人生をいかに生きるか 上 (講談社学術文庫 446)

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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061584464

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  • 林語堂『人生をいかに生きるか(上)』 190810

    人間が砂嚢的な気質を発揮するようになるまでは、真に文面的とはいえない。 108

    現在の人類に、私は肉食動物と草食動物を見ている、やさしい気質のものと、そうでないものと。草食動物的な人は、自分自身の仕事を考えながら一生を送るが、肉食動物的なものは、他人の生活におせっかいをして自分の生計をたてる。
    世界のなかばは、自分の仕事をするのに時間を費やし、世界のなかばは、他人に自分の仕事をさせるためにか、他人が何もできないようにするためか、そのどれかのために生きている。 108
    人類の真の進歩は、肉食動物的な種類の人間に対して、草食動物的な人類を増加させることにあるのである。 109

    人間の権威というものは、中国文学の賛美の対象たる自由人の四つの特徴からなっている。すなわち、遊戯的好奇心、夢見る能力、その夢を訂正するユーモアの感覚、最後に所作の気まぐれと奔放さである。この四つのものが合すると、アメリカのいわゆる個人主義の教義を中国式に換骨奪胎したものになる。 124

    われわれの演劇的本能は、かように深刻なものであるから~真実の人間の本能にしたがって自分のために生きてゆくのではなく、社会から推奨されるために生きてゆくのである。中国の俚諺にあるように、「他人の女の結婚式の晴衣を縫っている老嬢」のようなものである。 176

    おそろしくひねくれた老子の「老獪」哲学は、古来中国人の最高理想たる平和、寛容、素朴、知足の精神の素地となってきた。これは一見逆説的に見えるが、事実である。かような教義には愚人の叡智、韜晦の利、弱者の力、また真実の意味での懐疑に徹するものの素朴さが含まれている。 177

    この笑う三老人(陶淵明=儒教、僧長=仏教、陸修静=道教)は、虎渓三笑図といって、中国の絵画によくある画題となった。すなわちそれは、無碍無憂の三賢者の歓談愉楽のシンボルであり、三種の教義が、ユーモアの感覚で統一されていることをしめすものである。 198

    閑適生活を楽しむには、金はいらない、まったくいらない。閑適の真の楽しみは、金持ち階級のものではない。それはただ、富貴をもっとも冷笑する人々にのみ、見出すことのできる楽しみである。 258

    生者必滅、すなわち人間は結局無に帰し、ろそくの火のように消えはてるべきものであるということを信ずるのは、私にいわせれば、すばらしいことだ。こういった考えを持つと、気持ちが冷静になり、多少の哀感をも覚える。多くのものは詩的な気分になる。
    しかしなんといっても、こういうふうに信じてこそ、処世の決意もかたまり。思慮ぶかく真実に、またつねに一定の諦観をもって生きてゆくことができるのである。ここにまた平和がある。なぜなれば、真実の平和は、最悪のものを受けいれる心境に生まれるからである。261






  • 中々面白い。

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