死なないセレンの昼と夜 ―世界の終わり、旅する吸血鬼― (電撃文庫)
- KADOKAWA (2021年10月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049140439
作品紹介・あらすじ
世界が滅びてから、もうずいぶんと経った。
だが、干上がり、荒れ果てた大地にへばりついて、どっこいヒトは生きている。
そしてまた、ヒトではないものも――
だからあなたも、もしかすると目にすることがあるかもしれない。
荒野にサイドカーで現れる、オールドファッションなコーヒー屋台と、それを引っ張る、お気楽に退屈な永遠を生きている「吸血鬼(ノスフェラトゥ)」を――。
「一杯やってく? 話くらいは聞くけどさ、面倒ごとはごめんだよ?」
それは不死の少女が黄昏の時代に語り継ぐ、ご機嫌でお気楽な、ヒトの終わりの物語。
感想・レビュー・書評
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文明が滅んだ世界で旅をする吸血鬼。昼の姿と夜の姿を使い分けながらコーヒーを振る舞い、水を探しています。
少しだけ人間に歩み寄りながら、吸血鬼としてのドライさも強烈な連作短編。優しさと残酷さのバランス、フラットさが大好きでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
好きなやつでした。
文明が粗方滅んで水が貴重品になった世界を、まだ文明華やかなりし時代を知る不死者のセレンが旅をする。コーヒーを売りながら。
渇き荒んだ世界にもある瑞々しい人の営みを、基本的には傍観者として見つめるセレンの眼差しが温かく、読んでいて心地良かった。
語り部であるセレンを、過去を知りつつ、死や渇きと無縁の超越した立場でありながら人情味もあるキャラクターにしているのがとても上手くて、他のキャラクターや事件との距離感が絶妙。
また彼女自身の過去にも興味がそそられました。ただそこは語られないのが華なのかもしれませんが…。