芭蕉の世界 (講談社学術文庫 822)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588226

作品紹介・あらすじ

江戸元禄期、俳諧を単なる言葉の遊びから人生詩へと大きく発展させた芭蕉。本書は、その芭蕉の天和期の漢詩文調から元禄期の"軽み"への道に至るまでの作品の内面的世界に焦点をあて、俳諧の座という仲間との係わりの中で"笑い"の意味を追求し、さらに古人の詩心をたずねて『おくのほそ道』へと出立し、ついにその俳諧精神"不易流行論"を確立した過程を、広い視野からとらえた。座の文学の新視点から描いた異色の芭蕉文学論。

感想・レビュー・書評

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  • 講談社学術文庫
    尾形仂 「 芭蕉の世界 」


    松尾芭蕉 論。俳諧を「座の文学」とする視点に立って、芭蕉文学を紐解いた本


    芭蕉が達した「不易流行」を通した時間感覚と「軽み」を通した人生讃歌を理解できる良書


    本の主題は 杜甫の侘びに始まり「軽み」に至る芭蕉の句境の変遷。連句の共同制作性(座の文学)から 芭蕉の句境を読み解く切り口は さすが第一人者だと思う


    漂泊や隠遁を伴う芭蕉の生活については あまり重視していないかも。それらの生活は 芭蕉文学の基礎になってはいるが、芭蕉に 社会的無力者として自覚を与えただけというように読める



    「奥の細道」が 芭蕉文学の完成形というより、「野ざらし紀行」「笈の小文」「奥の細道」を通して、不易流行が実践され、その後に「軽み」を志向したという論調。「猿蓑」が芭蕉論の結論となる



    重み=古び
    理知的なもの、観念的なものがまとわりついて、意識が渋滞し、素直な詩情の流露が見られない


    芭蕉の最晩年の詩境
    *日常性の中に日常のことばによる詩の創造を目指した
    *無造作でボヤッとして、何の身構えのない表現の中から、芭蕉の人間味、日常生活の伝わってくるところが「軽み」



    奥の細道は「不易流行」の理念を語りかけることから始まる〜流転変化することこそ、宇宙の不変原理(不易流行)

    軽みの精神
    *高く心を悟って俗にかえれ
    *俗なる現実を見直すとき、人生の愚かさに愛すべき笑いに満ちている






































  • たぶん、昔一度読んでいるはずなのだが、久しぶりに手に取ってみると、いろいろとなるほどと思えるところも多く、若い時の方が理解度は高いはずなのだが、もしかしたら今の方が共感力が高いかもと思ったりした。

    かつて見えなかったものが、このウン十年の間に得た見識によって見事に一致したりする部分もあり・・って、意外と俗っぽい話。金は暖かく、銀は涼しいって話、今でいうところの「イエベ」「ブルベ」に通じるじゃないか・・なんて発見は面白かった。

    俳諧のお弟子さんというか、門人の方たちの性格なんかにも言及してあって、いろいろ人物像が膨らんできて、これドラマや映画で見たいもんだと思ったけど、なんかもうすでに作品あったっけ??

  • 芭蕉の連句について、講義形式、学生とのやりとりを再現しながら書かれているので、専門知識がなくても理解しやすく、どんどん読み進めていける内容だと思う。
    改めて言葉の持つ力の大きさと深さに気付かされる。

  • 芭蕉の本でこの本が一番良いと思ってます。芭蕉が自分の俳諧・発句を高めていく過程や座の文学である俳諧の魅力をこの本で教えてもらいました。現在、購入できないのが残念。

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著者プロフィール

1920年生まれ。東京文理科大学卒業。東京教育大学教授、成城大学教授を経て現在に至る。専攻は近世文学。主著に「芭蕉の世界」「芭蕉・蕪村」「蕪村の世界」など。

「2000年 『新編俳句の解釈と鑑賞事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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