なつねこ (講談社の創作絵本)

  • 講談社 (2011年6月23日発売)
3.81
  • (13)
  • (16)
  • (23)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 205
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (36ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061324701

作品紹介・あらすじ

四季ねこ えほん 夏

ここちよい風鈴の音の秘密は、夏の思い出ーー。
風鈴の音色が大好きななみこは、ある日やってきた妹猫にさそわれて、風鈴工房を訪ねました。そこで、風鈴職人をしている兄猫から風鈴の音の秘密を教わるのです。

ふしぎな猫と少女の出会いを描いた、心あたたまる物語。

※読み聞かせ 5歳から
 ひとり読み 7歳から

・文/かんのゆうこさんからのメッセージ
今から15年ほど前、私はデパートの郷土展で、ひとつの江戸風鈴を手に入れました。紫陽花の絵が描かれたその風鈴を、私はとても気に入り、毎年夏がくるたびにベランダにかけて、ガラスの揺れる涼やかな音を楽しんでいました。そうしていつか、この美しい風鈴の物語を書いてみたいな……と、ひそかに思っていたのでした。
少女と四季ねことの不思議な出会いと交流を描いた「四季ねこ えほん」シリーズも、あっというまに三作目となりました。今回出版される「なつねこ」は、日本の夏の風物詩、「風鈴」の音の秘密を描いた、幻想的なお話です。表紙をご覧いただくとわかるように、今回はなつねこだけではなく、とてもかわいらしい妹猫が登場します。脇役ながら、とても大切な役割を担います。この子の存在にも、ぜひご注目ください。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  この絵本は、子どもが風鈴に思い描く素敵な感性と、世界に於ける人と自然との繋がりを見事に共鳴させており、時にファンタジーは子どもの想像力から生まれたのかもしれない、そんな素晴らしさを改めて実感させてくれます。


     女の子「なみこ」は、毎年夏になると家の軒下にかけられる風鈴が大好きで、そこから響き渡る音には特別な思いを抱いていました。

    「あの おとは かぜが うたを うたっているんでしょう?」

    「あら、あれはガラスの ゆれる おとよ」

     お母さんにそう言われても納得できない、なみこは、ある夕方、庭の向こうから「チリリリン……」という音が聞こえたので、そこに行ってみると、浴衣を着た可愛らしい猫が、風鈴を片手に提げてちょこんと立っており、その猫「こなつ」によると、その風鈴は兄さんが作ったもので、もしよかったら、うちの風鈴作りを見に来ませんかと誘いを受けて、なみこはどうしても聞きたいことを我慢しながらも、喜んでついて行くことに決めました。

     北見葉胡さんの絵は初めて見たが、表紙の幻想的な絵から、日常的な扉絵へと変わる意外性のある始まり方が上手く、その見せ方も、扉絵とその次の見開きの絵を正反対の方向から見せながら、スイカを食べる前と食べた後で時間の経過もそれとなく知らせていて、更に部屋の小物たちを丁寧に描いている中(工房の猫型のかまども印象的)、風鈴とお似合いの夏の風物詩といえば、ぶたの蚊取り線香という押さえるべき点も押さえている中、植物のあまりに直立した感じにやや不思議な感覚を抱かせる、そんな懐かしくも幻想的な世界観に惹き付けられて、こなつについてお店に向かって歩くなみこの姿は、夕方のほのかに茜射す空景色もあって、どこかお祭りに行くような期待感に満ちている中、ついに風鈴を作った「なつねこ」と出会います。


     この絵本を読んで、私が心を動かされたのは、風という自然の存在にとても親しみやすさを与えながらも、それがまるで子どもの人生を表しているように感じられたことです。

     その擬人化したように描いた風の存在は、まるで子どもが遊びに出かけていって、やがて帰ってきては、たくさんの素敵な思い出話を聞かせてくれる、そんな姿と重なるものがありました。

     そして、そんな思い出たちはキラキラとした輝きに満ち溢れた、かけがえのない大切なものであり、それが『かぜのうた』と結び付いたことにも肯ける、風鈴の涼やかで心地好い透き通った一つ一つの音のきらめきは、まるで子どもの純粋な美しい世界そのものを表しているようでもあり、風鈴の音にどこか懐かしい響きを感じさせるのは、今も昔も存在する風が、かつての私の思い出を運んで来てくれているからかもしれない、そんな共鳴できるものを感じさせてくれた、自然と共に生きる素晴らしさなのだと思います。


     「あきねこ」「ふゆねこ」「はるねこ」と続いてきた、かんのゆうこさんの『四季ねこ』シリーズも、本書で完読となりました。

     どの作品もそれぞれの季節と密着した、猫と子どものちょっと不思議な心温まる交流を知ることによって、子どもが猫に対して抱いている特別な思いを実感しながらも、猫が子どもに対して、そうした思いを抱いてくれていればいいなという願いを叶えてくれた印象に加え、こんな不思議な状況も猫だったらあり得るのかもという気持ちとなったことに、改めて猫の持つ神秘性を感じさせてくれました。

    • たださん
      翠さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます(^^)

      そうなんですよ。
      物語は全て、かんのゆうこさんが書いているのですが、絵は全て別...
      翠さん、こんにちは。
      コメントありがとうございます(^^)

      そうなんですよ。
      物語は全て、かんのゆうこさんが書いているのですが、絵は全て別の人が描いているところに、季節それぞれの個性が表れているようで面白いです。
      ぜひ他の三作品も読んでみて下さい♪

      「なつねこ」、最初に表紙を見たときは、「なぜ雪が降ってるんだ?」と思ったのですが(笑)、その理由付けがとても優しく素敵で、空を見るときに色々と思いを馳せてみたくなりました(*'▽'*)
      2024/07/21
    • 翠さん
      絵は別の方なんですね!
      いつも基本的に絵だけで判別しているので気付かない訳ですね(^◇^;)
      なつねこを読んだのも暫く前になってしまったので...
      絵は別の方なんですね!
      いつも基本的に絵だけで判別しているので気付かない訳ですね(^◇^;)
      なつねこを読んだのも暫く前になってしまったので、4冊まとめて読んでみようと思います♪
      2024/07/21
    • たださん
      私も実は、「あきねこ」だけ大分前に読んでいて忘れかけていたところを、ブク友さんのおかげで思い出して、こうして完読することができましたが、「あ...
      私も実は、「あきねこ」だけ大分前に読んでいて忘れかけていたところを、ブク友さんのおかげで思い出して、こうして完読することができましたが、「あきねこ」はもう一度読んでみたいです(=^_^=)
      2024/07/21
  • 続いてなつねこ。
    それぞれ絵を描いている方が違うということで、絵の違いもまた見どころですなぁ(๑>◡<๑)
    何年か前に一度よんていたんだけど内容をあまり覚えてなかったんだけど、読んだら娘たちも思い出したみたいで。
    記憶に残る絵本だったみたい。
    私の夢は日本家屋に住むことなんだけど、この子の住んでいる家はなんかこう私的にとても魅力的で。
    こんな縁側のある家に風鈴吊るしてエアコンいらずの生活がしたーい!
    と思いながら読みました。
    明日はあきとふゆ。
    楽しみだなぁ♪

    • たださん
      翠さん
      こちらにもお邪魔いたします(^^)

      題材が風鈴に、北見さんの絵がまた涼しげで風流ですよね。私も記憶に残る素敵な絵本で、その誕生の過...
      翠さん
      こちらにもお邪魔いたします(^^)

      題材が風鈴に、北見さんの絵がまた涼しげで風流ですよね。私も記憶に残る素敵な絵本で、その誕生の過程には、かんのさんの自然に対する優しさが感じられます。

      女の子の住む、昔ながらの日本家屋は、私の母方の祖父母の家がまさにそんな感じでして、もう建て直して変わってしまいましたが、子どもの頃に帰省したときは、まず家と家の間隔がとても離れていることに驚きましたが、まさに縁側に座って、庭を眺めながら風鈴の音を聞くことができました。当時は今ほどの猛暑では無かったから、昼間でも落ち着くことができたというのもありますけどね。今となってはいい思い出です。

      あきふゆのレビューも、楽しみにしてますね(*'▽'*)
      2024/08/11
    • 翠さん
      たださん、いらっしゃいませ♡
      ありがとうございます(≧∀≦)

      日本家屋と風鈴のセットでの経験がおありだなんて羨ましい!
      私の祖父母宅も日本...
      たださん、いらっしゃいませ♡
      ありがとうございます(≧∀≦)

      日本家屋と風鈴のセットでの経験がおありだなんて羨ましい!
      私の祖父母宅も日本家屋ではあるものの、風鈴は一度も吊るしたことがないし、世代交代してしまってなかなか行く機会もなくなってしまいました。。
      だだっ広くて風が抜けて気持ちよかった記憶があります(*^^*)

      なつねこは見返しが小夏ちゃんが集めていた風の粒なんですよね。
      最初雪かと思っちゃったけど汗
      そんな細かいこだわりがとっても素敵です♡

      絵本を読むのは寝る前と決めているので、私も今から秋と冬を読むのが楽しみです♪
      2024/08/11
  • なみこがガラスの風鈴の音の奥から聴き取った、「すきとおった かぜのうた」。その秘密を教えてくれた、なつねことこなつの猫きょうだい。夏の日盛りのお家や、熱い火が燃える工房の絵からも涼しげな風が吹き渡るようです。

  • 夏が訪れるたびにこんなステキな出来事を思い浮かべれるなんて、
    昨今のあの猛暑続きでも、夏っていいなと感じる1冊。

  • 夏の夕暮れ・・・<なみこ>は、風が歌っているような「風鈴」の音が大好きでした。涼しげな風鈴の音に耳をすましていると「なみこちゃん、こんにちは。 私<こなつ>と言います」浴衣を着た可愛らしい仔猫が、風鈴を片手に下げて立っていました。こなつの兄さんがつくっている風鈴を見に来ないかと誘われて「なつねこ工房」へ行ってみると・・・〟日本の夏の風物詩「風鈴」の音の秘密を教えられる、夏の日の思い出が描かれた<かんのゆうこサン>作、<北見葉子胡サン>絵による幻想的な読み聞かせ絵本です。

  • 風鈴がテーマの、ひっそりわくわくするお話。
    夏の鮮やかで大きな植物と、少しレトロな深みのある色合いが素敵でした。

  • 絵本の良さって色々あるって思うけれど、日常だけど日常じゃない、でも日常の中にちょこっとある素敵な世界に触れることができた。

    なんか、いいねー。

    ちょっといい栄養になる絵本だった。

  • 2024.5.27 2-1
    2024.6.10 2-3
    2024.7.8 2-2

  • 息子7歳12か月
    息子が喜びそうな本を図書館から借りてきて読み聞かせ…最近は息子が一人で読むようになってきて、母はサミシイ。

    〈親〉
    絵が好き ◯
    内容が好き ◯

    〈子〉
    何度も読む(お気に入り)
    ちょうど良いボリューム
    その他◯

    女の子が主人公だと、手を出さなくなる。
    素敵な作品なんだから、読んでほしいのに。

    ねこ、かわいい。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00454251

    ***あらすじ***
    ここちよい風鈴の音の秘密は、夏の思い出ーー。
    風鈴の音色が大好きななみこは、ある日やってきた妹猫にさそわれて、風鈴工房を訪ねました。そこで、風鈴職人をしている兄猫から風鈴の音の秘密を教わるのです。
    ふしぎな猫と少女の出会いを描いた、心あたたまる物語。
    (出版社HPより)

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東京都生まれ。東京女学館短期大学文科卒業。児童書に、 「ソラタとヒナタ」シリーズ(絵・くまあやこ)、「はりねずみのルーチカ」シリーズ「りりかさんのぬいぐるみ診療所」シリーズ(ともに絵・北見葉胡)(いずれも講談社)、 『とびらの向こうに』(絵・みやこしあきこ/岩崎書店)など。 絵本に、『はるねこ』(絵・松成真理子)、『はこちゃん』(絵・江頭路子)、プラネタリウム番組にもなった『星うさぎと月のふね』(絵・田中鮎子)(以上、講談社)などがある。

「2023年 『はりねずみのルーチカ 精霊たちのすむところ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

かんのゆうこの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×