アパシー学校であった怖い話1995 殺人クラブ リベンジ(1) (電撃コミックス)
- アスキー・メディアワークス (2010年5月27日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048685665
感想・レビュー・書評
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赤い紙・黄色いイチョウ・緑の紙。引き返せない殺意の信号機。
「殺人クラブ」というシナリオがあります。
『学校であった怖い話(略称:学怖)』というノベルゲームに収録されたシナリオの中でもひときわ人気が高かったひとつです。
タイトルからわかる通り『学怖』を原作としたこの漫画でも題材として取り扱われていますね。
ホラーというジャンルの中で生身の人間が殺人鬼となって追ってくるという性質に加え、配役や時代設定などをいじってメディア展開もしやすかったためでしょうか?
『学怖』を原作とした後世の作品群「アパシー・シリーズ」の中でも数度に渡って顔を出すことになりました。
そして、その中で打ち出された新機軸が「鳴神学園」という学園内で並存するふたつの「殺人クラブ」の対立です。
「快楽殺人」と「復讐代行」、原作において存在したのは前者のみでしたが、動機と背後関係が不明な後者の登場によって事態は混迷します。
一体何のために? 公益? 義憤? 伝統?
背後にはなにが? 家族? 学園? 国家?
…などと。
結論から言えば、この漫画は導入部分となる二巻まで描かれた時点で打ち切りになってしまったのでその顛末について語られる機会は逸しました。
けれど詳細は伏せますが、殺人クラブとそれに対抗する「なにか」というプロットは別作品で頻出します。
この辺りから察していただく通り、ある程度の前提知識を必要とする雰囲気も感じます。
かと思えば、シリーズの人気キャラを起用するわけでなく、一巻の中盤から登場した新キャラを主人公に据えてじっくり語っていこうという気配もあったりしました。初見置いてけぼりというわけでもないんですよ。
話がどっちつかず展開が読めないのはいいとして展望も見えづらかった感がありましたが……。
また、美少女の絵は比較的安定しているんですが、展開上の要請かラフっぽい場面が目立ち、それを差し引いても明らかな書きかけも散見され浮いている感も。
ウリとしている人間の強烈な悪意はしっかり描かれていたと思うんですが、一巻時点だといじめのネタなどが古典的かつストレート過ぎてどうも慣れない感じがあります
基本萌え系も入った少女漫画系の絵から繰り出されるハードな展開は人を選んだかなとも思います。顔芸に頼るわけでもない強烈な表情は備えているのでそちらの画力は十全なのですけどね。
この辺りの本領としては意外性も出てくる二巻からです。
などと悪い点は目立つんですが、以下をもって一巻時点のセールスポイントを挙げます。
シリーズファン向けには、おおらかだけど粘着質な印象のある「細田友晴」に焦点を当てた点が大きいかもしれません。
当時の周辺作品で彼はネタキャラとして茶化される風潮が強く、これはキャラの幅を広げる上でよい試みだったと思います。
ファンは気弱ないじめられっ子としての側面を真摯に突き詰めた、シリアスな展開に驚かされたかもしれません。
また、一話に先立って掲載された「零話」は本編とは独立した短編となっており、内容としては既出なのですが、よくまとまっています。
虚実があやふやな都市伝説がささやかれ、身近な学校の怪談が生まれるそんな世界観をしっかり表しています。
ちなみにゲームとしては『アパシー ミッドナイト・コレクション vol.2』もしくは『学校であった怖い話 特別編 追加ディスク』という作品で遊ぶことができます。
また、零話からわかる通り、シリーズ本流でおなじみ「七不思議の集会」という舞台とレギュラー陣の下、連作短編で進めていくプロットも考えられていた節もあります。
素人考えだと構成難度からして比較的易しく、こちらの方が需要に応えていたとも思いますが、さもありなん。
実際の本編は殺人クラブの謎を追っていくサスペンス路線になりました。
どちらにせよ本作は曲がりなくも『学怖』の一部が漫画化された珍しいケースです。
内容としては他所で触れたので割愛しますが、私個人として、この八尾姉妹の「悲劇の旋律」の話がかなり好きなんでどうも星を手放しづらいのですよ。
レビューとしてはいささか公平性を欠いたかもしれませんが、ご容赦ください。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
コミック
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続きものではなく元はスーファミのゲームというすごい原作。学校の都市伝説をホラーサスペンスにしています。絵的には少女漫画タッチだが、作風には合っていて問題ない。グロはかなり控えめ。
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"学校であった怖い話"の中の"殺人クラブ"を題材として取り上げてのスピンオフ的な作品。
ホラー作品ということで、とにかくエンディングが「うわ・・・」というのばかりなので、苦手な人は要注意かも。
グロい描写もチラチラあるし。
でも、逆にそういうのが好きな人は楽しめるんじゃないかな、と。
あと、殺人クラブってなんとなく「手動型DEATH NOTE」って感じだよね、なんて思ったり。
100%じゃないという所は違うけど、その辺が"手動型"な所であって、てな感じで。
この作品をもっと楽しむためには、原作を一度読んでみたいかも。