ただ、それだけでよかったんです【完全版】 (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049155358

作品紹介・あらすじ

男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔だ』という遺書を残して―。次第に明らかになる壊れた教室。「革命は進む」悪魔と呼ばれた少年が語り始める時、驚愕の真実が浮かびあがる。松村涼哉の衝撃の原点が、ここでしか読めない書き下ろしを収録し、大幅加筆修正した完全版で新たに甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 『15歳のテロリスト』が話題作となった松村涼哉さん著の『ただ、それだけでよかったんです【完全版】』の概要と感想になります。

    いつの時代、場所でも無くならないスクールカースト。本作は他人の評価で自分の人格が数値化されるテストによって、見えない何かに束縛された生徒たちの日常を描いている。上位と下位の生徒は合わせ鏡のように真逆の扱いを受け、底辺にいる独りの男子中学生は「革命」を起こす。

    『15歳のテロリスト』は正義と悪のコントラストが分かりやすい作品であった一方、本作【完全版】はエピローグ相当のSpecial Episodeが追加されているものの、どんな感情を抱くことが正解なのか混乱に陥ります。完全に消化不良でしたが、忘れてはならない強いメッセージを感じました。

    消化不良という点で武田綾乃さん著の『その日、朱音は空を飛んだ』に似ていましたね。

  •  『菅原拓は悪魔です』

     遺言を残して自殺した男子中学生のK。

     なぜ、彼は自殺してしまったのか。

     そして、悪魔と呼ばれた菅原拓。

     人間力テストなるものがあり、そのテストで学年1位のKを含む上位4人の生徒をイジメたとされる人間力テスト学年最下位の菅原拓が起こそうとしている革命とは?

     8年前の電撃大賞作品の『ただ、それだけでよかったんです』の完全版が幕を開ける。

     私は、8年前に本作が発売された時に読みましたが、それ以来の再読でございます。

     8年前に本作を読んだことを思い出しても、かなりの部分を忘れているなと思いましたが、最後など大まかなことは覚えてはいました。

     また、本作品を読んでいる途中で8年前に書いた私の本作品の感想は中途半端だし、決してハッピーエンドではないけど、引き込まれて面白いという感想を抱いたらしい。

     そして、今回読んでみて思ったのは、そういう中途半端さは解消されていると思います。

     おそらくですが、大賞受賞時は電撃のライトノベルレーベルだからか、本作品に恋愛要素が中途半端に入っていた印象なのですが、それをあんまり感じないところが1つのポイントなのかな?と思いました。

     その分、男子中学生Kの自殺部分をより深く掘り下げており、Kの自殺の目的がより明確になったなと感じました。

     また、読んでいて、

     「もしかして、この作品の元は夏目漱石よ『こころ』もあってのではないか?」

     と思うほどに、Kの自殺はいろいろな解釈もできるものになっていると思いました。

     前回読んだ時は、そんなこと微塵も思わなかったので、8年経って読書に対する私の感性が鋭くなったのか、今回の完全版にあたり加筆修正されたからかはわからないですが、Kの行動、Kの自殺の意味を考えさせられる内容になっていたのだなと思いました。

     そんな本作品、なんで今になって【完全版】を出版したのだろう?と思ったのですが、なるほど、本作品の元々の話こそ8年前も今も変わらない、いや今だからこそより深く理解できる作品だったんだなと思いました。

     スクールカースト

     それをわかりやすくしたのが人間テストなのですが、これは要するに人気投票みたいなもの。

     つまり、上位になればなるほど学年、クラスの人気者ということになります。

     皆、できる限り上位になりたい。

     なぜなら、上位であるということで、クラスでイジメられることなく過ごせるから。

     変なシステムだなと思うかもしれませんが、私だってそうでした。

     イジメで自殺する子がニュースに取り上げられ出した頃、学校のクラス内でイジメられるというのは嫌だから、クラスの爪弾きにされないように、同じ教室内で他の人の顔色を伺いながら毎日過ごしていたという面は否定できないなと思いました。

     そして、いわゆるクラスで浮かないためには多少自分を殺してでも、他人の顔色を伺わないといけない。

     そういう世界が教室内にあったのも確かだし、今もあるんじゃないかな?と思います。

     他人の顔色を伺うために自分を多少殺す必要もあるし、多少スクールカーストを上げるために何らかの特技も身に着けないといけない(最近の場合はSNSでバズるとか。スシローの醤油ペロペロもそういう仲間内の悪ふざけや仲間内での承認欲求から行われたものだと思います)。

     そして、仲間はずれになった教室内の同級生を誰かがイジメたら黙認もしくは自分が仲間はずれにならないためにそのイジメに加わらないといけない。

     そんな暗い教室の一面を利用したミステリーでもあり、ライトノベルでもある作品だと8年ぶりに再読して思いました。

     今だからこそ刺さる完全版

     ただ、それだけでは良くなかった…

  • 面白かった。一本の映画見てる感じだった。
    真相がもう一捻りあったのが良かった!

  • 25万部突破『15歳のテロリスト』著者の衝撃の原点が、完全版で甦る!
     男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔です』という遺書を遺して――。
     背景には、菅原拓による、Kを含む四人の生徒への壮絶なイジメがあったという。だが、拓は地味な生徒で、Kは人気者の天才少年。またイジメの目撃者が誰一人いないことなど、多くの謎が残された。
     なぜKは自殺したのか? 次第に明かされていく壊れた教室。
    「革命はさらに進む」
     悪魔と呼ばれた少年が語り始める時、驚愕の真実が浮かび上がる――!

     空前の衝撃作にして、松村涼哉の衝撃の原点が、大幅修正&書き下ろし収録の完全版で甦る!

  • 読む手が止まらない。
    ほんとに松村涼哉先生の書く小説は最高の一冊である。
    他人の評価は自分も登場人物たちと同じくずっと気にしている。
    昔も今も、たぶんこれからも、ずっとずっと気にしながら生きていくんだろうなって思う。
    他人の評価で自分の価値って決まってしまうんだなって気持ちは読み終えた後も消えることはないけれど、それでも他人の評価に囚われては自分を壊してしまう事実を知ることができた。
    だからこそ、自分で自分を評価することは大切なことなんだなと思った。
    読み終えて、ただ一言。
    松村先生の本はどれも最高傑作である。

  • あんまり好みじゃなかったです。

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著者プロフィール

第22回電撃小説大賞で《大賞》を受賞した『ただ、それだけでよかったんです』(電撃文庫)でデビュー。『15歳のテロリスト』(メディアワークス文庫)が発売から反響が続き20万部を超える代表作に。以降、『僕が僕をやめる日』『監獄に生きる君たちへ』『犯人は僕だけが知っている』も発売即重版のヒット作となっている。

「2022年 『暗闇の非行少年たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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