路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店 (メディアワークス文庫)
- KADOKAWA (2013年2月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048913775
作品紹介・あらすじ
高校生の小幡洸之介は、画家である父の作品が夜になると動き出すという怪奇現象に悩まされていた。「そうした事件を解決してくれる場所がある」と耳にして訪ねると、そこはいかにも怪しげな日本家屋。意を決して中へ入った洸之介が目にしたのは、驚くような光景だった。そして彼は、加納環と名乗る、若く美しい女表具師と出会う-。人間と妖怪が織りなす、ほろ苦くも微笑ましい、どこか懐かしい不思議な物語。第19回電撃小説大賞"メディアワークス文庫賞"受賞作。
感想・レビュー・書評
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死んだ父親の描いた水墨画の燕が毎夜毎夜動き出す。小幡洸之は高校の友達から聞いた、妖しいことを解決してくれるという大妖怪を丑三つ時に細い路地の奥へ訪ねていく。結局、そこで出会った狐のあやかしの妙齢の和服美人の表具師に弟子入りすることになる。父親の思いが籠った絵を鎮めるため、新たに表具をやり直すためなのだ。表具師・加納環の周りにはいろいろなあやかしたちがいて、賑やかでほっこりした出来事が次々起こる。
こんなあやかしたちのいる路地裏なら、私も行ってみたいものだ。主人公と同じように、入り浸りになってしまうだろうな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1〜3巻
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★絵のふるまいにお困りではありませんか?
【感想】
・古い友人に表具師の息子がいるけどあの家ではこういうことをしてたのかと思いました。
・妖怪ものとしてはほんわか系で、「妖怪アパートの幽雅な日常」に近いテイストかな。
【一行目】
玉響通りという場所がある。
【内容】
・高校生の洸之介は著名な画家だった父親が生前描いた絵が騒ぐのに困って噂の表具屋を捜し環さんと出会う。
・桜汰の通う小学校で肝試しがはやるが神隠しに遇う子どもが続出。
・結婚詐欺師の樹ごターゲットにした女性宅で鳥の声。
・大人の男性向けにつくられた落ち着いたカフェがいきなり女性客で満杯に。
・環さんの捜していた絵が見つかった?
▼簡単なメモ
【揚羽/あげは】猫又。ギャルメイクと女子高生ファッションを身につけた女の子。実際にときどき高校に三年ずつ通うことがあるらしい。猫舌。
【朝河】長野のタクシー運転手。河童のようだ。
【綾櫛横丁】玉響通りから入る路地。その先には加納表具店しかない。
【五十嵐】暑いさなかでもスーツ姿の紳士。どうやら天狗のようだ。
【樹/いつき】化け狸。善人(善狸?)で、相手のことを考えてしまうので化け狸の正業と言える詐欺師としてはいまいち。とりあえず初歩と言える結婚詐欺にもいいとこまでいきながらいつも失敗している。偽名の姓は篠宮。
【絵】描くものの思いが染み付いて心霊現象っぽいことが発生することがある。あくまでも思念であって、霊魂や付喪神ではない。
【桜汰/おうた】小学生。天狗の王子さま。性格男前だし毅然としており大物になれそうな懐の深さがある。
【桜汰の父】日本の天狗を統べる王さま。
【和馬】西山和馬。clatter of hoofsの店長。
【加納表具店】環の店。
【カプリチオ】ジョージの経営する美容院。
【肝試し】結ヶ丘小学校で流行っている。昼の間に宝を隠し夜になってから探す。が旧校舎を範囲に入れたとたん神隠しが発生しはじめた。翌朝には見つかる。
【裂地/きれじ】表装に使う布。金糸銀糸を使ったものが多い。
【clatter of hoofs】揚羽の元バイト先。馬の絵がたくさん飾られている。
【洸之介/こうのすけ】小幡洸之介(おばた)。主人公の「俺」。結ヶ丘高校二年。亡くなった父親の部屋から聞こえてくる物音に悩まされている。父親の遺した絵を表具するため環に弟子入りすることになった。授業料はハンバーガーの定期的上納。
【洸之介の父】小幡洸泉(おばた・こうせん)という日本画壇を代表する画家。少し前に亡くなった。
【洸之介の母】大手企業に勤めるバリバリのキャリアウーマン。洸泉の放浪癖を知った上で結婚ししばらくは共に暮らし洸之介をもうけた。
【古賀隼人/こが・はやと】桜汰のクラスメート。ひょろりとしている。
【琴子】和馬の友人。渡米した画家。
【ジョージ】鷲谷ジョージ。環たちの酒飲み仲間。河童。「カプリチオ」という美容院を経営している美容師。新しもの好き。名はジョージ・ワシントンから取った。
【沈生麩糊/じんしょうふのり】表具に使う糊。焼き麩をつくる過程でできるものと同じ。材料は小麦粉、塩、水の三つのみ。腐らせ粘着力を落としたものを、あるいは腐らせないものもいずれにせよさらに水で薄めて使うのは後の表具しなおしのとき剥がせることを考慮して。
【建部宗由/たけべ・そうゆう】環さんの師匠。
【煙草屋の婆さん】ほとんど身動きしない。綾櫛横丁に入る道の門番?
【環/たまき】加納環。綾櫛横丁で出会った美女。見た目は二十歳くらい。加納表具店を営んでいる表具師。ジャンクフードが好き。油揚げではなく。生まれは東京ではなく、狩野山というところが故郷で玉城川(たまきがわ)の近くで生まれた。
【玉響通り/たまゆらどおり】「出る」らしい。たばこ屋の横から入る路地が綾櫛横丁。
【坪山義弘/つぼやま・よしひろ】桜汰のクラスメート。背が小さい。リーダー格。
【天雲寺/てんうんじ】「例の絵」があると言われる長野の寺。
【人間】《人間ほど鈍感な生き物は他にいやしませんぜ。(中略)人間が気にするのは人間だけです。》p.285
【化け狸】人に紛れて生きている化け狸はみな詐欺師を生業としている。
【百年】百年後のことを考えて表装する。昔の人は今使っているものが百年後にも使えることをイメージしていたとも言える。そのための技術であり、システムがあった。《更に百年生きるために》。
【兵助】佐伯兵助。でかくてサングラスでシルバーアクセサリーの怖そうな兄ちゃんだが表具師。裏の仕事はできないので環に斡旋する。
【本紙】表装される作品のこと。
【水野隆/みずの・たかし】桜汰のクラスメート。ぽっちゃり系。
【みのり】木内みのり。樹の結婚詐欺のターゲットの一人。太って成金趣味っぽいおばさん。けっこう好い人。この人を騙すのは気が引けるなあ、樹クン。呉服店を営んでいる。店員は熱く、着物が似合いそうな人と出会うとテンションが上がり着せかえ人形を前にした少女のようになってしまい環すら翻弄した。
【森島】洸之介の友人。ホラ吹き大王。自称「情報通」。
【森島の姉】森島以上に情報通だと森島は言っている。行きつけの美容院はジョージの「カプリチオ」。
【弥助】兵助の父。
【結ヶ丘小学校】桜汰の通う学校。洸之介の母校でもある。かつて美術に熱心な先生がいて、その教え子のうち美術家になった人たちがさまざまな作品を寄贈している。中には高額なものも。
【夜市】ご近所の妖怪や成仏を諦めた幽霊たちの集まり。
【蓮華】雪女。ギャルっぽいメイクで女子高生ファッションの常にハイテンションな女の子。夏の間は暑すぎていられないので製氷工場などでアルバイトしている。冬になると姿を現す。蓮華が送ってくれる天然氷でかき氷を食すのが加納表具店夏の風物詩。 -
ちょっと不思議な日常生活。路地裏の向こうは不思議の町でした。そんな感じ。
絵にまつわる怪異を解決していく短編連作でするする読めます。
隣に何気なく暮らす多様性を当たり前として描いているのがよいなあ。
環さんかっこいい~。
表具に詳しく腕利きなのももちろんだけど、普段着が着物で街へ出かけるときも着物なのすばらしい!
着物姿でハンバーガー食べに行く姿に胸キュンでした。
環さんの着物の色と、怪異が解決したときに生じる色がとても綺麗です。
文庫の帯に「文字の向こうに色彩が見えた」とあってうんうん!って思ったり。 -
妖怪系が好きなのと絵とあらすじに惹かれて購入。
面白かった!
雰囲気としてはビブリアと妖アパを足した感じに近いのでしょうか。好きな方にはぜひオススメしたいです。
あまり厚くはないはずなのに、内容がしっかりしてて読みごたえあってずっと読んでいたような気分です。
キャラクターも狐に狸に猫又雪女河童天狗etc.みんな個性的で愛着が湧くキャラクターばかりでした。すごく…描きたい!(笑
表具師(掛け軸の装丁)っていうのも初めて見る世界で蘊蓄(というほど堅苦しくなくて助かりました)が面白かったです。
続編は出るのでしょうか?ぜひ出てほしいなぁ…でも主要キャラの背景ほとんど明るみに出ちゃったしなー
個人的には残念なイケメンと可愛い二人の女子高生たちが特に気に入りました(*^∀^*) -
非常に興味深く心に染み入る温かい物語でした。
『和』の美しさがまっすぐに伝わってきました。
表具師の裏の仕事として怪奇現象の謎を解決するお話。
あやかしたちと一人の少年の温もりに溢れたお話。
ちょっと不思議な物語。面白かったです。 -
どこか懐かしくなるような雰囲気の本。
出てくるキャラクターがみんな優しくていい人だからほっとする。
お話も面白いし、表具という言葉や表具師という仕事をを知ることが出来た。ただ、もう少し表具師の仕事の場面が欲しかった。 -
ファンタジー
連作短篇集
路地裏横丁に佇む表具店。
そこにはちょっと浮世離れした人たちが集っている。
店主の和服美人表具師妖狐、女子高生猫又、小学生天狗、イケメン狸、ギャル雪女にカリスマ美容師河童…
夏に読んだ方がいい?
大丈夫。みんな気の良い妖怪です。
主人公は、亡き父の描いた日本画を表装するためここに弟子入りすることになる。
100年その先を見据えた昔ながらの工法に、現代より遥かに優れた完成度の高さを感じる。
専門の話で結構難しい。
「人間は人間しか見ていないから」妖怪が紛れていても気付かない鈍感らしい。
みんなのやりとりがワイワイと楽しい、それでいて考えさせらることのある良作品。 -
面白かった。
登場人物(だいたい妖怪)のキャラもよかったし主人公が表装に興味をもつとこもよかったし、物語が進むにつれて登場人物たちの過去やこだわりが少しずつ垣間見えていくのも良かった。
最後のほう、化かされた感も面白かったよ。 -
父の遺品の作品が動くという怪奇現象を妖怪に解決してもらおうと路地裏に乗り込んだ洸之介が、そこで出会ったあやかしたちとのお話。児童書の分類でもいけそうな優しさです。表具屋という設定もいいですね。以前に絵を軸にした時はお任せだった一文字や風帯の選択が絵をどれだけ生かすか殺すかを担っていることなどを知ることもできとても楽しく読みました。主人公と父親との関係、たくさんのあやかしたちの事情など内容もわりとしっかりしていますが重すぎず読みやすかったです。続きが出ていますので是非この後の彼らも読んでみます。