- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061457751
感想・レビュー・書評
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元読売新聞記者の黒田清氏が亡くなつてから20年。まだ69歳でした。生前、この人の著書を積極的に読んでゐた訳ではなくて、寧ろ本多勝一氏のある文章で披露されたエピソオドが一番印象に残つてゐます。即ち。
とある洋食レストランで黒田氏と会食中の本多氏。話に夢中になり、手元のフォークやナイフを操る手がお留守になつたさうです。するとウェイターが近づいてきて、「おさげしてよろしいですか」と皿を片付けやうとしました。そこで黒田氏は、殆ど絶叫するやうな声で「まだ!」と叫んださうです。「まだ、喰ふてんがな!」
確かに、食事を中断して話に夢中になつてゐるとは言へ、まだ皿に料理が残つてゐる状態で「下げてよいか」と聞くのは非常識千万であると本多氏も著書で指摘してゐました。同時に、さう聞かれると殆どの日本人は、まだ食べる意思があつても、「はい」と同意してしまふのだらう、とも。
それがどうしたと問はれても困りますが、この『新聞記者の現場』は、そんな黒田氏の反骨精神がびしびし伝はつてくる一冊であります。
黒田氏は朝日新聞の入社試験は不合格となり、大阪進出した読売に入社しました。四五年経つた頃、あの辻静雄氏が入社してきたさうで、当時から肥つてゐたさうです。良い記者になると予感したが、周知のごとく彼は料理の世界に転身し、読売は優秀な記者を失つたと黒田氏は残念がつてゐます。
本書が書かれたのは35年も前の事。素人のわたくしには現在どう変り、変らないのか知りませんが、記者が駆使するツール類は劇的に変化してゐる一方で、その本質はあまり変らぬのではないかと思はれます。
新聞記者といふ仕事を、黒田氏自身の経験を重ね合せて語つてゐます。目次の見出しは、「サツ回り」「警察本部」「殺人事件」「遊軍記者」「事件遊軍」「インタビュー」「記者の学校」「海外取材」「誘拐報道」「特ダネと主観記事」「新聞記者の可能性」といつた塩梅です。
黒田氏は当時の記者が既に、警察の発表記事ばかり追ひ、自らの靴底を減らして足でネタを稼がない事に苦言を呈してゐます。誘拐報道に関しては人命第一を謳ひながら、報道協定は本来あつてはならない、とやはりマスコミ側に立つ発言でした。
「主観記事」に関する主張はまさにその通りと頷くところ。お前が頷いても何の意味も無いと言はれさうですが。兎に角、未だに「不偏不党」の意味を取り違へてゐる人が多いと存じます。
他にも、一般的な心得から取材・インタビューのコツなど、参考になる部分大なり。ユウスフルな一冊と申せませう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分はなぜ記者になりたいのか、自分にしか書けない記事は何かを考えさせられる本だった。
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05/05 春日部富士書店 ¥50