たまらねぇ場所築地魚河岸 (学研新書 66)

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054043831

作品紹介・あらすじ

魚をひっくり返すくれぇなら、おめぇがひっくり返れっ!-築地のマグロ仲卸三代目が、自身の目で見た魚河岸の内側、そこで働く愛すべき人々、魚と魚食文化の未来を熱く語る。小気味よい江戸っ子口調で繰り出される、魚河岸で起こった生のエピソードの数々。これを読まなきゃ、河岸は語れない。

感想・レビュー・書評

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  • [ 内容 ]
    魚をひっくり返すくれぇなら、おめぇがひっくり返れっ!―築地のマグロ仲卸三代目が、自身の目で見た魚河岸の内側、そこで働く愛すべき人々、魚と魚食文化の未来を熱く語る。
    小気味よい江戸っ子口調で繰り出される、魚河岸で起こった生のエピソードの数々。
    これを読まなきゃ、河岸は語れない。

    [ 目次 ]
    1章 築地の人々(築地の素顔;魚河岸の人と仕事;ここでなら生きていける面々)
    2章 築地魚河岸の内側(魚河岸の役割;セリの現場;魚河岸の道具)
    3章 魚河岸四百年の歴史から見えるもの(魚河岸の歴史、イッキ語り;日本の築地から世界のTSUKIJIへ)
    4章 仲卸が語る魚の流通・経済学(「魚っ喰い」が支える魚食文化;一番美味しい魚は一番安い魚;魚にブランドはない)
    5章 魚食スペシャリスト検定はこうして始まった(魚を知らない日本人が増えている;魚食は文化だ;魚を絶滅させないために)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 威勢が良くて、キビキビしていて、立ち居振る舞いが堂々としている。
    一度でも築地に行ったことがある方なら、あの場所に働く人たちの、独特の存在感をご存知でしょう。

    そういう築地を仕事場とする人の多くが醸し出す独特の雰囲気が、どのように培われていくのかをつぶさに知ることができます。

    魚屋には絶対ならないつもりだったのに、お坊ちゃん高校を卒業する間際に、
    父親に「余命いくばくもない」と告白されて、マグロの仲卸業を継ぐことに決めた生田與克さん。
    (その後、父上は三十年近く、生きのびるのですが……)

    やむを得ず飛びこんだ「築地」の水に合っていたようで、個性的な同業者たちとの交流も日々おもしろく、マグロ仲卸の「鈴与」の立派な三代目となります。

    お坊ちゃんから魚河岸の男に生まれかわる瞬間のことが書かれていました。
    魚河岸で働くようになったものの、「バカ野郎」の怒声飛び交う空気になじめず、ビビりまくっていた時期でした。
    ある日、ターレという築地場内を走り回る小さなトラックに足を轢かれてしまいました。

     「いってえなあ〜この野郎!」と怒鳴ってしまった。
     そのターレも足を轢いたことが分かったようで、すぐに止まった。
     そして振り向きざまに、今にも「ごめん」と言いだしそうな、申し訳なさそうな顔をしていたのだが、俺の間抜けなビビり顔を見た瞬間、
     「なんだぁ〜このガキィ。てめえがボケッとしてっからだろっ!」
     と逆に凄まれちまった。またまた俺は反射的に、ご丁寧にも
     「どうもすみませんでしたぁ〜」と直立不動で謝っていた。

    轢いてしまった相手がビビっているのを見た瞬間、居丈高な態度に急変する。
    後から考えると癪に障ってしょうがないものの、自分の情けなさも痛感します。
    この事件から生田さんは、「気」というものの大切さに気がつきます。
    いつも、なにかに脅えていてはいけない。ナメられない「気」を持とうと意識するようになります。
    高校生が築地の男に変わった瞬間でした。

    築地の男を作るマニュアルはありません。

    魚河岸三代目も、時代に合わせて、マニュアルづくりを試みたことがありました。しかし、

     基本的に魚というものは自分の予定通りに入荷してくれないものだ。
     気まぐれな自然が与えてくれた結果が出てから、あたふたと慌てて対応するものなのだ。
     目前に魚が現れてから対応する。
     いわば、「明日は明日の風が吹く」を地で行っているようなものだ。
     だから、マニュアルの文末すべてに、「臨機応変に対応すること」と書かざるを得なかった。
     で、作るのをやめちまった。

    では、マニュアルがない世界で、どうやって新人が仕事を覚えていくか。

     とある本で読んだことがあるが、山本五十六の言葉に
     「やってみせ 言ってきかせて させてみせ ほめてみせねば 人は動かじ」
    というのがあるそうだが、これが魚河岸の人材育成そのものなのである。

     魚河岸の仲卸は、俺以外、どこのオヤジ(社長)もその店の一番の商品の目利きであり、
    働き者(と少なくとも本人は思っている)なのである。
     だから、そこのワカイシ(若い衆)は、自ずとオヤジを見て覚えることになる。

    マニュアルのない「現場主義」ということですね。

    「築地って、へえー!」という目からウロコのネタが満載。
    今度行くときには、ちょっぴり築地魚河岸通になっているでしょう。

  • 2010.02.07 朝日新聞に掲載されました。

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著者プロフィール

築地魚河岸マグロ仲卸「鈴与」三代目昭和37(1962)年東京都中央区月島生まれ。高校卒業後、家業を継ぐ。マグロ仲卸業を営む傍ら、講演会や執筆活動、ブログ、テレビ、ラジオ等で魚食文化の普及に努めている。築地市場内仲卸業者「鈴与」代表取締役、一般社団法人シーフードスマート代表理事。

「2017年 『報道特注(本)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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