愚者の道

著者 :
  • KADOKAWA
3.23
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本棚登録 : 75
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048839440

感想・レビュー・書評

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  • 誰もがナルシシズムを満たそうとして必死。穴の空いたバケツ片手に呆然と立ち尽くすイメージ。
    差異を語ることの禁忌、そのせいで思考停止に陥ってコミュニケーションブレイクダウン。
    「内助の功」幻想を支えているのが実は女性のナルシシズムでもあるという慧眼。

  • 自分自身を愚者といい、愚者について書かれてある。『欲望の果てに』というところで、(内容)『心に穴のあいたバケツを持つ女は、恋愛が終わった直後、このまま狂ってしまうのではないかという恐怖に耐え切れず、バケツに水を注ぎ始める。水をくむ作業に熱中していれば、あの孤独と絶望と自分が崩壊していくような恐怖を忘れられる。バケツに注ぐ水は、何でもいい。とにかく、ひととき、自分を慰めてくれる快感を、自分を再び勝ちあるものと錯覚させてくれる幻想を求めて、愚者は狂ったようにバケツに水を汲み続ける。穴の開いたナルシシズムを埋めるために、愚者は他者の愛を必要とする。それを与えてくれる他者は、愚者にとっての「神」である。』ってところが印象的。納得。

  • エッセイは初めて読了。あ~面白かった!おそらく私は彼女の言う「愚者達」の一人だろうな。愚かなすがる恋愛をした事を思い出した、人に話す事もまだできない恥ずかしい恋だった。だがそれは私や著者に限った事ではなく、殆どの人間は愚者の要素を持ち合わせ、ゆらゆらと揺れているのではないか。著者が狂人との間を振り子のように揺れ留まっていたと書いたように。また、自分を許す神は存在していると私は考える。裁く神に捕まっているだけで、己の中にも存在はしているのではないか。自分を許すこともまたきっと不可能では無い筈だ。是非お勧め。

  • ホストにはまったり、美容整形を繰り返したり、デリヘル嬢になったりと破天荒な中村うさぎさんが自分とは何者なのかを見つめ、語る一冊。
    自らを愚者と名乗り、何故自分はこのような極端な行為を続けるのかと問いかけ答えている。自分は特別なはずだという思い、ナルシシズム、承認欲求、そんな自分への嫌悪。思えば自分を含め多くの人は10代の頃、自分とは何者かという思いが芽生え、20代の万能感の中それを忘れ、老いの兆しに気づく40代に再び忘れていた問いに気づくのではないか。自分をごまかしきれるほど馬鹿ではなく、かといって、はっきりとした答えを導きだせるほど悟ってはいない。日常ぼんやりと感じるチリチリとくすぶる思いが、辛辣な言葉となって綴られていた。
    まるで実験を繰り返すように、自分の問いに答えようと極端な行為を繰り返す彼女の声は、心に刺さって読んでいて辛かった。
    彼女がこの先自分の問いにどんな答えを導きだすのか、興味がある。

    以下自分用のメモ:
    おそらく「ナルシシズム」にとって、「思考」は恐ろしいものなのだ。何故なら、「思考」とは「明晰である」ことを求め、「明晰である」には「客観性」が必要となるからである。客観性を持てば持つほど、人は万能感を失っていく。自分は世界の中心であり、全知全能の神であるとすら思いたいくらいなのに、「客観性」という名の神が、それを否定するのだ。
    - - - -
    中学生の頃、愚者は「私は何者なのか」と考えてしまった。その時に「自分は何者でもない」という気がしたので、「何ものかにならなければ」という焦燥感を抱いてしまった。それば「凡庸であることへの嫌悪」にも繋がったのである。中略。しかし、現在の愚者は、「たとえ凡庸であろうとも、自分は確かに何者かではある」と考え、「自分以外の何者かになる必要はない」と思っている。中略。自分には、中学の頃の自分に対して、きちんと答えてやる義務があるのだ。自分は、じつに、そのために行きてきたのではないか。

  • 914.6

  • あまり頭の回転が早い人間ではないので、
    咀嚼し切れていない部分が多いのですが、


    あぁ、わたしは愚者であったのか、と思いました。

    彼氏さんに「好きだよ」と言われるたび、
    キリキリと何かに縛られる居心地の悪さと、
    赦しを無条件に認めてくれるその人の寛大さと、自分の何も差し出せない狭量さに、

    バレないようにいつも一人で泣く自分の姿が過ぎった。


    人に愛情を打ち明けられて泣くなんて
    まるで絵に描いたように幸せな人間のように見えるけれど、

    私の涙はそんなあったかいもんじゃなくって

    常に後ろめたさやら罪悪感がついて回って
    彼氏さんの優しい気持ちが、
    まるでその気持ちまで赦してくれるんじゃないかって言う錯覚に陥りそうになって、自分を傍観できる位置まで引っ張り出さずにはいられなくなる。

    いや、もしかしたら彼は赦してくれるのだろう、と思う。でもそれが怖い。赦してくれないほうがよほど気が楽になってしまいそうな自分がいる。



    一度、それに耐えられなくなって、別れた。
    キリキリと、優しくまとわりついてくる束縛を、

    幸福な愛情と受け止めてくれる女の人の方が、
    どれだけ彼を幸せにしてくれることだろうかと
    そのときは悩んで悩んで出した結論だった。

    周りに馬鹿だ馬鹿だと言われ、
    結局「その人の幸せを願う気持ちは紛れもなくわたしはその人のことをいとおしく思っているからだ。」と
    自分に言い聞かせて元に戻った。


    わだかまりは消えていない。

    人をいとおしく思う気持ちと、
    自分が自由でありたい、自由でいられるならば孤独でいる方がいい、
    という気持ちが、これからも結びつくことなんてきっとないであろう。

    わたしはそして、おそらく後者を選ぶのであろうという予感が、

    「好きだよ。」と言ってくれる私の大好きな人を苦しめる。


    その人を犠牲にしてまで、自由でいたいと願う私は、一体何様のつもりなのだろう。



     あぁ、自由でいたい。
    それでもわたしは、自由でいたい。

     愚者以外の何者でもないんじゃないだろうか。

     

  • 実は初めて読んだ「中村うさぎ」。
    名前はすごくインパクトがあって知っていたけど、どんな作風なのかとか全然知らずに開いてみたら‥
    そこには哲学があった。
    女の哲学。
    買い物依存症、ホスト依存、整形依存‥その果てにはついにデリヘルまで‥。
    こうやって中村うさぎがとってきた行動を見るとなんて馬鹿げた浅はかな女だろうって思うのだけど、この本を読んでいくうちに私にも共通する部分、分かってしまうものがありました。
    女であること、生きていくこと、すごく考えさせられました。

  • ホストHと何があったのかこれで分かってすっきり。

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著者プロフィール

1958年2月27日生まれ。
エッセイスト。福岡県出身。
同志社大学 文学部英文学科卒業。
1991年ライトノベルでデビュー。
以後、エッセイストとして、買い物依存症やホストクラブ通い、美容整形、デリヘル勤務などの体験を書く。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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