86―エイティシックス―Ep.7 ―ミスト― (電撃文庫)
- KADOKAWA (2019年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049127980
作品紹介・あらすじ
上位指揮官機〈無慈悲な女王〉。それは対レギオン戦争で守勢に立つ人類に与えられた“銀の弾丸”。『第86独立機動打撃群』の活躍で〈彼女〉の確保に成功した連邦・連合王国は、轡を並べる第三国「ヴァルト盟約同盟」にて、その解析と「尋問」を開始する。
一方、大戦果を上げた者たちにも報奨が授与された。特別休暇。鉄と血にまみれた日々を、僅かひととき遥か遠くに置き、シンとレーナはじめ皆はそれぞれに羽を伸ばす。が、同時に《その二人以外のほぼ全員》はある思いを共にしていた。
それは。“お前らいい加減、さっさとくっつけよ”
もう一つの戦線がついに動く(!?)Ep.7!
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ライト回!!でも最高!!!
-
背ラベル:913.6-ア-7
-
まさかこの作品で休暇を楽しむエイティシックスの面々が一巻丸々描かれるなんて想像もしなかったなぁ…
戦場に出れば死も無情も恐れぬ戦模様を見せつけるエイティシックス。けれどこうしてホテルに宿泊して観光や休息に勤しむ彼らを見ていると、やはり芯の部分は少年少女だったんだなぁなんて今更感じてしまったよ
前巻にてまたもや恥ずかしい告白みたいな事をしたシンとレーナ。もはや二人の想いは周囲の知る所となっているわけだけど、当人達はそこまで思い至ってないしそもそも直面する自分の想いにあわあわし続けている印象
このあまりにもゆったりとしていて、誰かに急かされる事もない時間と空間は二人に自分の内面を直視する時間となったようで
その分、恋に慣れぬ幼子のように勝手な想像で気分が上向いたり沈んだりといった様相は面白いね
……まあ、いい加減くっつけよという周囲の煩わしさも判らなくもないのが更に面白い所なのだけど(笑)
二人共同じ場所を目指して戦ってきた同志だから心が合わぬ訳では無い。けれどこれまでに歩んできた道があまりに壮絶だから安易な恋に溺れる事を良しとしないし、そういった行為に慣れていない
レーナが同朋の言葉に揺れて自分を「白ブタ」だなんて思い出す点や、なかなか切り出せないシンもそういった話。勿論、良い雰囲気になりかけたのに邪魔されてしまうパターンも有ったから何から何までシンとレーナの問題というわけでもないんだけれど
過酷な生き方をしているから思わずに居られない「自分は相手に相応しい存在なのか」
二人は相応の立場に在る人間だから、恋と責任がごっちゃになりかねない危うさがある。おまけにレーナは大攻勢により持てる殆どを失ってからそれほど時間が経っているわけではないから、もしシンに振られてしまったらなんて余計な事まで考えてしまう
これは一種のドツボに嵌った状態だよね。本来ならそんな事考える必要なんて無い。けれどただ恋に溺れられるような情勢じゃなくなってしまったから、恋に現を抜かす事が難しくなっただけで
ここでレーナと同じように多くを失ってきたエイティシックスやアネットが発破を掛ける展開は良いね
レーナはかつて一人になってもシン達を追い掛けると心に決めてここまで来た。でも実際に近くまで来て、あの頃は想像もしていなかった想いも抱くようになって
いわば今のレーナはキャパオーバーに近い状態だったのかも。だからレーナの抱えた想いが、これまで進んだ道がどのようなものだったのか思い出させる相棒が必要だったわけだ
恋物語だけに終止せず、一応のシリアス要素がこの巻にて有るとすれば、それは捕らえられた〈無慈悲な女王〉の件か
多くの犠牲と苦節の果てに捕らえたレギオン。何か聞き出せるなら聞き出したい。けれど相手は口を割る様子はなく
これに対峙するのがシンの役目となってしまうのがなぁ……
唯でさえ彼には戦闘面の負担も有るし、戦隊長としての責任もある。またこの巻では恋に振り回されても居るし
あまりにシンに課された役目が多すぎて彼はこの事態をどう受け止めているのかと気になってしまう
でも読み終わってみれば、〈無慈悲な女王〉もまたシンの受け止め方をずっと気にしていたのか。シンの反応が望んだものではなかったから、一度は口を閉じた
でも本質の部分でシンとゼレーネが同質であると会話によって通じ合う流れには良い意味で驚かされた
幾千万の悲壮を生み出したレギオン、その生みの親が抱える想い、シンが最近自覚した想いとリンクするなんてね。これもレーナとの関わりによってシンが得た変化の一つなのだからやはりレーナの存在はシンにとって掛け替えの無いものだと再認識できるよ
ゼレーネによって明かされた事態打開の鍵。ただ、これは扱い方を間違えれば今度こそ人類救済の策は失われるし、それどころか人類同士の内輪もめに終わってしまう可能性もある
唯一の希望はこの判断を行うのがあのエルンストである点だろうけど……
懸念事項は一応片付いて最終夜のダンスパーティーはやはり本作らしからぬ光景が展開されたね
戦いに明け暮れていた彼・彼女らが、まるで戦争とは関係ない無垢な存在であるかのようにダンスに興じる。それは常と違うものだから、常では言葉に出来ぬ想いも口に出来るチャンスが生まれる
周囲のお膳立てを散々に受けて、あまりに多くの回り道をして
そして漸く確かな形となったシンの感謝と恋心。いや、本当にここまで長かった!焦らされてきた身としてはあの場面でも余計な茶々が入っておじゃんになるのでは?と怖かったよ
…からのレーナの急進な行動には更に驚かされたけど
あんなに想いを口にする事を迷っていたのに、その先の行為はあっさりやってしまうのかいと言いたく成るね
まあ、本人としても想いが昂ぶった結果の行動だったようだけど
次巻は次巻で二人の恋物語は幾らかの迷走を見せそうだ(笑) -
戦闘なし巻。
とはいえ、レギオン側の秘密一部御開帳。