- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049126709
作品紹介・あらすじ
大戦と禁酒法によって旧来の道徳が崩れ去ったその時代。非合法の運び屋シーモア・ロードのもとにある日持ち込まれた荷物は、人の血を吸って生きる正真正銘の怪物――吸血鬼の少女であった。
仕事上のトラブルから始まった吸血鬼ルーミー・スパイクとの慣れない同居生活。荒んだ街での問題だらけの運び屋業。そして、彼女を付け狙うマフィアの影。
彼女の生きていける安全な場所を求めてあがく中で、居場所のないシーモアとルーミーはゆっくりと惹かれ合っていく。
嘘と秘密を孕んだ空っぽの恋。けれど彼らには、そんなちっぽけな幸福で十分だった。
人と人ならざる者との恋の果てに、血に汚れた選択が待ち受けているとしても。
非合法の運び屋と天涯孤独の吸血鬼の共棲を描くファンタジーロマンス、開幕。
感想・レビュー・書評
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吸血鬼を名乗る美少女・ルーミーと街の運び屋・シーモアと突如始まった奇妙な同居生活
そんな中起きたシーモアの常連であるマフィアの死で、シーモアはルーミーの意図の気づき、、、という話
ただ、あらすじにあるような「ゆっくり惹かれ合う」ような描写は薄い
そもそもシーモア視点で描かれ、ルーミーの心の変化をうかがえるようなルーミーの描写はほとんどなく、シーモア自身の心情描写もあまりない
ルーミーが行動に起こして初めてその心情が明らかになり、それを受けてシーモアも自分の心情に気づく
他の登場人物についても心情が見て取れるような描写は少なく、シーモアが設定を説明する
そんな感じで、物語としては淡々と流れる中、心情描写は薄く、突然感があり、小説としては残念
また、シーモア視点で読者をミスリードする手法もいかがかと
以下再読のための備忘
・「男が泊まりに来たどうかはわからないけど、女の子が来た時には、大抵寝る時にはほら、寝具が二つも要らないっていうかさ」
・「あー…………その、なんていうか。血を吸うとなれば、誰かの体に触れて、唇をつけなくちゃいけないわけで、そのー」
・ぺこり、という音が似合う、丁寧なお辞儀
・「僕の理性を余り試すようなことはしないで欲しいなぁ。君は寂しくて、ただテディベアの代わりを求めているのかもしれないけど、僕は強いていうなら生きている熊だよ?」
・「いいんだよ。僕は愛を感じたい人なの。相手が自分のことでどれだけ頭を悩ませてくれたかが、愛の証明になるだろ?」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
禁酒法時代のアメリカを舞台に運び屋と吸血鬼の恋を描く。
アメリカン・ニューシネマを彷彿とさせるような退廃的な雰囲気と厭世的な主人公の独白が作品の味。
この作品が上手いのは周りの全てを主人公の主観で説明している点。読者の心理が丁寧に語られる主人公の心情とリンクしているおかげで、後々の展開の衝撃に惑わされ、揺さぶられる。
とにかく、主人公の造形とそれを描く手法が見事といえる。 -
非合法の運び屋と天涯孤独の吸血鬼。
ジャンルはファンタジーロマンス。
大戦と禁酒法によって旧来の道徳が崩れ去った時代。
嘘と秘密を孕んだ空っぽの恋。
心理描写が好物な自分にとってこの作品は的を得ていてサクサク読めました。
怪物に恋したって良いじゃないか。ちっぽけな幸福だろうがだからこそ大きな幸福を探せるものです。 -
魅力的な点もあるが展開が主人公の思考だけで進んでいくので結構分かりにくい。もっと分かりやすく感動させてほしかった。、
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たたみかけてくるエモさに、めまいがしてしましました。
大戦後の禁酒法の時代。非合法の運び屋と吸血鬼の恋物語です。
冒頭からロマンチックな出会いが描かれ、運び屋という仕事の中でそれぞれの心情、吸血鬼の設定が掘り下げられていきます。
いわゆる吸血鬼の特徴の使い方がとにかく上手いです。
少しずつ近づいていく中、一つの事件をきっかけに疑念が募っていくのです。
人間と吸血鬼(化け物)という決して交わらない二人がトリッキーな形で交流する傑作。
280ページに叫んでしまいました。