流通列島の誕生 (講談社現代新書 1261 新書・江戸時代 5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061492615

作品紹介・あらすじ

庶民層の需要が高まるにつれ、江戸期二百七十年の間に流通網は発達し、政治の世界をも動かした。江戸期の商品流通を分析。

感想・レビュー・書評

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  • 古本で購入。

    テーマは「庶民から見た日本経済史」。
    江戸時代のほとんどの人々と関係した分野である「流通」の視点から、「流通列島」を形成した日本の庶民層をとりあげる。

    著者によると、流通から見た江戸時代は3つの時代に分かれるという。
    第1の時期は17世紀。
    荷主と注文主を結び付け、扱った商品の額に応じて口銭を受け取る「荷受問屋」がどこの生産物であれ、売りたい荷主があれば購入者を求めて紹介した。輸送も請け負った荷受問屋は、各地の荷主・購入者という「点」を結ぶ「線」の役割を果たした。
    17世紀は「点と線の商品流通」の時代であったが、「点」の商人が方向転換すれば「線」のつながりはすぐ終わった。

    第2の時期は元禄期以降、18世紀。
    庶民層の需要の拡大とともに、問屋層(仕入問屋)による諸商品の集荷・販売網が成立した。
    生産者→仲買・小仲買→買次→仕入問屋という集荷網、仕入問屋→有力小売商という販売網。この仕入問屋を要とした「網の商品流通」が機能していたのがこの時期だった。

    第3の時期は化政期以降、19世紀に入り、庶民層の需要がいっそう高まり、諸商品の生産がきわめて活発となった頃。
    幕府や藩の規制にかかわらず、株を持たない中小問屋や小売商も数多く開業する。商品流通も都市の問屋を介することなく、消費者の需要に応じて生産された諸商品が、生産者と消費者を結び付ける商人や輸送業者によって各地に運ばれるようになる。
    19世紀に入った頃に農村の経済力が回復・上昇したことで、農村や付近の在町で商品が生まれるようになり、農民自身が生産・流通に関わって貨幣収入を得ることが可能になってきた。この問屋の網の目にかからない「面の商品流通」がこの時期の特徴である。

    「人や物の流れ」というのが好きなので読んでみたが、なかなかおもしろかった。
    巨大消費都市の江戸を支えた生産者、という視点が興味深い。もう少し図解があるともっとわかりやすいと思う。

  • 1995年刊行。著者林は流通経済大学名誉教授。大石慎三郎氏がはしがきを担当した「新書・江戸時代」シリーズ。教科書的江戸時代像に対するアンチテーゼを繰り出すこのシリーズは、固い頭をほぐすのにうってつけであるが、本巻は流通問題、中でも海の路が主題。海の路の重要性は、考古学的知見を踏まえ、縄文~古代期の模様が多く議論されてきたよう。が、本書の対象は江戸時代。元来、菱垣廻船・樽廻船等は著名だが、流通品と地域につき、時期を分け検討。具体的な史料を基にしつつ、導き出される結論は抑え気味なので真が置ける。
    ①点・線⇒②網の目⇒③面(目の細かい網とも)への変遷イメージは判りよいし、幕藩的な領域支配(小規模独立国家連合)や、米が基軸通貨的役割を果たす経済活動が立ち行かなくなる基幹要因を、具体的事象で解き明かされている印象を持ちながら読み進められた。なお、衣食(木綿・絹・麻/米・塩・醤油・酒等)は豊富な内容だが、住、つまり木材の移出・流入があまり書かれていないのは残念。徳川の林政は利用と保全の調和という意味でも上手くいったと聞いたことがあり、流通はここに関わる興味深いテーマなため。

  • 女性の話より、もっと数値を元に詳しければよかった。正直プロローグがもっとも面白かった。

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