- Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
- / ISBN・EAN: 9784052041297
作品紹介・あらすじ
7月の暑い日、わさび園の作業所の天井からぽとりと落ちてきたのは親指のさきくらいの小さな小さな生き物、モグラの仲間「ジネズミ」だった。筆者が創意工夫と観察を続け、小さな命を育てていく感動作。第5回子どものための感動ノンフィクション大賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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タイトル通り、天井から落ちてきたジネズミと暮らした日々を描いたノンフィクション。
手探りでのジネズミ育てについてはもちろん、著者のライフワークである渡り鳥の観察や、ワサビ園の仕事など、語られる全てが興味深かった。
感傷的になり過ぎず、淡々と書かれているけれど、ジネズミへの温かな思いや野生動物への敬意が伝わる。
写真やイラストも多く、子どもも楽しんで読めそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハチクマなとの鷹の渡りの調査をしながら、調査のない時期は安曇野のわさび農園で働く著者が、天井から落ちてきたジネズミの赤ん坊を育て、看取るまでの記録。この本が初めての著書だが、とても読みやすく、情緒的になりすぎない、抑制のきいたよい文章。
ジネズミを死ぬまで飼ったことを、野性動物なんだから途中で放すべきだったと言う人がいるかもしれないが、何の情報もないまま手探りで育てたから、放すタイミングがわからなかったことは、最後の文章から伝わってくる。ジネズミを飼育した人は他にもいるかもしれないが、こんなに細やかに、愛情を持って観察した人はいないのではないかと思う。
著者の愛情が伝わってはくるが、読んでいてもジネズミ自体はなつくわけではないし、見た目がかわいいわけでもないし、食べ物は昆虫やミミズで、その点でも「飼いたい」と思う人は少ないだろう。途中でちょっとだけ出てくるヤマガラのビービーの方がよほどかわいい。
こんなに可愛くない生き物にこれだけの愛情を注げる著者に敬意を抱かずにはいられない。(それでも読んでいるうちにジネズミに対して好意を抱いたが。心を通わせるような動物ではなくても、私達と同じように母に守られて育ち、老いて気力体力が落ちて死ぬのは同じ。その生き物としての姿に同類として共感した。)
ジネズミを研究する人も参考になることが多いのではないかと思う。
絵はあべ弘士で、動物の絵は特別に上手い人ではあるが、カラーの写真がもっとあれば、より分かりやすくいい本になっただろう。対象は小学生だろうから。 -
安曇野のわさび園でバイトをしながら、野鳥観察をしている著者が、わさび園の小屋の天井から落ちてきたジネズミの赤ちゃんを育てることになる。約2年の育児(?)日記。
あべさんの挿絵や、観察している野鳥の写真もあって興味深く読めました。 -
長野県でタカの渡りを研究している佐伯さんは、渡りのない季節はわさび園の手伝いをしている。わさび園の作業場の天井から、小さな小さなネズミの赤ちゃんが落ちてきた。らっかせいのからにおさまってしまいそうなそのネズミは、「ジネズミ」という名前ののモグラの一種だった。その日から佐伯さんは子ネズミのお母さん替わり(男だけど)になった。よく生態の分からないジネズミの子育ては手探り状態。何を食べるのかな?ミミズ?虫? 寿命が短いといわれるちいさなこのジネズミと暮らした3年間の記録。
近年の日本のノンフィクションの中でもピカイチです! -
「ジネズミ」って知っていますか?数年前に我が家のご近所が建て替えになり、天井裏にネズミが居着いて困ったことがありました。同じような「ネズミ」なのだと思って読み始めると、どうも「ネズミ」と名前がつくものの、種としては「モグラ」の仲間の体長わずか3cmの「ジネズミ」なのです。随所に創意工夫を施したジネズミハウスを作り、「ちうちゃん」と名付けたジネズミを観察、育てていきます。小さなジネズミの生き生きとした様子をぜひ一緒になって味わってください。この作品は第5回子どものための感動ノンフィクション大賞を受賞しています。