ゴールデンタイム (8) 冬の旅 (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
3.83
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048664141

作品紹介・あらすじ

リンダと過ごした高校時代。卒業式の翌日の記憶喪失。そして大学での完璧な香子との出会い。以来、笑ったり悩んだりしながら、楽しく輝かしい大学生活を送ってきた万里。季節は秋、おまけんの活動の集大成でもある学園祭が迫っていた。しかし、それを目前にして万里の記憶に異変が起こり始める。その様子を目の当たりにした香子はある決意を固め、柳澤や千波、二次元くん、そしてリンダもそれぞれの想いのもと、行動する。みんなの関係と、香子と万里のままならない恋の行方は?竹宮ゆゆこ&駒都えーじが贈る青春ラブコメ、感動の完結!

感想・レビュー・書評

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  •  「ゴールデンタイム」本編最終章。

     駆け足感のある幕引きと構成は著者らしからぬ、とは言い過ぎか(色々事情があったのかも)。個人的には、万里の記憶回復過程の中で、喪失期間の想いが徐々に取り込まれていく展開を期待していたが、それでは尺が足りなさそう。「キャッツ・アイ」ラストと類似でないのは正解かな…。逆に、大学生のラブストーリー(本作はコメディではないと思う)なので、未来志向の別離ラストもありかなぁと思っていたが…。
     とはいえ、橋の上での2人の邂逅は、繊細かつ綺麗で、また実に香子らしい愛の告白は良かった。あの香子は万里がいなければどうしようもないことだけは明快。自分がカッコ悪いところも含めて、自然体でいられるのは万里の前だけ、自分の愚かさを笑って受けとめてくれるのは万里だけなのだ。そうなれば、彼の記憶が戻ろうが戻るまいが、香子は、大人の女として万里を追いかけるしかなかったとも。となれば、香子が追いかけるという本作結末もありかなぁ…。


     宮本輝著「春の夢」と比べると、主人公の性格や苦難の在り様はだいぶ違うが、苦難を乗り越える様は同質の明るさや良心を感じるところだ。しかし「青が散る」等の別離ラスト、文学少女シリーズ本編のような、未来志向の別離の方が是と感じる。それは彼らがもはや夢だけを見るわけにはいかぬ大人になったからで、これが本作の本作たる所以とも言えるのだ。たとえライトノベルのお約束を外しても…。
     なるほど著者のチャレンジ精神は、大学生間のコメディ薄めのラブストーリーという、ラノベの基本フォーマットから外れた作品を紡いだ点には発揮されたが、それは結末に及ぶまでは至らなかった。残念でもあるし、痛し痒し、香子のキャラ上は止むを得ない面もある。

     かように結末に些かの難を残しながらも、著者の更なるチャレンジを次作に期待させる内容であったのも確かだ。

  • 冒頭、静岡での万里。
    高校卒業直後に落ちた橋までジョギングして。
    そこでパーカーから 丸い小さな物 を落としてしまう。

    前回の続きの棒立ちの万里。
    駅にてずっと『別れ』を香子から切り出され動けない。
    時間が経って、香子の父が車で登場。
    助手席に万里を乗せ、万里のマンションまで送られる。
    が。
    降ろされてもエントランスで固まったまま。
    動けない万里を動かしたのはまたしもNANA先輩。
    万里に付き添って。聞き上手に聞いてくれる。
    カフェオレを買ったNANA先輩。
    お汁粉を見ずに引き当てた万里。
    その万里に『泣いとけ』と。
    お汁粉並みに甘いNANA先輩。

    香子と再び駅で出会う。
    父親を万里に差し向けた事を謝るが。
    万里はただ嬉しくて。
    授業を受け、休憩中に連れ立っていつも仲間でお茶。
    そこで香子は爆弾発言を炸裂させる。
     万里と別れた と。
    フラッシュバックして、錯乱している映像を見てしまったため、彼女なりの決断だった。
    香子は…別れたくないのが本音。
    ただ、自分を保つために別れを切り出すしかなかった。
    本当に忘れてくれたら『ただの友達』として。
    もし覚えていてくれたなら『一生傍にいる』と約束。

    ぎこちないままの二人。万里がおまけんの先輩に報告。
    その時、リンダと取っ組み合いのケンカ。
    それをやなに見られて、やなは万里を避ける。
    言いようもない嫌な雰囲気の中、それぞれがバラバラに。
    千波も二次元も『万里がおかしい』と。
    二次元に至っては状況は全く読めていない。
    まとめようとしたのは二次元。
    学祭の直前に飲み会をセッティングする。
    大暴露大会として。

    途中途中で、万里の入れ替わりごとに各人物からの視点での捉え方が描かれている。
    香子、千波、二次元、やな、各視点での考え方。
    飲み会の日、錯乱。
    待ち合わせ場所近くまで同行していたリンダが錯乱した万里を連れ帰る。
    万里の部屋についてすぐ、万里は実家に電話。
    実家近くの病院に予約を入れて欲しいと。
    どんどん現在と過去の時間が短くサイクル。
    NANA先輩と同衾かと喚く万里。なわけないじゃん。
    万里の親が学祭見学。
    万里は…学際までどうにか現在の自己を保ち踊り終えた瞬間入れ替わる。
    過去の万里へと。
    そのまま実家へ両親に連れられて帰る。休学して。
    送信したことのないメルがノートPCにある。
    香子へ送った身に覚えのないメル。

    年の瀬。
    万里の元へDVDを携えて一人の女性が訪ねてくる。
    万里と一緒にいたリンダは絶句する。
    綺麗に笑い、千波と間違えらえても必死に耐える香子。
    思い出の手鏡を見た瞬間に全てが繋がる。
    必死で香子の後を追う万里。
    あの橋の上で、全ての過去とこれからの未来が動き出す。
    香子に向かって、一直線に。
    思い出し、全てを繋ぎ過去は過去へと決別し。
    決別のしるしに過去の万里は鏡を持って。
    現在の万里には指輪を残して。
    香子にあげるために持っていた指輪。落としてしまった指輪。
    ずっと大切に過去の自分は持っていた。
    一緒に大晦日を迎え、横にいる香子に『ありがとう』と言えた万里。
    リンダは万里を追って橋を渡り、置いてきてしまった後輩に会いに。

    メルの犯人は二次元君。
    ブチ切れてこの件を画策した。
    無事に4月から、無事復学。


    思った以上に最後泣かされました。
    アニメにもなったので見たハズなんだけど、かーなーりー抜けている部分があって。
    そんでもって、流石の泣かせる部分への持っていかせ方は竹宮氏です。ハイ。
    香子の懇願、想い、ド直球さ。愛おしいです。
    これは万里の物語であって、香子の物語なのだ。
    蘇我馬子先輩=NANA先輩ってやっぱり爆笑だな。
    リンダ、やな、千波がその後どうなっているのか気になるけど。
    野暮ってもんですかね?

  • まさかの現在ハッピーエンド。
    過去ハッピーエンドかと思ったが、あくまで未来を見据えたエンド。
    このあたりはさすが。

    個人的にはちょいと残念だけど、未来に進もうと決意してくれているのでOKかな、と。

  • 香子と万里が幸せに決着して、ホント良かった!
    いろいろ難点とか疑問が解消されないところは多いけど、
    それだけで満足します。

    とらドラみたく、アニメと小説の決着を少し変化させてくれたら、なお良かったのに、というのは贅沢。

  • ゴールデンタイム最終巻
    ナナ先輩の本名が何なのか最後まで謎だった。

  • ついに……完結した。(kindleでの話)
    ゴールデンタイムは、非常に構成も、文体も、そして、なにより描写も(この作品で描かれる東京の大学生像のリアリティが、どれほどのものかは読めば分かる)全てにおいて素晴らしいの一言だ。
    とらドラも名作だが、個人的には、ゴールデンタイムの方が好きだ。(ただし、キャラクターとしては、大河が一番好きだ)
    とりわけ、地方から東京に行く大学生のアイデンティティの揺らぎの問題を記憶喪失というモチーフとして描ききったこと。これがこの作品において一番の読みどころだった。
    また、万里の記憶喪失は、ある種ループもの的なものへのアンサーとしても読むことができると思う。
    何度記憶喪失しても万里を何度でも出会い直し、愛すると誓う香子は、万里を存在から肯定している。
    まどかマギカのほむらによるまどかへの「愛」との対比について考えさせられたが、それはまた別の機会に語ることにする。
    とりあえず、ゴールデンタイムは、一読をお勧めする。

  • まさかハッピーエンドとは思わなかった。やなっさんとNANA先輩イケメン

  • 最終話。不思議な話の見えない箇所はあるけど、面白かった~♪

  • 完結! 
    ここまでの伏線をこの8巻で回収しきれるのかな、と少し読む前は不安だったのですが杞憂でした。
    見事にすべてをいかしています。

    最後まで読んでよかったです。

  • 完結。万里と香子は落ち着くところに落ち着いたけど他の扱いがとても微妙。とくにリンダとか。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『心臓の王国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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