電気サーカス

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
4.29
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本棚登録 : 114
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048660662

作品紹介・あらすじ

まだ高速デジタル回線も24時間接続も普及しておらず、皆が電話回線とテレホーダイを使ってインターネットに接続していた時代。個人サイトで自己表現を試みる若者達がいた-。

感想・レビュー・書評

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  • Twitterのフォロワーにすすめてもらって。
    まだ今のようなSMSでつながるのではなく、テキストサイトというシンプルな日記を通じてネットの友人と知り合っていた時代。パソコンの使い方すらほとんど浸透していない社会で、人付き合いの苦手なもの同士が身を寄せ合うネットの世界での絆は、もしかしたら今よりよっぽど強固だったのかもしれない。
    土地持ちの母親がいる主人公・水屋口は、家業の居酒屋を畳んでからというもの、ぬるいカラオケのバイトに出勤するだけの無為の日々を送っている。
    ひょんなことからテキストサイトの仲間を集めて花園シャトーというシェアハウスをつくることとなり、さらにカラオケバイトも辞めてしまい、ますます自堕落で退廃的な暮らしに。
    このシェアハウスができてからのストーリーがめちゃくちゃ面白かった。類は友を呼ぶというか、水屋口のさらにうえをいくような滅茶苦茶な人間がたくさんでてくるのだ。そして不登校メンヘラ中学生・真赤との出会いと、極めつけのデパスクッキー。
    みるみるうちに破滅的で不健全な共依存関係ができあがり、私たちは二人の身の行き着く先から目が離せなくなる。のろわばのろえ、ドブネズミ。
    ラストは賛否両論だろうか。私は(すすめてくれたフォロワーも)、彼らの夢のような現実がもう少しだけでも続けば、と思ってしまった。

    角田光代「東京ゲストハウス」と本谷由紀子「乱暴と待機」、李龍徳「死にたくなったら電話して」を混ぜあわせたような愉快な読み心地だった。

  • 切ない。
    つらい。
    どん底まで落ちていく感じがずっしりきた。
    一歩間違えたら自分もこうなってしまうかもしれないという怖さ。
    中盤ぐらいからどんどんひきこまれた。
    ギークハウス をみても思ったけどシェアハウス自体は楽しそう。
    一生独身だったらシェアハウスで老後過ごしたい。

  • 中毒的な莫大な心理描写 病態 退廃 絶望 空虚 依存 怠惰 が脳内に無限膨張し ゲシュタルト崩壊し 最期は最高の虚無感に帰還する

  • 人生って虚しい。そんな小説

  •  自分の少年時代を思い起こさせる少女と出会って、何とかしてあげたくて、入れ込みすぎて、結局お互いズブズブに溺れていく、ただそれだけの話。それだけなのに、なぜか厚い。どうしようもない日々の生活と自分の内面をつらつらと書き連ね、埋め立てていく。

     酒と薬物に逃避して、身体を壊して、そこそこ仕事は出来ても自分で自分を駄目にしていく。それでも彼女には何とか真っ当な人生をと願うこの的外れ感。
     
     思春期とはいえ問題児すぎる真赤に振り回されても、決して責めない、他でもない自分の責任としてあっさりと受け入れられてしまう主人公の在り方に何故だか心打たれてしまった。

    道化た享楽のツケを払い、そうしてまた、何はともあれ生きていかねばならない。それだけははっきりしている。

  • 要約するとテキストサイトメンヘラ集団の話になってしまって身も蓋もないんだけど、すらすら読める文体や心理描写が癖になる。

  •  唐辺さんは愉快な文章を書く。読んでるぼくも楽しい。薬とお酒でもうろうとしている中、真赤とタミさんがセックスしてるの見て主人公が泣き出すところが、堪らなく好き。

  • 大した展開があるわけでもなく半分くらいまで退屈しながら読んでいたのに、いつの間にか主人公に感情移入してぬるま湯気分に浸りながら読んでた。

  • PCをマイコンピューターと呼んでいた時代から触れてきて、この小説のダイアルアップ回線時代、テキストサイトなども懐かしく思いつつ読んだ。
    が、その当時のネット利用者がみんなこんな怠惰な生活を送っていたわけではない。
    社会に不適合とも言える青年と彼の周りの人々の退廃的な日常がただつらつらと綴られている。得るものはないが、興味深く読めた。
    あ、得るものは、自分はまともな人生を送ってこれたなとういう優越感だろうか。

  • 読了。仕事のせいで一週間くらいかけて読んでいたせいか、どうも体調がすぐれなかった。いや、僕の心身が脆弱なことをこの本に責任転嫁してはいけないだろう。そりゃ、そうだけれども。というわけで感想をば。とはいえ、僕は一体誰に語ろうとしているのだろうね? 僕のようにやけに自意識が肥大化してしまった主人公がネットを通じたゆるい共同体での出来事とその顛末、というと乱暴すぎるのだろうか。そんな筋よりも、主人公の語りが妙にしっくりきてしまって居心地がよくてまるで他人とは思えなかった。

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