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- Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061587823
作品紹介・あらすじ
本書は、久しく法隆寺の再建・非再建をめぐって謎とされてきた諸問題を、文献批判と美術史家の立場から物のかたちを通して克明に論証したものである。たとえば、法隆寺建築の細部に初唐様式の影響が見られる点まぎれもない白鳳様式であること、法隆寺金堂再建のさい玉虫厨子の建築的意匠が模倣されたことなどを指摘し、あわせて太子の釈迦信仰の姿をさぐる。
感想・レビュー・書評
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玉虫厨子にえがかれている捨身飼虎図に深い感銘を受けて、聖徳太子の研究をこころざすようになった著者が、法隆寺再建をめぐる問題を中心に、聖徳太子にまつわるさまざまな問題について考察している本です。
法隆寺再建論争は、若草伽藍跡の発見によって終止符が打たれたかに思えましたが、福山敏男などの研究者たちはなおも現在の法隆寺が飛鳥時代の様式をもっていると主張し、「皇極罹災説」をとなえていました。本書の中心をなしている議論は、こうした主張を論駁し、法隆寺金堂が初唐の建築様式の影響下にある、白鳳時代の建物であることを論証することです。著者は、法隆寺金堂と玉虫厨子が共通の意匠をそなえていることに着目し、そこから法隆寺の再建が聖徳太子の奉為のものであったという考えを提出しています。
本書においても、聖徳太子のひとと思想について語りたいという著者の思いが随所に示されていますが、本書のあとに刊行された『斑鳩の白い道のうえに』(講談社学術文庫)では、本書以上に聖徳太子そのひとに焦点をあてた議論になっており、あわせて読むことで、本書の議論を補足することができるように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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