石精綺譚 (ビームコミックス)

著者 :
  • KADOKAWA/エンターブレイン
3.47
  • (2)
  • (4)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 60
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047299733

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • まず、最初に言いたいっつーか、原先生と漫画誌ハルタの編集部に対し、訴えたいのは、この『石精綺譚』、一冊で終わっちゃったらダメですよ!
    もちろん、現在進行形で連載している『でこぼこガーリッシュ ストーリー編』も単行本が出るのは、心の底から楽しみですし、待ち遠しいですよ。けど、こんなイイ作品の続きが読めないなんて、キツすぎるっっ 『凸凹』が無事かつ円満に終わってからでも構わないので(いや、欲を言えば、今すぐにでも他の漫画誌で描いて欲しいくらいなんですが)、執筆を再開して欲しいっす
    では、何とか、落ち着きを取り戻したところで、『石精綺譚』自体の感想をば
    驚いた、と言うのが大きい作品
    私は『でこぼこガーリッシュ』で原鮎美先生を知ったので、先生の得手は現実系のコメディだと思っていた。だからこそ、余計に、他の読み手より、この作品に溢れ、なおかつ、浮ついていないファンタジー感にはギョッとさせられた
    メデューサ然り、コカトリス然り、ファンタジー世界には、相手を見ただけで石に変える怪物が多い
    そんな石化の異能を持って生まれてしまった人間の少年を、ストーリーの主役に据えるとは、原先生、恐るべし
    主人公のフィーカが、自分の普通の人にはない力と、その象徴である己の瞳を恐れつつも、異常な自分を自然に受け入れてくれる人々と、それまで以上に絆を深め、人間的にも異能者としても成長していく、丁寧に練り込まれたストーリーは程好い温かさに満ちているので、かなり読み応えがある
    また、原先生らしい、少年少女らの青春真っ盛り感を強く感じる、コメディ要素も盛り込んでいるから、私と同じで『凸凹』から入った人も楽しめるだろう
    加えて、他の生物を石に変えて喰らう石精らが、人々に単純に恐れられるだけでなく、生活を支える上で必要な存在として、職人らに感謝されているって設定も面白く感じられた。石精らの姿形も結構、剽軽で愛嬌もあるのではなかろうか?
    人は一人じゃ生きられない、どんな自分でも受け入れてくれる人が多ければ多いほど、人はいつまでも成長できる、そう感じさせてくれる優しい話だった
    お勧めの話は、フィーカがそれまでひた隠しにし、自己嫌悪にすら襲われていた石化眼を、何かを傷つける為でなく、家族を守るために全力で使う事を決意し、そして、本音をぶちまけるepisode2『銀のフィーカ(後編)』だ。もちろん、他の話もグッと来るものばかりなので、ハズレはない
    この台詞を引用に選んだのは、年長者特有の、若い人間だからこそ納得できる重みがあったから。助けたい、と思っていても、人は万能じゃないから、何に対して苦しんでいるのか、を当人に教えてもらわないと、どうしようも出来ない。もし、自分が悩んだ時は、恥ずかしいと思っても、素直に言葉を出して助けを求めよう、と思った

全1件中 1 - 1件を表示

原鮎美の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×