酒井勝軍: 「異端」の伝道者

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  • 学研プラス
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  • Amazon.co.jp ・本 (637ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054051324

作品紹介・あらすじ

太古日本には超文明があった?モーセの裏十戒石板が日本にあった?キリストは日本に渡って青森で死んだ?日本とユダヤは同祖先?ハルマゲドンで天皇が世界を統一する?…など、今日にも伝わる奇矯なオカルト説を唱えた男・酒井勝軍の生涯と、知られざる近代異端宗教史。

感想・レビュー・書評

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  • 本の厚さといい対象への強烈な情熱といい、昨年の増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』を髣髴させる。酒井勝軍は格闘家ではないので『木村政彦〜』みたいに血湧き肉躍るとはいかないもの、裕福な家庭に生まれながら極貧生活に転落、キリスト教の洗礼を受けて苦学してアメリカ留学を果たし、賛美歌による伝道を目指して学校を設立する一方、日ユ同祖論を論じ、日本にピラミッドを発見し、とそうとうに波瀾万丈な人生を送った。
    僕なんかは本書でちくりと批判されている好事家の類なので、竹内文献に関わって日本にピラミッドを発見したオカルトのおじさんという印象ぐらいは持っていたが、明治から戦前にかけての日本におけるキリスト教伝道史において重要な人物だとは知らなかった。そして著者は、そういう好事家に矮小化されてしまっているイメージを塗り替えるべく、彼の思想を丁寧に読み直し、近代主義に対峙して日本と世界の新しい神話を語ろうとした者としての酒井勝軍を描いていく。
    竹内文献が偽書であることも酒井の思想に共鳴する人々がカルトっぽく見えることも認めた上で、宗教ってそういうものだし、近代合理主義への批判として今なお酒井の視点は有効だ、と著者は強く主張する。子供のころにオカルトにかぶれてやがて懐疑的な見方に転向した、ぬるい近代合理主義的好事家の自分には刺激的な本だった。

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