86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉 (電撃文庫)
- KADOKAWA (2017年7月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048932325
作品紹介・あらすじ
共和国の指揮官・レーナとの非業の別れの後、隣国ギアーデ連邦へとたどり着いたシンたち〈エイティシックス〉の面々は、ギアーデ連邦軍に保護され、一時の平穏を得る。
だが──彼らは戦場に戻ることを選んだ。連邦軍に志願し、再び地獄の最前線へと立った彼らは、『隣国からやってきた戦闘狂』と陰で囁かれながらも、シンの“能力”によって予見された〈レギオン〉の大攻勢に向けて戦い続ける。そしてその傍らには、彼らよりさらに若い、年端もいかぬ少女であり、新たな仲間である「フレデリカ・ローゼンフォルト」の姿もあった。
少年たちは、そして幼き少女はなぜ戦うのか。そして迫りくる〈レギオン〉の脅威を退ける術とは、果たして──?
シンとレーナの別れから、奇跡の邂逅へと至るまでの物語を描く、〈ギアーデ連邦編〉前編!
“──死神は、居るべき場所へと呼ばれる”
感想・レビュー・書評
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前巻ラストにて同調の網から逃れ自由の旅を始めたシン達。第1巻本編と2年後のエピローグ。それを軸に考えるとこの巻で描かれるのはその間を繋ぐエピソードといった扱いと思ってしまうが、むしろエイティシックスと蔑まれていた彼らの本質を描く新たな物語となっているように感じられたよ
そもそも冒頭こそその後のレーナを描きつつも、続く本編では何も説明無く戦闘に身を投じるシン達の姿が描かれるね
場所が変わっても変わらぬレギオンとの闘争、獅子奮迅の活躍を見せるシン。それはもしかしたら読者が待ち望んだ姿かもしれない。けれど同時に見えてくるのは変わらず差別される彼らの姿
共和国に居た頃は有色種であるというだけで人権も何もかも取り上げられたが為に悲惨な立場に追い遣られていた。普通に考えれば全く異なる土地へ行けば、そもそも異なる色が共存する国へ行けば差別なんてされないように考えてしまう
確かにギアーデ連邦はエイティシックスの立場を彼らなりに理解し温情を与えようとする。でもエイティシックスはその手を受け付けない。そこにこそ、もしかしたら彼らが差別の中で会得してしまった異常性が存在しているのかも知れず、同時にそんなエイティシックスを差別せずにはいられない人間の弱さが潜んでいるのかもしれない
そんな事を本書の様々な場面で感じ取ってしまったよ
何はともあれアニメから入った身としては少し驚くような構成だったかな。アニメでは基本的に時系列で描かれていたこともあり、ユージンの扱いも何となく行き先は想像出来つつもいざその場面が映された時には衝撃を覚えたものだった
けど原作ではいきなりあの戦闘シーンなのか……。ユージンが何者か判らず、そもそもシンが何故ギアーデで戦っているかも判らず極限の戦闘は繰り広げられ、あの場面へ至る
場所が変わっても、恐らく戦う理由が変わっても、そして差別される理由が変わっても。死神としての職務が何も変わらないシンの在り方。それは一見すると彼が86区の中に囚われたままのように映るけれど、実際の問題はもっと根深いのだと判るのが続く形で描かれた時間を遡ってのお話だね
運と兄の優しさによって辿り着いた迫害を受けずに暮らせる国、ギアーデ連邦。そこでシン達は一応の平和を享受していたね
こう見ると馴染めないわけではないのだろうし、そもそも最後まで戦い抜くと志して戦争に身を投じていたわけだから、自分達の戦争が終わって他の国に辿り着いたなら平和を享受する権利がある。エルンストが言うこの理論は多くの読者も納得できる筈のもの
だからこそ平和に背を向けて戦場こそ自分達の居るべき場所と考える彼らに衝撃を受けてしまう
共和国で彼らを地獄の中でも進むべき道と誇りを失わずに戦い続けさせたロジックが平和を拒む理由になってしまう点に驚き哀しみを覚えてしまう……
そうして再び戦場へ舞い戻る日々の中で特異な存在として登場するのはやはりフレデリカだろうね
前巻において死地を戦うエイティシックスに関わる事になったのは脳内花畑なレーナだった。けれど彼女は彼女の理想を押し通して最後まで関わるのを止めようとしなかったし今も関わり続けている。どれだけ侮辱されても軍属として戦い続ける彼女は一角の戦士と言える
フレデリカは生まれによる部分もあるのだろうけど達観した面がかなり有り、更にはエイティシックスの意志も尊重する度量を持っているし、大統領のエルンストと遣り合う程度の賢さも有る。同時に自分一人では何も出来ない幼さを持っている点は彼女が本質的には庇護される対象であると示しているね
そういった意味ではシンにとってレーナはもしかしたら戦友足り得た人物かもしれないけれど、フレデリカは年長者として守らねばという感覚にさせられるのかな?
それは兄に守られる形でギアーデに辿り着き、同時に兄の大切さを思い出したシンにとってフレデリカは扱いに困る相手と言える
一方でフレデリカもかつて自分を守護していたキリヤとシンを重ねている点にこの二人の関係性のややこしさが見えるのだけど……
大切な者を守るためではなく、かと言って仲間を連れていくためでもなく。エイティシックスは何のために戦っているのかと問いたくなる絶望的な戦場
フレデリカが見てしまったシンとキリヤの共通項。そして遂に牙を剥いたかつて守っていた者による凶弾
守るのか守られるのか。誰のためか自分のためか。価値観の曖昧さや緊迫感が際立つ中で次巻に続くか…… -
背ラベル:913.6ーアー2
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池袋ウェストゲートパーク以来の夜ふかし小説だぁ。セオが一番好き
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アニメで時系列が飛んでたのって、原作通りだったんだ。
もうアニメで見てたので完全に脳内補完できて良かった。
フレデリカの声はすごく合っている、セリフも原作通りみたい。
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合間に配信で映画観たりしながらも、小説としては読み掛けの本を放り出して読了。
家で読む分には挿絵があろうとニヨニヨ顔がにやけようと顰めようと問題ない(まあ家族が見てなければだが)
幾つになっても、読書は楽しい。
2022年3冊目。 -
戦争で生き残ったものが、どう思うのか。
一緒に死にたいと思うのか、平穏に暮らしたいと思うのか。
彼らに選ばせることが自由で、平穏を押し付けることは檻に入れることというのは、その通りだと思う。