俺の妹がこんなに可愛いわけがない(17) 加奈子if (電撃文庫)
- KADOKAWA (2021年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049134452
作品紹介・あらすじ
高校3年の夏、俺はあやせから桐乃の趣味について相談され、一緒に夏コミに来ていた。そこで会ったのはメルルのコスプレをした加奈子だった。
「ねぇ、あんたさー。加奈子とどっかで、会ったことね?」
聡い彼女は俺が偽マネージャーと同一人物だったことを指摘し、脅してきやがった。俺は桐乃の趣味がバレないよう、加奈子に従うことにしたが――
さんざん振り回されて、喧嘩をして、知らなかった一面を見せられて……俺たちの関係は急速に変化していく。
夏コミ3日目の、あの瞬間から始まるifストーリー。
これは、俺とあやせの物語じゃない。俺と黒猫の物語でも、俺と妹の物語でもない。――俺と加奈子の物語だ。
感想・レビュー・書評
-
一旦はストーリーが完結した「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」が「(ヒロイン名)if」を冠して、ナンバリングを付した続編を擁して刊行が再開されてから(もう)2年。3人目のヒロインは来栖加奈子でした。
人気のあるあやせと黒猫で「if」シリーズは終わりなのでは、と思っていたら伏兵の加奈子が来たので、こりゃ全ヒロイン出してくれるのかと思ったら、加奈子で「一段落」だそうです。
「あやせif」の上巻の後書き(だったかな?)には、「好評ならば続刊も検討」なんて書いてあったと思います。「if」シリーズとしては大本命の「黒猫if」の後に、「加奈子if」が続いたというのは「好評だった」ということなのでしょう。なのに加奈子で打ち切りとは…。麻奈実の立場っていったい…。
閑話休題。
その「加奈子if」ですが、PSPのゲーム「俺の妹がこんなに可愛いわけがないポータブル」のシナリオをに手を入れた程度の内容で、桐乃・京介をはじめとする登場人物の性格・振舞いやお互いの関係性は基本的に「if」のつかない「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」本編を踏襲しています。
これは「あやせif」と同様です。
どちらもゲームの京介高3の夏に共通ルートから個別ルートに入り、ヒロインが京介にちょっかいを出してくる様子、ヒロインからの告白、ヒロインの水着がみられるデートシーンを含む交際の様子、桐乃との対決、エピローグというプロットはほぼ同じです。
無理矢理上下2分冊と思しき「あやせif」の内容の薄さを反省したのか、今回は分冊にはされておらず、会話文多用による改行の多さや表現の一つとしての空白の多用などのラノベらしさはありつつも、特に「無理矢理分冊にした」感じは受けませんでした。
ただし、プロットが同じなだけに、二番煎じの感は避けられません。
交際中の二人の様子は普通の中高生の交際で始まり、ギャルゲ的な盛り上がりを見せます。
読みどころは世慣れて斜に構えている加奈子が照れたりデレたりするところ。
ヘタレな京介に対して積極的に動く癖に、いざとなると照れ照れな加奈子が可愛らしくて、まあこれが「ギャップ萌え」というやつなんでしょう。
ただし。
対決シーンはいただけません。
「俺妹」終盤の展開は、一言で言うと三角関係。
「親友の好きな人を自分も好きになっちゃってgdgd」という、古くは夏目漱石(もっと前にもあるか?)から新しくはtwitterで流れているマンガに至るまでよく見かけるテーマです。
自分の気持ちに正直に行動して恋人を勝ち得ても、友情を選んで自分の気持ちを隠し通してもそこにドラマが生まれるのですが、俺妹正史は生まれたドラマがすっきりしません。
ifではない12巻までのストーリー(「俺妹正史とします」)では、自分の気持ちに正直に行動したヒロインたちは京介の前に玉砕して死屍累々の様を呈するのですが、京介は桐乃の気持ちを知って、もしくは自分の桐乃への思いを自覚してヒロインたちを斬り捨てているのではありません。
「ごめん。俺、他に好きな子がいるんだ」と言われれば告白して断られたヒロインたちも諦めて新たな恋を探すことができるはずです。でも、「妹に彼氏ができるまで自分も彼女を作らない」なんて断り方をされたら…。
まあ、あやせも黒猫も、桐乃の京介に対する想いをわかっているから納得はしたのでしょうけれど、例えば赤城浩平がこんな断り方をしたら告白したほうは納得できないでしょう。
で、加奈子はその三角関係の外側にいるわけです。
加奈子の闖入で起こったのは「京介は桐乃と付き合うはずなのに。桐乃だから私たちは我慢しているのに。なんであんたなんかが」という、取り巻きによるいじめ、吊し上げです。
この展開、例えば「君の膵臓を食べたい」とか「海がきこえる」とかとすぐ名前を上げられるほどよく見かける「醜いもの」の典型です。
今回、そんな「醜いこと」をしているのがあやせだったり黒猫だったりするのが何よりもキツイのです。2人が京介のいないところに加奈子を呼び出して、2対1で問い詰めるというやり方が陰湿なのです。
「ばっかじゃねーの?」「自分の気持ちが一番大事だし」と一刀のもとに斬り捨てる漢っぷりが加奈子らしく、爽快なシーンだと見ることもできますが、やっぱり加奈子は涙を浮かべているわけです。メインにはなれないヒロインが「サブヒロインの癖に」って言われて涙ぐんでいるわけで、それを言っているのがあやせと黒猫なわけで、あまり読みたい展開ではありません。
今回桐乃とは直接対決していないのだけは救いかな。
一方で、気持ちを隠しちゃったのが麻奈実で、本能的に胡散臭さを感じている加奈子に料理を教えて応援して、京介と加奈子の結婚式の日に「ずっと好きでした」と告白するとか…やっぱり胡散臭いです。12巻のように殴り合いをしてもらったほうがまだすっきりします。
もとになっているシナリオがあるからなのかもしれませんが、「黒猫if」のインタビュー(http://blog.livedoor.jp/geek/archives/51530093.html)で言及していたように、桐乃だけでなく、あやせや黒猫も、別人格を連れてきて、ひたすら加奈子の魅力をクローズアップする一冊であって欲しかったのです。せっかくの「if」シリーズなのですから…。
ということで、「黒猫if」ほどの「これを待ってたんだよ」という感想を持てず、もやもやしたままエピローグ。
結婚後の加奈子がいわゆる「良妻賢母」になってしまっているのもなあ…。せっかくの加奈子の良さ、「男前だな、おまえは。――チビのくせによ」って京介も認めている長所を全否定してしまっているような。
エピローグの後に「或る結末の続き」が掲載されています。PSPの「俺の妹がこんなに可愛いわけがないポータブル」の特典として書かれた掌編だそうです。この手の掌編は散逸して読みたくても読めなくなってしまいがちなので、こういう形で採録してくれるのはありがたく思います。
結局、加奈子の描かれ方も、「麻奈実if」が刊行されないことも、なんだかちょっと消化不良な感じがします。
作者のインタビューによると「他に書きたいものがある」、後書きによると「次はエロマンガ先生⑬」だそうです。
作者の伏見つかささんは、ヒットを飛ばした「俺妹」「エロマンガ先生」の後は何を書いていらっしゃるのかちょっとわからないのですが、何か新シリーズを構想しているのでしょうか。
「俺妹」にしても「エロマンガ先生」にしても、サブヒロインだったはずのキャラクターがいつの間にかメインヒロインを食っちゃってその後の展開に苦慮することが続いているように思います。
一度生み出してしまったシリーズをどんな形であれ(例え読者の支持を得にくかったとしても)きちんと完結させようとする姿勢は見上げたものです。
ですが、もし次回作があるのであれば、万人の支持を得られるメインヒロインを造形するか、読者の反応で着地点が決められるような舞台を設定するかしないと、書いていてお辛くはないでしょうか。僭越ながら心配しています。次回作があるのならば、ぜひ読んでいてもやもやしない大団円を期待しています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本編では加奈子はそれほど目立ったキャラでもなかった印象だったが、加奈子ifでは加奈子の魅力が存分に発揮されており、ストーリーの終わり方としても納得のいくものだった。
-
「俺いも」も、これで一区切り。長かったような短かったような、面白かったような!
-
今回のヒロインは加奈子。
今までの中では一番意外性がある組み合わせ。
加奈子のお家事情を知れたり、努力する姿は眩しい。
あと京介といちゃついてて羨ましかった(*´;ェ;`*)←寂しい病の私には羨ましすぎる……彼氏が恋しくなりました(苦笑)
個人的には沙織と麻奈美好きなので、その√も書いてほしいなぁ……なんて思います。
せめて麻奈美だけでも(>_<)
ゲームシナリオがベースなので、伏見先生の気分次第では新たに書いてくれないかしらん。 -
なんでこれは1冊だけなんやろ
-
加奈子ちゃんif。本編ではあんまり活躍のない子と言う印象だったけど、、、めちゃくちゃかわいい。