといってよい。”(187頁)

    悲しい。再び生まれてきてくれよ。

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    “三ツ子に杓でなぐられると死ぬ(福井県小浜市)”(212頁)

    一番おもしろかった迷信

  • はじめにー俗信と魔除け

    Ⅰ 家屋敷と俗信
    第1章 生死と境界の空間―屋根と床下
    第2章 植物と家の盛衰―庭木の吉凶
    第3章 他界への出入り口―井戸

    Ⅱ 生活道具と俗信
    第1章 人生の節目を表象―箒
    第2章 祓う・拒む・鎮める―箕
    第3章 禁忌と魔除けの呪具―鍋
    第4章 欺く・招く・乞う―柄杓

    Ⅲ 災害と俗信
    第1章 地震と唱え言
    第2章 幕末土佐の人と動物―『真覚寺日記』から

    初出一覧
    おわりに

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著者プロフィール

1948年、高知県生まれ。国学院大学卒業。民俗・口承文芸を研究。著書に『学校の怪談』(ミネルヴァ書房)、共編著に『三右衛門話──能登の昔話』(桜楓社)、『日本伝説体系』第5巻(みずうみ書房)、『昔話・伝説小辞典』(みずうみ書房)、『ガイドブック日本の民話』(講談社)他。

「1993年 『土佐の世間話 今朝道爺異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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