ノエルの方舟 ある日、悪い旅人がやってきた。 (ビーズログ文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047272699

作品紹介・あらすじ

両親から受け継いだ酒場をひとりで切り盛りするノエル。ある日彼女の店に現れた、見知らぬ男-旅の楽士を名乗るライカは、堂々と無銭飲食したあげく、容姿をからかってくるイジワル男(でも超美形)!その上、ノエルが伝説の国"エイダ"の賢姫の末裔だと決めつけ、強引に村から連れ出そうとする。全然信用できない…だけど彼の真剣な眼差しに、ノエルの心は乱されて-!?あやしすぎる彼の正体は一体?夜明けの色の瞳と髪の秘密が明かされたとき、(方舟)を求めた運命の物語が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • “「はぁ——っ!?」
    ノエルは反射的に身を引いた。近い。顔が近い。
    ロンがしらけた目をライカに向けた。
    「ライカ、それじゃ意味がずいぶん違っちゃうよ」
    「何が。一緒に来てくれって言ってるだけだ」
    「ごめんね、ノエルちゃん」
    ロンが心底からすまなそうに言うので、
    「ううん、大丈夫、慣れてきたかも」
    そんな返答がノエルの口から自然とこぼれて、ライカをむっとさせた。
    「ちょっと待て、ロン。勝手に俺の代わりに謝るな」
    「はーよかった。ライカは誤解されやすいから」
    「よくない!何に慣れたって?おい、ノエル」
    ライカが不満そうに声を荒げた。
    ノエルは目を伏せて答えなかった。
    混乱していたというのはもちろんだが、それ以上に、拗ねていたのだ。
    いきなり現れて、いとも簡単にノエルの心と平和な生活をかき乱した赤毛の青年。彼を、そして彼がもたらした物事を、素直にまるごと受け入れる気になんてなれるものだろうか。
    「とにかくノエル、俺と——」
    「もういい。わかった」
    「いや、もういいじゃなくて」
    「少し考えさせて」
    ノエルは立ち上がり、ふらふらと酒場を出ていった。”

    なんかテンポ早いなぁと思ったり。
    紫の髪と瞳が珍しいって言ってるけどライカの瞳も紫色じゃないの?
    続き出るかなー。
    ロンが楽しい。

    “「ねえ、ライカ」
    「なんだよ」
    「わたし、あなたを信じていいの?」
    「おまえが決めろ」
    ライカはそっけなく言った。
    ノエルは瞳を閉じた。短いけれど濃密だった冒険の記憶を、ひとつひとつ思い出す。愉快なことも、胸が痛むことも、全部。
    ロンが、ユーゴが、アルマが見守る中——
    ノエルは、ライカに<方舟>を手渡した。
    「いいのか」
    ライカは意外そうに目を見開く。この期に及んで、気弱とすら言える問いかけだった。
    ノエルはくすりと笑ってしまった。
    「なんだよ」
    「だって、このためにライカは来たんでしょう。こんな西の辺境地まで」
    そう。旅の楽士は世を忍ぶ仮の姿。ライカは学術都市国家シンファラから<方舟>の調査のために派遣された学者。それだけのことなのだと、ノエルは改めて自分に思い込ませた。”

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