論文のレトリック (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061586048

作品紹介・あらすじ

本書は、論文を書くことはレトリックの問題であるという視点から、構造的な論文構成の戦略論と、でき上がるまでのプロセスをレトリックとして重視しつつ論文の具体的なまとめ方を教授した書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 論文のわかりやすいまとめ方の解説です。
    終章には、会話を日本人が軽視していることが、論文をうまく書けない理由ではと推測しています。
    「会話にかえれ」、音声とリズムの上に会話がなりたっているからで、それを論文にも適用せよが結論かと思いました。

    気になった点は以下です。

    ・よい論文は、統一、連関、展開に置いてすぐれていること、明確性においてすぐれていること
      統一 主な問いが論文の大黒柱、焦点として全体を貫いていること
      連関 全体がいくつかのまとまった部分に区切られていて、その部分が相互につながっていること
      展開 主問、副問に対する答が論理と証拠で十分に固められて肉付けされていること
      明確性 読者が苦労せずにすらすら読める、論旨をつかめる、すっきりしている

    ・文書による試験答案をまとめるためにもっとも肝心なこととは「問題の問がなにか、どういう種類の問かをよく確かめ、それに答えること」
     そして、「問われていないことには触れず、問われていることに十分に答える」です。

    ・よい論文とは焦点をはっきりさせること、論旨を明快に、筋道を明らかにすること。そのためには、「問題を見出すこと、問を明らかにすること」です。

    ・論文にとって、もっとも大切なことは問を疑問文の形で切り出すこと
    ・結論とは、本論の主要点をクローズアップして本論とは別のことばで要約、それによってはじめに提示した問に答えること
    ・論証論文の真髄は主張の推論の正しさ、その立証のために用いられる帰納法、演繹法、三段論法の強固な論理にある。
    ・問、仮説としての理論をたずさえて現象に向かい、事実におって理論を修正していく
    ・真実接近のための有意義な役割を果たすために理論は常に現実に密着し、現実のなかから抽象され構成されなければならない。

    ・標題は、その論文が要するに何をいうとしているのかをひとことで表すものでなければならない。
    ・この論文の主な問が、標題
    ・標題と、内容があっていないと理解がすすまない。全体に統一感が失われてしまう。

    ・論文のレトリックの中で重視されなければならないものは、パラグラフである。
    ・パラグラフとは、ひとつの考えでまとめられた、ふつう、二つ以上の文章の集合である。
    ・パラグラフを統括するのは、トピック・センテンスである。パラグラフ内のすべての文章はこのトピック・センテンスの思想とつながりをもたなければならない
    ・つぎに重要なのは、パラグラフ内の連関性、あるいは、パラグラフ同士の連関性である。

    ・アウトラインは、本来書き出す前に作っておいて、下書きを書くための道しるべとなるもの
    ・同時にアウトラインは、書いてしまってからもう一度、計画どおりになっているかの検証するためのものでもある

    ・難解な文章とは、構造的にまとまりのない文章である。
    ・難解なことばを用いて易しくわかることばをつかっていない。
    ・不必要な受動形になっている。

    目次は次の通りです。

    第1章 よい論文とは
    第2章 だめな論文試験
    第3章 だめな「論文の書き方」参考書
    第4章 よい口述試験、だめな口述試験
    第5章 答案の書き方
    第6章 問題の見つけ方、問の切り出し方
    第7章 論文の種類
    第8章 論文の構成・配置
    第9章 歴史学の問と命題
    第10章 問の歴史と歴史論文
    第11章 分段(パラグラフ)のまとめ方
    第12章 アウトラインの作り方
    第13章 分類と定義の感覚
    第14章 だめな論文からよい論文へ
    第15章 書くための読み方
    第16章 比較読書法と研究ノード
    第17章 ノートのとり方
    第18章 ブック・リポートと書評論文
    第19章 業務報告はどう書くか
    第20章 創造性とは、創造性ある論文とは何か
    第21章 難解な文章、やさしい文章
    第22章 注の哲学と注のつけ方
    第23章 文献表はなぜ、どう作るか
    第24章 標題のつけ方
    第25章 論文の書き方の要点点検表
    第26章 日本人とレトリック
    第27章 なぜ日本の学者は解る論文が書けないか
    付録1 サッチャーの「日英両国の友好と協力」
    付録2 文献表例

  • 1983年が初版で、厳しいことも色々と指摘しているが今なお有用な内容だと感じる、文やアウトラインの作り方は今でも参考になる。

  • ネットとワープロ、パソコン時代にはそぐわないことも多いが、改めて、真摯な論文の書き方、考え方を学んだ。本書にあるようなことを意識して書かれた論文がどれほどあるものか。自戒を含めて、志を新たにしている。基本を大切にしたい。

  • 報告の基本点(207)
    1. 報告の目的をはっきりさせる。説明か論証か、その両方か。
    2. 主な問いが何であるかを序ではっきりさせる。
    3. 調査・研究の材料と方法を明らかにする。
    4. 結論ではっきり問いに答える。
    5. 読者層を知って、それに応じて書く。
    6. 報告の責任者(筆者、グループ、代表者)を明らかにする。
    7. 報告書完成ないし提出の日付を明らかにする。

  • 2017年10月~、「卒業論文のこと、考えてますか?(最終チェック)」にて展示。

    【展示紹介文】
    「第十四章だめな論文からよい論文へ」を読んでください。特に「ロジックが良くない」という批判をされがちな人,指導者による修正の意図がよくわからない人にとって,ためになる解説が見つかるはずです。

    ▼名古屋大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    https://nagoya-m-opac.nul.nagoya-u.ac.jp/webopac/WB01143054

  • ── 沢田 昭夫《論文のレトリック 198306‥ 講談社学術文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4061586041
     
    ── 澤田 昭夫《革新的保守主義のすすめ ~ 進歩史観の終焉 199005‥ PHP》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4569527760
     
    (20161213)
     

  • 文の構造について
    新たな視点を得て
    構造的速読や
    分析読み、
    伝えたい事を伝える技術など、
    実践スキルの基礎を
    学んだ気になった。
    これから活用可能なものかは
    今はまだわからない。
    が、
    読んでいる間、
    時を多少忘れさせてくれたし
    その辺りは感謝している。

  • 修論執筆時に参考にした本。
    木下是雄『理科系の作文技術』を踏襲した内容だが、「日本人の気質」とか「日本語と英語の語順の違いによる云々」といった怪しい主張がない分、こちらのほうがより現代的で読みやすい。

    ・起承転結ではなく「序・本論・結び」
    ・問いを明らかにする
    ・文のまとまりの一単位であるパラグラフを重視する
    ・一つのパラグラフのまとまり感を出すためにトピックセンテンスを明示する
    ・トピックセンテンスはパラグラフの冒頭でも最後でもよいが初心者には冒頭がおすすめ(演繹的に書くなら冒頭、帰納的に書くなら最後)
    ・パラグラフとパラグラフのつながりに注意する
    ・文章を書き始める前に全体のアウトラインを作成する
    ・声に出して読むと耳に快い、リズムのある文章を心掛ける
    ・論文のレトリックの基本は「語り」「会話」に立ち返ること

    など明確に書かれている。論文を書くための文献の読み方も参考になる。

  • 『論文の書き方』(講談社学術文庫)の続編です。

    タイトルに含まれる「レトリック」は、単なる小手先の技術を意味するものではありません。論証の仕方や、論文の主張に説得力を持たせるための構成の仕方といった内容が扱われています。

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