- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047914889
感想・レビュー・書評
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16世紀、ローマ教皇レオ十世の側近が綴った手記という形をとっている歴史フィクション。
前半は、側近ペッペの生い立ちから異端の協議グノーシスとの出会い、洗礼の儀式などが語られる。
物議をかもす内容らしく、なるほど。饗宴での乱れたお遊びは享楽的だし、グノーシスの儀式の様子はまあ淫靡だ。
後半は彼の目から見たレオ十世や、教会とイタリアを取り巻く歴史などが語られる。贖宥状やルター、フランスとの対立など。
下品でしょうもない冗談を交えた教皇との会話は全然崇高じゃなくて、砕けた口調で語られる歴史もすいすい入ってくる。
印象的だった決闘の場面の狂気は、なんていうか、理解出来るとか出来ないとかの観点で読むものじゃないなと思った。私の思考を超越している。
宗教って果てしないなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ページ数だけ見るとすぐ読めるかと手に取ってみたら、二段組だった。いろんな意味で刺激が強く、よく出版できたなと思うが、面白かった。グノーシス主義に傾倒した小人がつづる16世紀ヨーロッパの腐敗した様子がすごい。猥雑で暴力的、やってることは似たり寄ったりなのに、自分の信じるものを光としてお互い大真面目に相手を批判するというのは、滑稽で哀れで、ある種の羨ましさすら感じた。また、小人の語りが巧みなおかげで、主要人物がみな魅力的に見えた。特にレオへの愛はよく伝わってきて、最後のほうは不本意にも目頭が熱くなった……気がしないでもない(苦笑)。
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グノーシス主義、異端審問、人文主義、ルネサンスといった、知性が矛盾をはらみながらも猛烈に発展した時代を描写した問題作。矛盾は醜さや、汚い言葉、性的倒錯、毒や殺人に現れ、あくの強い描写は、一方で現代的でエンターテイメントとして優れている。
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薔薇
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いやあ、凄い本だった。
題の通り、グノーシス派の人の手記(?)なのですが・・・主人公がグノーシス派に転がるのはとても自然。
そうか、体は悪魔が作ったのか・・・この世は地獄なのか・・・
(彼は小人、つまり障害で生まれつき体が捩れていたのです)
肉とそこからくる欲望=性欲を徹底的に否定するため行われる儀式は物凄く淫靡です。
人間て怖い。
なんだかんだ言って、私利私欲、自分の信条のもと生きてるんだなあ。と思いました。
拷問怖い。
貴族も怖い。
以前読んだ『フロイトの函』は若干不条理でコミカルな要素があったけど、今回は不条理のみ・・・!
でも理路整然としてるのはこちらなので、どっちがおすすめとも言い難い。
うん、これもそりゃあ「問題作」って言われるわ(笑) -
残酷で豪華で猥雑で…一言では表現出来ない本でした。
教皇の側近であるせむしのペッペの手記と言う形態で下町の乱雑さからグノーシスの秘儀からヴァチカンの乱れきった内情から…イタリア半島の様々な姿が書き出されていました。
かなりキツイ表現や毒が含まれていますが面白かったです。
しかし表紙の原題と邦題の違いが酷過ぎ…。 -
小人のピッピが見たグノーシスの教えとルネサンス文化の醜悪と絢爛豪華な世界。
カニバリストの告白で同著者を知り、面白かったので作品を読んでみたのですがこれまた醜悪で行き過ぎた耽美で低俗で絢爛豪華でした。
特に今作はルネサンス文化が花開いていた時代ということもあり耽美さと醜悪さにも輪がかかっています。
美しいものと醜いものの差がはっきりとあるのにそれらが上手い具合に混ざりあっているのがおもしろいです。
個人的には最後のほうの決闘?シーンよりも貴族のパーティーシーンが怖くて怖くてたまりません。
別に怖いシーンじゃなくてむしろ官能的なんだろうけれどなんだか怖いです。
快楽に溺れた人間はなんだか倒錯しているくせに鬼気迫っていて怖い。 -
ルネサンスの都イタリア、ローマ。教皇庁に紛れ込んだ一人の異形の小人、ぺっぺ。彼が語るキリスト教の頂点の暗部と、反発する異端の教えグノーシス派の中で行われる目を背けたくなる血なまぐさく美しく下品で恐ろしい秘密の教義…むぅ…なんと言えばいいのだろう。美食、男色、異形愛、暴力、破滅、そして至高の教え。こんなにすさまじい世界がほかにあるだろうか。しかし、ここまで反キリスト的な小説をよく出版できたものだ。読み終わって気づいた。この作家って『フロイトの函』を書いた人ではないか。そうか、なんとなく納得だ。
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面白かったです!世界史マニアにはたまんないお話でした。16世紀ごろのローマはこんなに乱れてたのか!ってビビったけど、それ抜きでも十分楽しめました。ペッペの愛に感動です♪
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宗教改革のルターを破門した教皇の側近の手記という形。話の雰囲気的には結構好きだが、少々下品である(笑)。