86―エイティシックス―Ep.8 ―ガンスモーク・オン・ザ・ウォーター― (電撃文庫)
- KADOKAWA (2020年5月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049131857
作品紹介・あらすじ
〈レギオン〉完全停止の可能性。
終わらぬはずの、戦争の終わり。
それは人類の悲願。明日への希望。
しかし、戦士たちは――戦いが終わった先、戦場で死ぬ定めだった「エイティシックス」は、どこへゆくのか。
〈シリン〉との出会いで、死を恐れぬことの不気味を知った彼らは、閉じていた未来への眼を、無理矢理に開かされた。
ある者は、愛する人を見つけた。
ある者は、世界を見て夢を描いた。
だが……、それが出来ぬ者は。
温かい希望の光が、彼らの鉄の意志と結束を歪め、そして。
ついに、過去最悪の犠牲を生む。
平穏を許さぬ、新章開幕のEp.8!
“辿り着いた海は、彼らに血を求めた。”
感想・レビュー・書評
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電車のなかで泣いた。
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海はエモ過ぎる
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前巻の穏やかな空気を少しだけ引きずる前半部
特にシンの告白を有耶無耶にした上でキス逃げという前代未聞の振る舞いをしたレーナの醜態は面白いけど酷い(笑)
だからこそレギオンとの戦いが始まってからの、エイティシックスが戦う場所とはどのような場所かを思い出させる熾烈極まる絶死の戦場の悲惨さが際立つのだけれど
ゼレーネによって齎された戦争終結の手段。ひとまずフレデリカという存在の重要性は穏便に扱われたものの、まず秘匿司令部の場所を調べなければならないようで
それを思えば事はそう簡単ではないのだけど、これまで戦争に終わりがあるなんて想像すら出来なかった点を思えば、終わりが在ると知れただけでも充分過ぎる前進
それもあってか、この巻の前半部では戦争に関わらない要素が幾つか散見されたね
エイティシックスを匿ってくれた共和国民との再会、戦争が終わった後にやりたい事
それらは絶死の戦場に身を置かざるを得なかったかつての彼らには距離の在った筈の代物
そんな中でセオは別種の寂しさを見せているね
多くを得たシンは大きく変わり、ライデンはそんなシンを暖かく見守っている。アンジュはダスティンと良い感じになりそうだし、クレナもレーナをライバルと認めつつ託す判断をしている
そういった者達を代表にエイティシックスは変わり始めている
けどセオだけはあの頃と目立った変化は見せていないね。勿論あの頃とはレーナへの認識は大きく変わっているだろうけど、彼自身は過去と未来についてあやふやにしたまま
それというのも作中で言及されていたように彼は未だに戦隊長の死を自分の中で消化出来ていなかった。それが出来なければ彼は進み方を決められない
思えば今回のエピソードはそこに重点が置かれていたのかも
今回の舞台となった船団国群で戦い続けるイシュマエル達
希望の薄い戦場で血の繋がりより誇りの繋がりで戦い続ける彼らの在り様は〈シリン〉とは別角度からエイティシックスとの相似性を見出させるものだったね
だというのに、彼らは決定的な部分をエイティシックスとは異にする
〈シリン〉はその死に様によってエイティシックスの行く末を明示して、彼らに絶望を叩き込んだ
対して船団国群は戦い続けるという誇りすら擲ってレギオンに立ち向かうことで、エイティシックスが掲げ続けた誇りの本質を問い直しているね
船団国群は傍目に見えている以上の多くを失っている。国は荒廃し戦う為の力を失い。そもそも自分達だけで戦い続ける事が出来ず連絡が取れたばかりの他国に救援を求めている時点できっと彼らの誇りはズタズタだ
それでも少しでも多く生きて、勝利を目指して
死に様ではない生き様はエイティシックスが、特にセオが見出だせていなかったものをしかと見せるものに成る
何かを無くしたら無くしたままになってしまうのか?運が良くなければ何も手に入らないのか?そもそも自分は何を手にしたかったのか?
イシュマエルの生き様はそれをセオ達エイティシックスにとことん投げかける
そんな苦悩を抱えたまま始まった戦闘はやはり絶死の一言
そもそもからして以前登場したボスキャラを強化した上で量産するじゃないよと言いたくなる。この作品って何処までもエイティシックスに優しくない……
更に途中でシンがまさかの脱落をするなら尚更に戦闘は厳しくなる。
これまではシンの異能によってエイティシックスは戦えていた。いわばシンに寄りかかっていた状態
それが無くなってしまったなら、彼らは彼ら自身の力で戦場に立ち続けなければならない。それは生半可な覚悟だけで今更出来る事ではない。その感覚がセオに急激な成長を促すなんてね
最初に遭遇した時はシンですら苦戦した高機動型。複数になったそいつを相手に大立ち回りを演じてみせたセオは間違いなく強くなった
それは戦闘技術だけでなく心の強さも。だからこれまで答えを出せなかった戦隊長の死への向き合い方を漸く決められる。その感覚を自分の芯に据えられる
セオの戦果、そして戦闘中に彼が見せた心の輝きは称賛に値するほど
様々な助けの上にレギオン撃破があったとしてもセオの奮闘が無ければあの結果は得られなかった
だからこそラストの喪失に絶句してしまう
生きて幸せになると決めて戦った彼は生きてはいる。けれど戦う術は失ってしまったわけで
イシュマエルから受け取った想いはどのような変化を以って彼を支えてくれるのだろうか……? -
色々起こってる割には、物語の中の時間は数ヶ月しか進んでない。
そんな短期間の中で、望みを抱くことができるようになった者と、まだそれが出来ない者とに分かれてきた。青春だ。
男子メインキャラたちの表紙がカッコいい。 -
表紙から最初の出だしからしてセオ回だなと思ってましたが、はいまさしくその通りでした。
あああああ。あれは頽れた。悲しい。
けどけど、良かった。とも言いたい。
海回でもありました。
海を見せたい〜って初めての海がこれかい、と言うツッコミもまあ、置いておきましょう(ニッコリ)
前回かなりライトな分、今回は結構重めだったかな。
でもちゃんとご褒美笑シーンもありましたし。
うん。シーンとしては少なかったですけどその分濃いやつありがとうございました。
相変わらずヴィーカの扱いがまあアレ気味ですけど、まあ仕方ないよね。そもそもゲストキャラみたいなもんですしね(涙)
破廉恥スーツの功罪。大きいですなあ、どちらにせよ。
最後に。
個人的に一番気になったのは船の揺れです。
海な割に揺れの描写がほぼ無し。嵐なのに!!!
いやフィクションですし船の構造がこちらの船とは比ぶるべくもない技術により揺れを一切感じないものなのかもしれません。
しかし海好き船好きとしてはちょっとそこだけ気になった次第。
であればせめて陸酔いは書かないで〜orz
ごめんなさい揚げ足取りで。申し訳ありませんm(_"_;)m
船酔いで慣れない86たちが目回してへばっていたら、それこそ戦いどこじゃないですもんね。分かってます。だからそこは書いちゃあかんのですよね。
絶対レーナたん揺れに弱そうだもんなあ(^^;
キリッてした直後にマーライオンみたいになっちゃったら、あらららら…って。それはギャグになっちゃいますしね。
今号ではちょっとそれはいただけない。
分かっちゃいますが、おがさわら丸経験民としてはついそこは突っ込まざるを得ないというところで。
それで今回はちょっと星が少なめです。
次巻も楽しみ。
2022年9冊目。1ヶ月で9冊読むとか、もしかしたら学生の頃以来かも!?